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輝かしい青春をもう一度


 三年B組担当のゴールドエイト先生の乱入によって、シアンとベルリアの決闘がうやむやなまま終わってしまった。気が付いた時には、すでにベルリアはどこかに去ってしまったのか、姿はなかった。


「あの子、ああもう。どこかに行っちゃったわ」


 シアンはそう言いながら、ゴールドエイトのビンタを受けたベーキウの治療をしているキトリに近付いた。


「痛そうね、両頬が赤くなってる」


「これじゃあおたふく風邪になったみたいだ……イテテ、まだ痛い」


「じっとして。痛みが引けば腫れは引くと思うから」


 そう言いながら、キトリは治療を続けた。そんな中、勝手に弁当を販売していたクーアが戻ってきた。その姿は何故かボロボロになっていた。


「おばさん、あんた一体何があったの?」


「変な髪形の先生がバカチンと言いながらわらわにビンタをしてきたのじゃ。何なのじゃあの男は? 暴行罪で訴えてやるのじゃ」


「あの人、変だけどこの学校の先生なんだって」


「はぁ? あんなのが先生? あんなのが先生になれるとは、おかしい話じゃぞ」


「頭がいいんだろ」


「ふむ。天才はどこかのねじがぶっ飛んでいると聞いているが……奴はその類か」


 クーアがそう言うと、騒動を知った校長が慌てて近付いた。


「すみません。派手な騒ぎになってしまって……」


「大丈夫です。バカ騒ぎには慣れていますので」


「ビンタをされるのは慣れてないけど」


 ベーキウがこう言うと、キトリは小さく頷いた。その後、校長室に戻ったベーキウたちは話をしていた。


「で、ベルリアが討伐対象のモンスターのことを何かしら知っている可能性が高いのよ」


 こう話を切り出したシアンは、校長にこう言った。


「ねぇ、モンスターを倒したいなら私の頼みを聞いて」


「ええ、なんでも」


「今なんでもって言ったわね? それじゃあ、ベルリアから話を聞き出すまで、私たちをこの学校の生徒として行動させて」


 この言葉を聞いたベーキウたちは、口に含んでいたお茶を勢いよく吹き出してしまった。


「シアン! 生徒って無茶がありすぎるだろ! 俺、今十九歳だぞ! 読者の皆も俺の年齢のことを忘れていると思うけど、俺は二十歳の一歩手前だ!」


「私も十八で、大体高校を卒業している歳よ。だけど、ベルリアから話を聞き出すまでは何が何でもあの子と接触して、話をするしかないのよ」


「十五歳の私はいいとしても、問題は……」


 おどおどとしながらキトリはこう言った。その言葉の真意を察したベーキウとシアンは、クーアの方を振り向いた。視線を感じ、それが何を意味するか理解したクーアは笑いながらこう言った。


「大丈夫じゃ! わらわは十七歳! 高校二年生だーって言っても誰も信じるじゃろう!」


「年齢をごまかすな。あんたの実年齢は八十五歳じゃないの」


「え? そうなんですか?」


 クーアの実年齢を知った校長は、驚きのあまり口を大きく開き、その衝撃で入れ歯が落ちてしまった。校長が入れ歯を拾う中、クーアはこう言った。


「見た目は高校生じゃから大丈夫じゃ! 文句があるなら、その辺の男子高校生にナンパでもしてみるか?」


「止めなさい。とりあえず……校長先生、この話を通してもらってもいいですか?」


 シアンの声を聞き、校長はしばらく考え、首を振った。




 翌朝。教室でつまらなそうな表情をしたベルリアは、ずっと窓から外を見ていた。その様子を見た女子たちは、顔を赤くして話をしていた。


「今日のベルリアさん、たそがれてるみたいでかっこいいわね」


「あの人はいつもかっこいいわよ」


「喧嘩も強いし、男っぽい。そこが萌えポイントなのよねー」


 などと、女子たちは歓喜の声を上げていた。そんな中、担当の先生が教室に入ってきた。


「皆席に座れー。朝のホームルームを始めるぞー」


 先生がこう言うと、生徒たちは一斉に席に戻り、先生の話を聞いた。


「突然の話だが、今日から期間は少しの間、転校生と教育実習生がくることになった」


 この言葉を聞いた生徒たちは歓喜の声を上げた。そんな中でも、ベルリアはつまらなそうにあくびをしていた。


「では、入ってこい」


 先生に言われ、教室に入った転校生と教育実習生を見たベルリアは思わず驚きの声を上げた。そこにいたのは、制服を着たシアンたちと、スーツを着たベーキウだったのだ。


「どもー! 転校生のシアン・ダンゴでーす!」


「同じく転校生のクーア・ポクレムコでーす! 現役バリバリのJKでーす!」


「どうも、転校生のキトリ・カワモネーギです。よろしくおねがいします」


「本日から教育実習として、皆さんとともに学園生活を送ることになったベーキウ・オニオテーキです」


 と言って、ベーキウたちは頭を下げた。それを見たベルリアは、ひたすら驚いた表情をしていた。


 朝のホームルームが終わった後、ベルリアはすぐにシアンに近付いた。


「あんた、何を考えているの?」


「いの一番に教えてあげるわ。あんたからモンスターの話を聞き出すためよ」


 シアンの答えを聞いたベルリアは、シアンを睨みながらこう言った。


「どんなことをしても、私はそのことに関しては一切口を割らないわ」


「あっそう。でもね、勇者としてモンスター討伐もやらなきゃいけないのよ」


「あいつはモンスターじゃない」


「まだ尻の青い小娘ね。ボロが出てるわよ」


 シアンの言葉を聞いたベルリアははっとした表情をし、後ろに下がった。だが、すぐに表情を戻してシアンにこう言った。


「とにかく、私は何も話さない。あんたらが何をしても無駄よ。覚えておきなさい」


「悪いわねー。私、どうでもいいことに関しては記憶力がないのよねー」


 シアンの返事を聞いたベルリアは、鼻を鳴らして去って行った。この様子を見ていたキトリはシアンに近付いた。


「あれじゃあ余計話を割るのが難しくなったじゃないの」


「元からそうよ。でもま、何かを知ってる可能性はまた高くなった。それに、あの子はボロを出しやすい性格。話をすればいずれ大きな情報をポロリと漏らすわ」


「それが狙いだったのね」


「ええ。あの子、ああ見えてうっかりものね」


 シアンとキトリがこう話をする中、困った表情のベーキウがやってきた。


「助けてくれ。女子たちに追われて大変なんだ」


 シアンはベーキウの後ろを見て、黄色い声を上げながらベーキウに迫る女子の大群がいることを察した。シアンは呆れつつため息を吐き、女子の大群に近付いた。


「悪いわねー。ベーキウは私と言う彼女がいるからあんたらと付き合うことは完全に不可能……」


「彼女面するんじゃねェェェェェェェェェェ!」


 女子の一人がシアンに向かって飛び蹴りを放った。シアンはこの攻撃をさばいたが、前からシャーペンやコンパス、定規や禍々しいオーラを放った刀が飛んできた。シアンは飛んでくる凶器を流しつつ、口を開いた。


「私を殺そうとしても無駄よー。私はあんたらより強いんだから!」


 と言って、シアンはどさくさに紛れてベーキウに抱き着こうとするクーアの尻に向かって、飛んできた刀を投げた。


「あっぎゃァァァァァァァァァァ!」


 飛んできた刀を尻に受けたクーアは、悲鳴を上げながら女子の大群に向かって転がった。


「くぉんのメスガキどもがァァァァァァァァァァ! 貴様らが凶器を投げたせいでわらわのかわゆい尻が傷ついたじゃろうがァァァァァァァァァァ! 尻をもう一段階割らすつもりかァァァァァァァァァァ!」


 叫び声を上げながら女子の大群に突っ込んだ。カオスなこの状況を見たシアンは、大きな声で笑い始めた。キトリは呆れてため息を吐き、シアンにこう言った。


「もう……真面目にベルリアから話を聞き出すことをしなさいよ」


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