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夜に散歩をするのはいいけれどへんたいふしんしゃさんには気を付けるように


 ベーキウたちは学校側が用意してくれた宿泊室にいた。校長がモンスター退治をしてくれている間、自由に宿泊室を使ってもいいと言われたのだ。クーアは宿泊室を見て、大きなため息を吐いていた。


「今までホテルで泊まっていたから、こんなぼろっちい部屋で寝るってことが考えられなくなってきたのー」


 宿泊室はホテルのような部屋ではなく、床は畳で壁は昔に建てられた家のようなぼろい壁、そして天井にはシャンデリアのようなしゃれたものはなく、ひもを引っ張って電気をオンオフする電灯があるだけだった。シアンは文句を言うクーアに対し、呆れてこう言った。


「ただで貸してくれるのよ。我慢しなさい」


 そう言いながら、シアンは押入れから布団を取り出し、畳の上に敷いた。クーアは文句を言いつつ、シアンと同じようの布団を取り出した。その時、買い出しに行っていたベーキウとキトリが戻ってきた。


「とりあえず近くのスーパーで食材を買ってきたぞ」


「鍋ぐらいなら作れるわ」


 キトリはそう言って、小さくて少しぼろいキッチンを見た。その後、シアンたちは夕飯を作り、小さな机を立ててその上に鍋を置き、食事を始めた。


「今までこんな風に食事をしていないから、なんだか新鮮な気分ねー」


「シアンの言う通り。こうやって食べるの初めて」


 シアンとキトリは鍋の野菜を取りつつこう話をしていた。クーアは自身が持つ器を見て、周囲を見回した。


「なぁ、他に入れ物はないのか? わらわの入れ物、少し欠けておるぞ」


「しょうがないでしょ、どれもこれも結構欠けてたのよ。あんたが持つそれがまともな部類に入る器なのよ」


「そうかい。それよりもこの部屋、長年使われてなかったのではないか?」


 クーアはそう言って、鍋の具材を取り始めた。それからしばらくして食事を終え、ベーキウが使った食器類を洗っていた。そんな中、シアンとクーアがいつものように言い争いをしていた。


「だーかーらー! 私がベーキウの横で寝るのよ! 何度言ったら分かるのよ? あんたもしかして、歳だから人が言った言葉を覚えてないんじゃない?」


「人の言葉を理解しないのはお前の方じゃ! ベーキウとわらわが付き合っているってお前も知ってるはずじゃ! だから彼女であるわらわが横で寝るのが普通じゃろうが!」


「あんたがいつベーキウと結ばれたって言うのよ! 伏線も何もなしに付き合い始めましたーなんて展開になったら、誰もが呆然とするじゃない!」


「わらわもヒロインの一人じゃ! 付き合う可能性がゼロではないはずじゃ!」


「えらい歳の差カップルが生まれるじゃないの! そんな展開、だれも望んでないわ!」


 などと言いながら、シアンとクーアは騒いでいた。本を読んでいたキトリは呆れてこの様子を無視していたが、次第にシアンとクーアの喧嘩はヒートアップし、本を読んでいるキトリの邪魔をしてしまった。


「うるさい」


 切れたキトリはバカ二人を包むように闇の魔力で作った強固で真っ暗なバリアを張り、外に出した。


「このバリア防音機能もあるから、安心して一晩中叫んでいなさい」


 キトリはバリアに包まれたバカ二人にこう言った。シアンとクーアはその中から大きな声で文句を言ったが、外にいるキトリには聞こえなかった。


 これでやっと静かになったと思いながら、キトリは窓を閉めようとした。だが、私服で周囲を見回しながら歩いているベルリアの姿を見つけた。


「ベーキウ、ベルリアが歩いていたわ」


「ベルリアが? 忘れ物を取りに学校にきたのか?」


「そういうわけじゃなさそう。学校を通り過ぎたし」


 キトリの言葉を聞き、少し考えたベーキウはキトリにこう言った。


「尾行してみよう。何を隠しているか分かるはず」


「そうね」


 会話後、ベーキウとキトリは外に出て、ベルリアの後を追いかけた。




 ベルリアは周囲を見回しながら、誰もいないと察し、急いで歩いた。それからかなり後ろの方では、ベーキウとキトリが物陰に隠れながらベルリアを追いかけていた。


「あの子、やっぱり何か隠しているわね」


「その秘密が分かればいいんだけど」


 ベーキウとキトリが小声で話をしていると、堀の上を歩いていたメス猫がベーキウを見て、一目で気に入ってしまった。


「え? おわっ!」


 いきなり飛び込んできたメス猫を見て、ベーキウは驚きの声を上げてしまった。キトリはばれたと思い、ベルリアの方を見た。ベルリアはベーキウとキトリの存在に気付かず、歩いていた。


「よかった。ばれてない」


「こっちはよくない」


 ベーキウは発情して暴れるメス猫を丁寧に地面の上に置き、急いで歩き始めた。キトリは人外の異性にもモテるなんて、やはりイケメンは凄いと思いつつ、ベーキウの顔を見ていた。そんな中、一組のカップルの猫が近くを通り過ぎた。


「この辺の猫、発情期が多いわね」


「夜中うるさそうだな」


 そんな話をしていると、メス猫がベーキウの方を見て、発情したように鳴いた。そしてすぐにベーキウに抱き着き、ベーキウの足を頬ずりし始めた。


「うわ、またかよ」


「本当にモテるわね、ベーキウ」


「ど……どうにかしてくれよキトリ」


 困った表情でベーキウがこう言ったが、彼女を取られたため、怒ったオス猫がベーキウの顔をひっかいた。


「あだっ!」


「ちょっと、止めなさい」


 キトリは暴れるオス猫をベーキウからどかし、メス猫に近付けた。だが、メス猫はつんとした表情でそっぽを向き、去って行った。降られたオス猫はショックを受けた表情をし、その場で倒れた。


「寝取ったって思われたみたいね」


「猫なんて寝取っても嬉しくねーのに……いつつ」


「ちょっと待って、治療するから」


 キトリはベーキウの切り傷を治療し、周囲を見回した。ベルリアとの距離が、かなり開いてしまったのだ。


「急ぎましょう。見失う」


「ああ。これ以上猫がいなければいいが……」


 と、ベーキウは小さくこう言った。それからベーキウとキトリは急いでベルリアを追いかけたが、ベーキウの願いは通じず、歩くたびにメス猫がベーキウを見て発情し、騒ぎ始めたのだ。そのたび、ベーキウとキトリは対処をしていた。そんなことをしているうち、キトリはこう思った。ベルリアにばれていないかと。


 その一方、ベルリアは禁足地と言われる森の前にいた。懐中電灯を持って電気を点けたが、その時に猫の声が響き渡るのを察した。


「今日はやたらと猫が騒ぐわね。皆発情しているのかしら」


 そう思い、ベルリアは森の中に入った。それからしばらくして、ボロボロになったベーキウとキトリが森の前に到着した。


「さっき、この中に入って行ったわ」


「モンスターがいるって言われる場所だよな。どうしてここに……」


「とりあえず追いかけましょう。森の中なら、猫はいないはず」


「だといいが」


 そんな話をしながら、ベーキウとキトリは森の中に入った。今回はベーキウの願いが通じて、森の中に猫はいなかった。


「よかった、発情期の猫はいない」


「これでまともに動けるわね」


「そうだな」


 森の中に入って数分後、ベーキウとキトリは出口らしき場所を見つけた。そこの近くには、ベルリアがいなかった。


「あの先にいるかもな」


「ええ。すぐに身を隠せる場所を探しましょう」


 会話をした後、出口を出たベーキウとキトリはすぐに身を隠せるような岩場を見つけ、そこに移動した。ベーキウが岩場から顔を少し出して周囲を見回し、ベルリアの姿を探した。


「どう? ベルリアはいた?」


「まだ見つけてないけど……あ」


 話をする中、ベーキウはベルリアの後姿を見つけた。


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