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ヨーヨー使いの少女


 ヤンキーの群れに囲まれたベーキウたちだったが、ヨーヨーを使う少女が現れ、ヤンキーたちを一掃した。この少女が次の目的地、アマザラシ高等学校の生徒だと察したシアンは、彼女にアマザラシ高等学校の場所を聞こうと考えた。だが、その考えを見抜いた少女は地面に向かって唾を吐き、こう言った。


「学校の場所なんて、調べればすぐにわかるでしょうが。そんな汚い笑顔じゃあ何を考えているか分かるわよ」


 と言って、去ろうとした。その時、逃げたはずのヤンキーたちが仲間を連れて戻ってきた。


「やいベルリア! お前よくも俺の仲間をコテンパンにしてくれたな! 女だろうが容赦はしない!」


 ヤンキーのリーダー格の大男が釘バットを持ってベルリアに襲い掛かった。ベルリアは大男の攻撃をかわし、両手のヨーヨーを投げた。ヨーヨーは大男の体に絡まり、動きを封じた。


「あ。あら? あらら? これじゃあ動けないわよ」


 大男は情けない声を上げつつ、その場に倒れた。ベルリアは倒れた大男の顔を踏みつけ、見下すようにこう言った。


「これ以上痛い目にあいたくなかったら、さっさと帰りな。雑魚の相手なんてしてられないんだ」


 その言葉を聞いた大男は苛立ち、立ち上がってベルリアに攻撃しようとした。だが、ベルリアの目が冷たく、下手に何かを言ったら痛い目を見ると察した。


「撤退だ! やっぱりベルリアには適わない!」


「えー! そんなー!」


「俺たちは勝てると思ってリーダーを呼んだのにー!」


「その結果がこれだ! あーもう、あんなヨーヨーを使うって反則だよー!」


 大男たちは情けない声を上げながら逃げて行った。ベーキウはベルリアに近付き、話しかけた。


「強いな。ヨーヨーをあんな風に使う戦士なんて初めて見たよ」


「私をおだてても何も言わないわよ。それじゃ、私は用があるから」


 と言って、そっけない態度でベルリアは去って行った。クーアはあとを追いかけようとしたのだが、ベルリアの殺意に満ちた視線を感じて動きを止めた。去って行くベルリアの背中を見て、クーアはため息を吐いた。


「なんじゃい。結局あいつもあの間抜けなヤンキーと同類ってわけか。困ってる人を見捨てるつもりかー?」


「とりあえず、学校に向かいましょう。どうやら、あそこの建物がそうらしいし」


 キトリが離れた所にある建物を見て、こう言った。




 一方その頃、町から大きく外れた森の中、ジャオウがうなり声をあげていた。


「参った。迷った」


「迷ったじゃないわよこの大バカ野郎がァァァァァァァァァァ!」


 怒りの声を上げながら、レリルはジャオウにチョークスリーパーをかけた。苦しそうに声を上げながら、ジャオウはレリルから離れた。


「し……仕方ないだろうが! 俺だって迷うことがある!」


「方向ド音痴のあんたに地図を渡したのが大きな間違いだったわよ! あーもう、どこに向かえばいいのよもう!」


 レリルが泣きながらこう言うと、周囲を見回してあることに気付いた。


「あれ? アルムは?」


「こ……ここですゥゥゥゥゥ!」


 上からアルムの声が聞こえた。ジャオウとレリルが上を見上げると、そこには動くつたに絡まってしまったアルムの姿があった。


「アルム!」


 ジャオウは大剣を手にし、勢い良くジャンプしてアルムに絡まるツタを斬った。だが、ツタはすぐに再生し、ジャオウの体に絡みついた。


「あっ! クソッ! 斬ってもすぐに再生するのか!」


「レリルさん! どこかにこのツタを操る何かがいると思います! 倒して動きを止めてください!」


 ジャオウとアルムの悲鳴を聞いたレリルは、しょうがないと思いつつツタを操る主を探した。しばらくして、大きな口を開けている化け物みたいな花を見つけた。


「こいつが原因ね。秒で倒してやるわ」


 そう言いながら、レリルは化け物みたいな花に近付いた。その花はレリルの口臭を嗅ぎ、悲鳴を上げながらものすごい勢いで枯れてしまった。ジャオウとアルムに絡みついていたツタはあっという間に枯れ落ち、二人は地面に落下した。


「ありがとうレリル」


「助かりました」


「私何もしてないけど……何故か結構むかつく」


 レリルは苛立ちを感じつつ、枯れた花を踏み潰した。




 ベーキウたちはアマザラシ高等学校の場所を把握し、向かおうとした。だが、再びヤンキーたちに絡まれてしまった。


「おい兄ちゃんたちよォ、ここから通りたければ金を払いな」


「あんたらみたいなブサイク面に渡す金はないわよ」


「金が欲しければバイトすればいいじゃろうが。二、三カ月働けば、整形代ならすぐに稼げるじゃろうが」


 と言って、シアンとクーアはヤンキーを相手にしなかった。だが、ヤンキーはシアンに近付きつつ、グラサンを外しながらこう言った。


「俺、タクヒロ・シブオトコ。略してタクシブ。へへへ、付き合ってよかわいいお嬢さん」


 タクヒロ・シブオトコことタクシブはシアンをナンパしたのだが、シアンはタクシブにアイアンクローを仕掛け、そのまま上に持ち上げた。


「あんたみたいなナルシストの不細工を相手にする時間はないの。あんたはその辺の売れ残った熟女の相手をしてなさい」


 そう言って、シアンは派手なドレスを着て、ナンパ町をしている熟女たちの元にタクシブをぶん投げた。熟女たちはタクシブがナンパをしにきたと勝手に勘違いをし、集団でタクシブを連れ去ってしまった。


「ああ! シブさんが熟女に捕まった!」


「あの人は年下好きなのに、かわいそう……いや、そうでもねーか」


「とりあえず助けに行こう。俺たち、あの人の世話になってるんだし」


 会話を終えたタクシブの仲間は、タクシブを連れ去った熟女たちを追いかけた。やっと先に進めると思ったキトリだったが、ホストのような服装の不細工な男がキトリに近付いた。


「お嬢さん、よかったら僕とデートしませんか?」


「結構です。私には彼がいるので」


 と言って、キトリはベーキウの腕に抱き着いた。ホスト風の不細工男はこりゃダメだと思い、別の美少女に近付いてナンパをした。


「お嬢さん、よかったら僕とデートしませんか?」


「私、男です」


「あはは。下手な嘘ですね。そんなにかわいい顔をしているのに、男なんて……」


「では証拠を見せます。あそこの物陰まで一緒に付いてきてください」


 その後、男はナンパした男の娘と一緒に物影に移動し、現実を目の当たりにして悲鳴を上げた。そんな様子を見ていたキトリはため息を吐いた。


「この町の治安は一体どうなっているんだか……ちょっとでも歩いたら、ヤンキーやらナンパ男に遭遇する」


「確かにそうだけど……キトリ、いつまで俺の腕に抱き着くつもりだ?」


「で……できたらこのまま……ずっと」


 と、照れながらキトリはそう言ったが、背後からシアンとクーアの殺意を感じ、すぐにベーキウから離れた。


「キトリ、あんたどさくさに紛れて何やってんのよ?」


「ベーキウを彼氏だと説明したな? 今の光景、見ておったぞ」


「仕方ないじゃない。それよりも……もう暗いわよ」


「話をごまかすな!」


 クーアはそう言ったが、改めて周りを見ると、すでに日は暮れていた。


「仕方ないのー。この時刻だと学校に行っても間に合わん。仕方ないから宿に行くか?」


「でも、この辺に宿なんてあるかしら?」


 シアンはそう言いながら、周囲を見回した。だが、何かを見つけたクーアが指をさしてこう言った。


「あるじゃろうが、ほれ」


 クーアが指をさす方向には、ピンク色のネオンが光っているホテル街があった。それを見たシアンはクーアの頭を叩いたが、クーアは泣きながら叫んだ。


「だって、仕方ないじゃないか! ここら辺にビジネスホテルがあると思うか? いざとなったらラブホで寝るしかないじゃろうが!」


「勇者がラブホで一泊過ごしたなんて世間一般に知れ渡ったら、何て言われるか分かってんのクソババア!」


「うるせぇ! そうなったら力でメディアの連中の口を封じればいいじゃろうが! お前がやらなかったら、わらわがやる!」


 その言葉を聞いたシアンは怒りを鎮め、こう言った。


「そうね。その時はあんたを盾にするわ。それじゃ、とりあえず今日は休みましょう」


 シアンはそう言ってベーキウを連れ、無理矢理ホテル街へ向かった。ベーキウはこんなんでいいのかと心の中で思った。


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