ひとまずのお休みタイム
クソビッチこと、レリルからベーキウを取り戻したシアンたちは、ベーキウがいる風呂場に無理矢理入り、無理矢理ベーキウと混浴を楽しんでいた。ベーキウはそれどころじゃないけど。そんなバカ騒ぎの中、クーアはベーキウの尻を見て何かを見つけた。
「ベーキウの尻って面白いのー。剣と盾のあざがあるぞ」
そのことを聞き、シアンとキトリはすぐにベーキウの尻を見た。
「本当だ。珍しい」
「適当じゃなくて、しっかりと誰かが描いたみたい。ベーキウ、これって何?」
「俺も分からないんだよ。昔、母さんから言われたんだけど……どうしてこんなあざがあるのか分からないよ。まぁ、気にしてないけど」
そう言いながら、ベーキウは湯船に浸かった。シアンはそうなんだと言いながら、ベーキウの横に座った。
「ま、何もなければそれでいいわ。さてベーキウ、そろそろ体洗わない? 私が腕から足から股間までちゃんと洗うから」
「自分でできる。宿の人が騒動を知ったら様子を伺いにくるぞ。そしたらこの状況をどう説明するつもりだ?」
「ニャンニャンタイムでごまかせばいいじゃろうが」
「そんな理由で納得するわけがないだろうが。追い出されるぞ」
呆れたベーキウは股間と尻を隠して立ち上がり、風呂から出て行った。脱衣所へ出ると、騒動を知った宿の人がいた。
「い……いやー。なんか騒がしいから様子を見にきたんですよ」
不安が的中してしまった。そう思いながらベーキウは事情を説明しようとしたのだが、宿の人はポケットから何かを取り出し、ベーキウにこう言った。
「私は何も見なかった、聞かなかったふりをします。どうぞ、ごゆっくり」
と言って、そそくさと出て行ってしまった。ベーキウは何を渡されたのか確認するため、手の中を見た。そこには、よい子も見る全年齢対象の小説では詳しくじっくり書くことができない……まぁ、ゴムがあった。
「ちょっと待ってくれ! 俺はまだそんなことはしない! 誤解だァァァァァァァァァァ!」
ベーキウは足早で去って行く宿の人を見て、こう叫んだ。
翌朝。ベーキウたちはテッコウがいる店にいた。キトリはテッコウの店構えを見て、怯えながらベーキウに抱き着いた。
「ちょっと……異質な感じがして怖い」
「ああ。確かにそうだな」
テッコウの店は何十年前に建てられた建物なのか、かなり古ぼけていた。個人的に取り付けられている街灯のランプは割れていて、窓の一部はクモの巣が張っていた。そして、建物の下から生えている雑草も手入れがされていないためか、無数に生えていた。シアンは意を決した表情になり、チャイムを鳴らした。
「どこのどいつだ?」
チャイムが鳴った瞬間、スピーカーから男の声が聞こえた。シアンは臆することなく、話を始めた。
「私はシアン・ダンゴと言います。実は、あるお守りを作ってもらうために依頼しにきたのですが……」
「仕事か。今、鍵を開けるから待ってろよ」
この言葉の直後、扉が音を発しながら動いた。中からは、鉢巻をしてしわがあるランニングシャツを着て、一部穴が開いてあるデニムズボンをはいている男が現れた。
「そんなとこで突っ立ってると、仕事の話ができねーじゃねーか。さっさと中に入りな」
男の声を聞き、ベーキウたちは言われた通りに店の中に入った。
店の中はかなり整理されていた。素材の種類順に整頓されているせいか、どこに何があるかベーキウでも分かるほどに整理されていた。お守りの袋も大、中、小と細かく分けられていて、紐も長さと色に別れて用意されていた。
「とりあえず自己紹介をしよう。俺はテッコウ。町の連中から話を聞いてここにきたってことでいいか?」
テッコウはそう言うと、シアンが手にしている袋を見てにやりと笑った。
「へぇ、アオクーサとイエロースライムの破片、そんでもってクレナイザメの目か。お前さんたち、魔界に行くつもりか」
「え? 何が入っているのか分かるんですか?」
驚く表情をしたキトリを見て、テッコウは笑いながらこう言った。
「何十年もこの仕事をやってきたんだ。香りで素材が分かるし、その素材で何を作るか、何の目的があるのか大体理解しちまう。もう一度聞くが、魔界に行くつもりか?」
この言葉を聞き、ベーキウは頷いてこう言った。
「はい。いろいろあって魔界に行きたいのですが、俺が魔界に行くためにお守りを……」
「ま、いろいろと事情はあるが、あまり踏み込まないようにするよ。人の目的やプライベートに首を突っ込まない性格だからな。じゃあ……お守りは一人分でいいか?」
「そうじゃの……シアンは勇者だから大丈夫。わらわはエルフだから強い魔力で何とかなる。キトリは魔界出身。わらわ三人は……お守りは必要ないな」
「うし、分かった。三時間ぐらいでお守りはできると思うから、それまでどこかで時間を潰してろ。三時間経ったら、俺の店に戻ってこい」
テッコウはそう言った後、シアンから素材が入った袋を受け取り、すぐに作業を始めた。
ベーキウたちは町の喫茶店へ移動し、安堵の息を吐いていた。
「頑固者って聞いていたけど、スムーズに話が進んでよかったわー」
話が難航すると思っていたシアンは、笑いながらハンバーガーを食べていた。ベーキウはその通りだなと返事をし、コーヒーを飲んでいた。
「後はゆっくり休みながら時間が流れるのを待つしかないのー」
そう言って、クーアは背伸びをした。その時、キトリはクーアの背骨から鳴り響く音を聞いた。
「音が……」
「仕方ないじゃろー。このパーティーの中でわらわが最年長なんだからー」
「確かにねー。今時八十五歳のエルフを連れたパーティーなんて存在しないわよ」
シアンは笑いながらハンバーガーにかぶりついていた。クーアはコーヒーに付いてきた豆菓子を手にし、シアンの鼻の中に入れた。
「小娘。あまり年齢のことに首を突っ込むなよ」
「そ……そりゃーわるーござんしたね!」
シアンはクーアの口の中に向かって、鼻の中に入れられた豆菓子を勢いよく飛ばした。飛ばされた豆菓子は、クーアの口の中に入って行った。
「おっげェェェェェェェェェェ! 汚いことをするな勇者! お前、それでも勇者か? オゲェェェェェ!」
「あんたが最初に豆菓子を私の鼻の中に突っ込んだんでしょうが! お互い様よクソババア!」
「お前にクソババアと言われたくないわァァァァァァァァァァ!」
「外に出なさい! 決闘よ!」
「望むところじゃ! お前の衣服ひん剥いて真昼間から町中でストリップショーを開始してやるわ!」
シアンとクーアは罵倒しながら喫茶店の外に出て行った。ベーキウは呆れながらキトリの方を向いてこう言った。
「あのバカ二人を止めてくる。ちょっと待っててくれ」
「うん。ごめんねベーキウ。厄介事を任せるような形になって」
「一応……クーアの次に歳をとってるのが俺だからさ」
そう言って、ベーキウは外に出たシアンとクーアの元へ向かった。
その後、キトリは外から聞こえるシアンとクーアの声を無視し、喫茶店の空気を楽しんでいた。気持ちがいい程度に調整された温度、壁に掲げられているそこまで有名ではないけど、美しい色合いの絵、そしてリラックスできるような音楽。それらのおかげでキトリの心は癒されていた。そんな中、突如外から騒がしい声が響いた。
この声はシアンとクーアの声じゃない!
こう思ったキトリは、急いで喫茶店の外に出た。すると、大きな影が太陽の光をさえぎった。
「今のは一体何?」
大きな影の存在に気付いた半裸のシアンは、キトリにこう聞いた。
「今のはもしかして……ソーオンヤカマシー。人里離れた山の中に住んでいる大きくて凶暴な鳥のモンスター!」
キトリの話を聞いたシアン、そしてベーキウとキトリはすぐに空を見上げた。
「またこっちにくるのか?」
「多分な。ベーキウ、わらわたちでソーオンヤカマシーを倒すぞ」
クーアの言葉を聞いたベーキウはそうだなと言って頷いたが、クーアの格好を見て、呆れてこう言った。
「その前に着替えてくれ」
クーアの格好は、シアンとの喧嘩によって半裸になっていたのだ。クーアはにやりと笑いながら、ベーキウに向かってこう言った。
「ベーキウがわらわのセクシーな格好を見ても、わらわは怒らない! むしろ、じっくりねっぷりたっぷりと見てほしい!」
「町中でそんなこと言わないの」
キトリは闇の魔力を使って、クーアの姿を隠しながらこう言った。
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