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魁! アマザラシ高等学校


 結局、ベーキウたちはホテル街にあるホテルの部屋を借り、一泊した。部屋割りはベーキウは一人で別の部屋で泊まり、残りの女子二人とババア一人となった。この部屋割りに関して、クーアは文句を言っていた。


「どうしてわらわとベーキウの相部屋じゃないんだ!」


「仕方ないでしょー。マスコミの連中にこのことが知られたら面倒だし」


「すでにフロントのおばちゃんがわらわたちのことを把握しているではないか! あのおばちゃん、金を渡せばマスコミに情報を垂らすぞ!」


「ホテルのフロントが客の情報をばらすわけないでしょ。それに、私たちの事情を察して未成年の私がいるのに部屋を貸してくれたのよ。感謝しないと」


 そう言いながら、シャワーを浴び終えたキトリがこう言った。シアンは大きなあくびをし、ベッドの上に横になった。


「それじゃ、私は先に寝るわ」


「分かったわ。お休み」


 キトリは横のベッドに座り、寝る支度を始めた。クーアはあくびをしながらシャワールームに入って体を洗い、シャワールームの外に出た。


「さて、体も洗ったし歯も磨いた。あとは寝るだけ……」


 ここでクーアは察した。すでにシアンとキトリがベッドの上で横になり、眠っている。クーアが寝る場所がないのだ。


「あいつら……」


 年長者である自分を雑に扱っていることに腹が立ち、クーアはすやすやと寝息を立てているシアンを布団でくるみ、下に突き落とした。


「さて、これで眠れる。布団はないが、今日は少し熱いから大丈夫じゃろう」


 そう呟き、クーアはすぐに大きないびきをかいて眠った。下に落とされたシアンは尻をさすりながら、爆睡するクーアを睨んだ。


「このババア、よくもやってくれたわね」


 シアンは布団から抜け出た後、近くにあったタオルをクーアの口の中に突っ込み、布団でくるんで外に追い出した。


「さて、これで眠れる」


 そう言ってシアンは再びベッドの上で横になったのだが、クーアが魔力を開放して宙を飛び、部屋に戻ってきた。


「おい勇者、そこはわらわのベッドじゃ。お前は床の上で寝ろ」


「嫌よ。汚いもん。ここ、ラブホよ。変な毛が床の上にあるかもしれないじゃない」


「知るかそんなこと」


 と言って、クーアはシアンを床の上に蹴り飛ばした。ベッドを奪って横になろうとしたのだが、下から伸びたシアンの手がクーアの足を掴み、床の上に引きずり下ろした。その際、クーアは後頭部をベッドにぶつけた。


「あだっ! 勇者! 頭をぶつけてしまったではないか!」


「うるさいわねー。自業自得よ!」


「お前のせいじゃろうが!」


 クーアは近くにあったスリッパを手にし、シアンの口の中に突っ込んだ。シアンは嗚咽しながらスリッパを吐き出し、クーアの両頬を引っ張った。


「いひゃいいひゃい! ひょおのひくがひひひれる!」


「なんて言ってんのよ? ちゃんと人の言葉を放しなさいよ!」


「うがー! この勇者! こうなったら無理矢理にでも貴様を倒し、ベッドの上を奪ってやるのじゃ!」


 クーアは魔力を開放して構えた。シアンは小さく笑い、机の上に置いてあった剣を手にした。


「最初からこのやり方でやればよかったのよ! ジャオウと決着をつける前に、あんたとの決着と付けてやるわ!」


「覚悟しろ勇者!」


「覚悟するのはあんたらの方よ」


 不機嫌な表情のキトリはそう言うと、闇の魔力でシアンとクーアを攻撃し、気を失わせた。


「これでやっと眠れる……」


 と言って、キトリは再びベッドの上で横になった。


 翌朝。フロントのおばちゃんがボロボロになったシアンとクーアを見て、こう言った。


「昨晩はお楽しみの用でしたね」


「全然」


「何もお楽しみじゃなかったわ」


 シアンとクーアがそう言った後、ホテル代を支払ってベーキウたちは外に出た。


「それじゃ、アマザラシ高等学校に向かうか」


 ベーキウの言葉を聞いたシアンたちは、頷いて返事をした。




 数分後、ベーキウたちはアマザラシ高等学校の門前にいた。見た目は立派な後者だが、ところどころ喧嘩の跡でボロボロになり、校門にはヤンキーが書いたであろう落書きが多数あった。


「うわー、荒れてるわね」


「バカなヤンキーがたくさんいそうじゃ」


 シアンとクーアがこう言うと、歩いていた学生がベーキウたちを見て驚いた。


「あ! 勇者パーティーだ!」


 その言葉を聞いたシアンは照れつつ、学生に近付いた。


「はいそうです。何か用ですか?」


 シアンはそう言うと、その学生はバックから大きな釘バットを手にし、振りかざした。


「ここでお前を倒して名を上げてやる!」


 襲ってきた学生に対し、シアンは飛び蹴りで反撃した。


「やはり……俺では勇者に勝てぬのか」


 と言って、学生は倒れた。その様子を見たベーキウは呆れてこう言った。


「血の気の多い連中が多いな」


 その後、ベーキウたちは後者の中に入り、受付に話をした。


「分かりました。本日理事長は出張のため席を外していますので、自然のエメラルドの件は校長に話します」


「よろしくお願いします」


 受付の話を聞き、ベーキウたちは近くの椅子で座って待つことにした。数分後、ハンカチで汗をぬぐいながら走って近付いてくる中年の男性の姿が見えた。


「どうもどうも。私がアマザラシ高等学校の校長です。まさか、勇者パーティーの皆様がこんな学校に立ち寄るなんて、思ってもいませんでしたよ」


 校長は愛想のある笑顔でベーキウたちと握手をした。シアンは何度も頭を下げる校長を見て、こう言った。


「本題に入るわ。私たちはファントムブレードと言う武器を作るため、素材を集めています。その素材の一つが、ここにある自然のエメラルドなの。できれば、譲ってほしいのですが」


「そうですか。やはり噂は本当でしたか。勇者パーティーが幻の武器を作るために、素材を集めていたのは」


「ええそうよ。で、自然のエメラルドはどこ? 何か条件があれば、言ってみてください」


 シアンの話を聞き、校長は安堵した表情でこう言った。


「条件ですね。実は、前々から問題になっていることが……」


「この学校のヤンキー共か?」


 クーアがこう言ったが、校長は首を横に振った。


「不良共のことではありません。実は、この学校にある近くの廃墟に、昔から住んでいる大きなモンスターがいるんです」


「大きなモンスター?」


 キトリがこう聞くと、校長は頷いて話を続けた。


「かなり古く、私が子供のころから言われているんです。ここの近くの廃墟には大きくて凶暴なモンスターが住んでいる。近付いたら食べられるから絶対に近寄るなと」


「昔からいるモンスターなのか。でも、誰も倒しに行かなかったんですか?」


「ええ。誰も皆、モンスターが恐ろしくて倒しに行けないのです」


 ベーキウの質問に対し、校長はこう答えた。しばらく間を開けた後、シアンは胸を叩いてこう言った。


「なら、そいつを倒せば自然のエメラルドを譲ってくれるのね!」


「そうです」


「了解! ならすぐに倒しに行くわ!」


 シアンの言葉を聞き、校長は再び頭を下げて礼の言葉を告げた。その時、ベーキウは物陰から人の気配を感じた。


「そこにいるのは誰だ?」


 ベーキウがこう言うと、物陰からベルリアが姿を現した。ベルリアを見た校長は驚きつつ、ベルリアに近付いた。


「君は一年のベルリアではないか。勇者パーティーに用があるのかね?」


「ええそうよ」


 ベルリアは校長にそう答えると、手にしているヨーヨーをシアンに向けて放った。攻撃を瞬時に察したベーキウはヨーヨーを蹴り、攻撃の軌道を変えた。


「何のつもりだ?」


「あんたらよそ者に話すことは何一つない。言うとしたら一つ、あのモンスターのことは忘れなさい」


 ベルリアの言葉を聞き、ベーキウたちは少しだけ戸惑った。


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