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急に始まるバトル! シアンVSベルリア!


 突如攻撃を仕掛けてきたベルリアを見て、ベーキウは戸惑った。だが、シアンはあくびをしながらベルリアに近付いてこう言った。


「あんた、校長が言ってたモンスターのことを何か知ってるの? よかったら話してほしいんだけど……」


「嫌よ」


 ベルリアは戻ってきたヨーヨーを構えて返事をした。話す気がないことを察したシアンは、ため息を吐いてこう言った。


「嫌って答えたのなら、何か知っているってわけね」


「どうしてそう思うの?」


「知らないであれば知らないって答えるからよ」


「嘘だったら?」


「常人ならすぐに嘘の答えを言えないわよ。嘘なんて、頭の回転が速くて冷静で思考が狂った奴しか言えないから」


 シアンの返事を聞いたベルリアはシアンを睨み、外を指差した。


「決闘よ。私があんたを倒したらモンスターのことは忘れて、この学校から去りなさい」


「じゃあ私が勝ったらモンスターのこと、洗いざらい教えてもらうから」


 シアンは笑みを浮かべながらこう言った。




 シアンとベルリアが決闘を行う。この情報はあっという間に学校中に広まり、生徒たちは授業よりもシアンとベルリアの決闘が気になり、ほぼ全生徒が外に出ていた。ベーキウは遠くから離れた木の近くに寄りかかり、呆れながら決闘が始まるのを待った。


「あの子、シアンと戦うなんて本気かよ」


「あの目は本気だったわ」


 と、キトリが近付いてこう言った。ベーキウは周囲を見回し、クーアがいないことを察した。


「クーアは?」


 ベーキウの問いに対し、キトリは呆れた表情で指を刺した。そこには、弁当を販売しているクーアの姿があった。


「あいつ、仲間の決闘で人が集まったから、弁当を売って儲けるつもりかよ」


「そのつもりらしいわね。ほんと、呆れたわ」


 ベーキウとキトリが同時にため息を吐いた直後、グラウンドの中央にシアンとベルリアが現れた。シアンの左手には石が握られており、それを見てシアンはそう言った。


「戦いの開始はこいつを上げて、落下したと同時。石ころが落ちる前に攻撃を仕掛けたら反則負け。それでいいわね?」


「上等」


 ベルリアはそう答え、ヨーヨーを構えた。シアンは石を高く上に上げ、剣を構えた。数秒後、石は地面の上に落下した。そのタイミングに合わせ、ベルリアは両手のヨーヨーを投げた。シアンは自身に向かって飛んでくるヨーヨーを見ながら走り、ベルリアの攻撃をかわした。


「単純な攻撃が私に通用すると思わないほうがいいわよ! 私はあんたと比べて、戦いの場数は踏んでるからね!」


「私もそうだよ。喧嘩の場数は誰よりも踏んできた!」


 ベルリアはそう言うと、両手を自身の方に引っ張った。その時、シアンがかわして遠くにあるヨーヨーが逆回転を始め、ベルリアの元に戻ってきた。


「なっ!」


 予想より早く動くヨーヨーを見て、シアンは驚きつつも何とか攻撃をかわした。ベルリアはヨーヨーを戻した後、右手のヨーヨーを木刀に持ち替えてシアンに攻撃を仕掛けた。


「木刀? 悪いけど、私は本物を使ってるんだけどね!」


「じゃあこの一撃を受けてみなよ」


 と言って、ベルリアは力を込めて木刀を振り下ろした。その後、激しい音が響いた。ベーキウは目の前の光景を見て、思わず驚いた表情をした。


「シアンに一撃入れたよ。あの子」


「今のはまぐれ……と言うか、わざと受けたようにも見えるわ」


 攻撃を受け、額から血を流して後ろに下がるシアンを見て、ベーキウとキトリは話をした。シアンは左手で額を拭い、付着した血を見て笑みを浮かべた。


「余裕かと思ったけど、意外とあんた強いわね」


「こう見えても、喧嘩で負けたことはないのよ」


 そう答えながら、ベルリアは再び木刀を持ってシアンに迫った。シアンは魔力で殺傷能力を抑えた光の剣を出し、シアンの攻撃を受け止めた。


「少し本気を出させてもらうわ。勇者の力、甘く見ないことね!」


「あんたも私の力を甘く見ないほうがいいわよ」


 ベルリアから返ってきた言葉を聞き、シアンは心の中でこの小娘がふざけたことを言いやがると思ったが、ベルリアの左手のヨーヨーが自身に向かって放たれ、体の自由を奪ったことに気付いた。


「なっ!」


「勇者も意外と間抜けなのね」


 ベルリアはシアンの動きを奪った後、木刀で何度もシアンを殴った。シアンは自身の体を拘束しているヨーヨーから抜けようとしたのだが、ヨーヨーの糸は細かく絡んでおり、なかなか抜けることができなかった。


「チッ、仕方ないわね」


 シアンはそう呟くと、魔力を開放して無理矢理ヨーヨーの糸を破壊した。自由になったシアンはベルリアの胸元を掴み、ベルリアの額に向かって力を込めて頭突きをした。


「がっはっ!」


 頭突きを受けたベルリアは小さな悲鳴を上げ、後ろに倒れた。


「いてて……やりすぎた」


 シアンは頭を押さえてこう言ったが、すぐに気を取り直して倒れているベルリアにこう言った。


「私の勝ちね。さぁ、あんたが知ってるモンスターの情報を洗いざらい教えなさい!」


「勝手に勝利を宣言しないでよ……」


 ベルリアはふらつきながらも、立ち上がった。シアンはちょっと驚いたが、すぐに光の剣を構えた。


「かなり根性があるわね。だけど、容赦はしないわ」


「うるさいわねぇ……」


 ベルリアはふらつきつつも、自身気ある笑みを浮かべるシアンを睨んだ。




 一方その頃、ジャオウたちはまだ町に戻れないでいた。


「町への道は一体どこだ?」


「こんなに深い森の中だと、もう方向が分からないよ」


「あーん! 誰でもいいから助けてェェェェェェェェェェ!」


 ずーっと森の中を迷っているレリルは、泣きながら叫んだ。そんな中、ジャオウは何かを見つけた。


「見ろ、光がある。それに、下の道は道路っぽいぞ。あれを辿れば町に戻れるはず」


「あんたの言うことなんて聞けるか! あーもう、スマホの電波がないから地図は見れないし……方向ド音痴は勝手に張り切るし。どうしたらいいのー!」


 レリルが泣き叫ぶ中、ジャオウはアルムを連れて勝手に走り始めた。レリルはそのことを知り、大きな声で罵倒しながらジャオウを追いかけた。ジャオウが見つけた道路の先にあったのは、町ではなく廃墟だった。


「む……間違えたか」


 レリルはジャオウに近付き、サブミッションを仕掛けた。


「一度気を失うまで締めてやらァァァァァァァァァァ!」


「ぐわァァァァァ! 止めろォォォォォ! 口を近付けるな、臭い!」


 レリルによる体術と口臭でジャオウが苦しむ中、アルムが何かの気配を感じた。


「ちょっと待って。ここ、誰かいる」


「え? 誰かいる? でももうちょい待って、こいつ締めないと気が済まないのよ!」


 レリルはジャオウにサブミッションを仕掛けながらこう言った。その時、草むらから音がした。


「やっぱり誰かいる!」


「分かった分かった! じゃあそいつに言っといて、今取り込み中だから出てこられても困るって!」


「モンスターだったら人の言葉分からないって!」


「あ……が……そんなことより……助け……て……」


 ジャオウたちが勝手に騒ぐ中、草むらの中にいる何者かは姿を現した。それは大きな獣で、それを見たアルムは驚いて後ろに倒れた。ジャオウにサブミッションを仕掛けているレリルは獣を見て、思わず技を解いてしまった。


「ようやく……解放できた……関節が痛い」


 ジャオウは体中の関節が痛むため、動けなかった。そんなジャオウに向かって、獣は接近していた。


「ジャオウ! モンスターが近付いているよ! 早く逃げて!」


「立ち上がりたいが……立てられぬ」


「レリルさん!」


「えー? ちょっと、私のせい?」


「その通りですよ! 早くジャオウを助けて! 僕の距離じゃ届かない!」


 アルムに言われ、レリルは仕方なくジャオウに向かって走り出した。だが、獣の方が速くジャオウに接近していた。


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