現れる謎のおっさん
翌朝、シアンとクーアはアグレリオのこと、そしてジャオウたちが近くにいることを聞いた。話を聞いたシアンはお茶を飲んでこう言った。
「そんな事情があったのね。まぁ、呪われたんだったら何とかしないと」
「しかし、呪いを解くにしてもツエルの時みたいに奇跡が起こらないと無理だぞ。呪いをかけた本人が死んじまったのなら、情報を聞き出すこともできぬし」
クーアの言葉を聞き、ベーキウは頷いた。前の冒険で出会ったツエルはドジな魔女の呪いをかけられて髪が伸びる体質になってしまった。呪いを解くきっかけとなったのは元盗賊団、モンパ一味のゴエゲートに恋をすることであった。恋をした結果、呪いが解けたのだ。
「恋がきっかけ……なのかなぁ」
「だとしたら、呪いを解くきっかけはベルリアってこと?」
キトリがこう言ったが、シアンがふっと笑った。
「今回の呪い騒動も、恋やどうかで簡単に解けるものと思わないほうがいいわよ。アグレリオって獣に呪いをかけたのは、意地の悪いクーアみたいなクソババアの魔女だからね」
「おいシアン、今わらわのことをクソババアと言っただろ? 一発しばくが、その前に全裸で土下座すれば許してやるぞ?」
と、魔力を開放したクーアがこう言ったが、シアンはその言葉を聞き流して発言を続けた。
「呪いを解くとしたら、もっと特別なことをしないといけないかもよ。キスとか、セ○○○とかしないと解けないんじゃないの?」
「おいゴラァァァァァ! わらわの言葉を無視して飛んでも発言してんじゃねェェェェェェェェェェ!」
クーアはシアンの後頭部に向かって延髄蹴りを放ったが、シアンは蹴りをしゃがんでかわし、クーアの足を掴んだ。
「何ッ!」
「何度も同じ攻撃を受ける私じゃないわァァァァァ!」
狭い宿泊室の中で、シアンはクーアにジャイアントスイングを仕掛けた。
「うわァァァァァ! こんな狭い部屋の中でそんな技を使うなよ!」
「あっ! 押入れの扉が破れた! 後でちゃんと直しなさいよ!」
ベーキウとキトリは攻撃の巻き添えにならないように後ろに下がり、シアンに文句を言った。その後、シアンは窓からクーアを投げ捨てた。
「何だ何だ?」
「あっちの部屋からなんか飛び出してきた」
「うえ、酷い加齢臭」
騒動を察した生徒たちが、倒れたクーアに近付いた。クーアは起き上がり、宿泊室の中でやってはいけない指のジェスチャーをするシアンを睨み、魔力を開放した。
「このクソ勇者! やはりお前とは決着を付けなければならぬ! わらわの怒りを爆発させたこと、一生後悔させてやるわァァァァァ!」
その時だった。グラウンドでサッカーの練習をしている生徒が放った必殺シュートがゴールネットを突き破り、クーアの背中に命中した。
「グアッハァァァァァ!」
「ああっ! 勇者パーティーのおばさんに、ウイング君のクールドライブシュートが命中した!」
「でも、あの人鍛えているから大丈夫でしょ」
ウイング君必殺のクールドライブシュートを受けたクーアは吹き飛び、しばらくその場で倒れていた。
数時間後、シアンたちは校長室に向かっていた。理由はアグレリオのことを話すためである。
「シアン、お前後で体育館裏に集合な」
「バカなヤンキーみたいに脅すつもり? そこで決着をつけるなら望むところよ」
「バカなことをしない」
キトリは闇の魔力を開放し、それで作った巨大な手でシアンとクーアを握りしめた。
「あああああ! 止めてキトリさん!」
「骨がボキボキなっているから! このままだとスライムみたいにグニャグニャになるから!」
シアンとクーアが泣き叫ぶ中、ベーキウは後ろから気配を感じた。そこには、着物を着た男性が立っていた。
「あ……あれ? なんだあの人?」
ベーキウの声を聞き、キトリは闇を抑えて後ろを振り向き、男性の存在に気付いた。男性はベーキウたちに近付いてこう聞いた。
「おぬしら、校長室に用があるのか?」
「ええまぁ。実は、モンスター退治を頼まれたのですが……」
「そのモンスターの正体が、古の時代に呪われた王子様だったんです」
「左様か。だから、おぬしらはモンスター退治を断りたいのだな」
「はい。そんな感じです」
シアンは痛む体をさすりながら、立ち上がってこう言った。男性は目をつぶって何かを考え、こう言った。
「止めた方がいい」
「え、何で?」
「モンスターは危険な存在。そして、古の時代の王子様が呪われたからあんな姿になった。そんなおとぎ話のような展開が現実に起きたと言っても、誰も信じぬだろう」
「だけど私はこの目で確かに」
「たとえ勇者でも、誰かがその言葉を聞けば勇者もあほだなと思って終わりになる。校長に話をするのはあとからにした方がいいぞ」
と言って、男性は去って行った。不審に思いつつも、ベーキウは大声で男性を呼び止めた。
「なぁ、あんたは一体誰なんだ?」
「自己紹介が遅れてすまない。俺はスケハチ。一応この学校で働いている。すまないな、まだ仕事があるんだ」
そう言って、スケハチは去ってしまった。突如現れた謎の男性、スケハチの後姿を見て、ベーキウたちは茫然と立つことしかできなかった。
ゴガツのいる教室。本来授業の時間なのに、ゴガツは自身のファンを椅子にさせ、手にしたタバコを気弱な教師に付けさせていた。
「むしゃくしゃするわねー。ベルリアの奴、私より美人で女子からも男子からも人気があるってだけでむしゃくしゃするのよねー」
と言って、ベルリアはタバコの火を吐いた。ベルリアは犬のように舌を出して発情する太った男子生徒の方を見て、笑みを浮かべた。
「灰皿」
「わん!」
男子生徒は喜びながら太った腹をベルリアの方にさらけ出した。ベルリアはタバコの火を消すため、男子生徒の腹にタバコを押し付けた。
「あひィィィィィん! 熱い! ありがとうございます!」
「目障りだから消えて。これあげるから」
と言って、ゴガツは消しゴムを手にし、自身の太ももに当てて男子生徒に渡した。男子生徒は憂いそうに消しゴムを手に取り、頬ずりを始めた。
「何かいい手はないかなー。ベルリアの奴をコテンパンにする方法。勇者パーティーが仲間になれば、あっという間にけちょんけちょんにしてくれるのに」
その言葉を聞いた近くの男子生徒は、メガネを上に上げてこう言った。
「なら、私たちにお任せください」
「あんたみたいな貧弱もやしごときが、何をやるって言うのよ?」
「力づくで彼らを従わせます」
「はぁ。バカねぇあんた。知的キャラっぽくメガネを上げても、言うことは間抜けね」
「一人では勇者パーティーには勝てませんが、多勢で戦えば何とかなります」
「数で押し切るつもり? あいつらはとんでもなく強いわよ。もやしがいくら集まっても所詮はもやし。秒で全滅するわ」
「だが、あなた様の応援があれば、我々も本気を超えることができます」
「本気を超える?」
その言葉を理解したゴガツは、笑みを浮かべてこう言った。
「あんたらに命令よ。何が何でも勇者パーティーを私の下僕にさせなさい。手段は問わないわ! 人質を取ろうが脅そうが、何をしてもオッケー! もし、私の思い通りにさせてくれた人には……」
発言を止め、ベルリアはスカートの中に手を突っ込み、何かをし始めた。しばらくして、ベルリアのスカートの中からパンツがずれ落ちた。
「特別なことをしてあげるわ。私はちゃんと約束を守る。だけど、あんたらも私の約束をちゃんと守るのよ?」
その言葉を聞いた哀れな野郎たちは奇声を上げて喜び、勢いよく教室から出て行った。これなら何とかなると思ったベルリアは、替えのパンツを履いた。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




