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最近シリアスなバトルが続いているからお忘れでしょうが、この作品はコメディです


 ベーキウとジャオウが放った衝撃波に向かって、シアンはグレトールを蹴り飛ばした。グレトールは迫る衝撃波を見て、笑みを浮かべていた。そして、グレトールは衝撃波に激突した。激しい破裂音が響き、その直後に砂煙が舞った。


「やったか?」


「その言葉は敵を倒していない時に言うものだ」


 ベーキウとジャオウが話をしていると、砂煙がすぐに収まった。その中にいたのは、多少傷を負いながらも、両手を広げて余裕のアピールをしているグレトールの姿だった。


「どじゃーん。いろいろ考えて攻撃したと思うんだけど、結局無駄だったねー」


 そう言って、グレトールは笑みを浮かべた。その笑みを見たシアンはイラっとしつつも、すぐにベーキウとジャオウに近付いた。


「このままあのクソヤロウとの戦いを長引かせたらまずいわね」


「ああ。俺たちは体力や魔力を消耗するのに、あいつは疲れる様子がない」


「ダメージを与えているのは確かだ。だが、あいつの体力がどこまであるか……」


 そんな話をしていると、突如鼻に突く臭いがした。




 一方外では、レリルがランプのふたを開けて大声で叫んでいた。


「頑張んなさーい! 今、ヘンテコな魔人を倒すのはあんたらにかかってるんだからねー! 負けたら承知しないわよー!」


 と、口を開けて叫んでいた。近くにいたアルムは呆れていたが、レリルの口臭が多少鼻に入ったため、嗚咽しながら後ろに下がった。


「レリルさん……今朝、またニンニクを食べたんですか?」


「そりゃーそうよ。大好物だもん」


「ニンニク食べたら歯磨きしてくださいよ」


「仕方ないじゃん。歯磨きする余裕なんてなかったんだから」


 レリルの返事を聞いたクーアたちは、嫌そうな顔をしてドン引きした。


「うわぁ……お前、エチケットって言葉知っておるか?」


「ニンニク食べたらさすがに口臭ケアするわよ」


 クーアとキトリの言葉を聞いてカチンとしたレリルだったが、アルジームとパンジーが続けてこう言った。


「お前、ガムとか持ってないか?」


「ミントのキャンディならあるわ。それでも舐めてなさい」


 と言って、パンジーは無理矢理パンジーにミントキャンディを渡した。少し戸惑ったレリルだったが、ミントキャンディを口にした。


「これでいいでしょ、これで?」


「ミントキャンディ一粒でどうすることもできないレベルの口臭だと思うけど……」


 アルムはミントキャンディを舐めるレリルを見て、小さく呟いた。




 レリルの口臭はランプの中に漂っていた。換気扇はなく、窓も存在しない。完全密室、完全密封のこの空間の中で、レリルの口臭が漂っているのだ。


「お……おげぇ……」


「があ……ぐおお……」


 ベーキウとジャオウは苦しそうな声を上げながら、その場で四つん這いになった。シアンは何度も嗚咽しながらも、剣を杖代わりにして倒れないようにしていた。


「このニンニク臭……あのサキュバス女、一体何したの……」


 その時、シアンは限界に達し、素早く部屋の隅に移動してリバースした。それを見たグレトールは苦しそうな声を上げた。


「お……お前……私の部屋でリバースするな! に……臭いが……」


 その時だった、漂う臭いが強くなったのだ。


「グギャァァァァァァァァァァ!」


「オボワァァァァァァァァァァ!」


 ベーキウとジャオウは奇声を上げながらその場に倒れ、殺虫スプレーを全身に浴びて苦しむGのような動きをした。


「あ……があ……や……やば……」


 リバースが終わったと思って苦しそうに呼吸をしていたレリルだったが、再びきつい臭いが襲ったため、またリバースしてしまった。一方で、グレトールはその場に倒れ、腰を上下に動かしながらもがいていた。


「がァァァァァァァァァァ! 何だこの臭いは! さっきから私の鼻にまとわりつく! 誰でもいいから助けてくれェェェェェェェェェェ!」


 ランプの中は阿鼻叫喚だった。レリルの口臭がベーキウたちを襲い、苦しませていた。




 で、自分のせいでランプの中が大変なことになっていることを知らないレリルは、まだ応援を続けていた。


「おーい! 返事してー! 誰でもいいから返事しなさーい!」


 何度も声をかけていたが、ランプの中から返事はなかった。アルムはハンカチで手を抑えながら、レリルに近付いた。


「今、ジャオウたちは真剣に戦っているんです。返事をしている暇なんてありませんよ」


「うっさいわね! 何度も声をかければいつかきっと、返事が返ってくるわ!」


「邪魔しちゃいけませんよ! とにかく今は援護をしても意味がないから、ジャオウたちが帰ってくることを願いましょう!」


「願ってるだけじゃ意味がないわ! 応援してガッツ上げないと、多分勝てないわ! 戦いが始まって結構時間が経っているわ! 苦戦してる証拠よ!」


 と言って、レリルは応援を続けた。困ったアルムの表情を見たキトリはアルムに近付き、頷いてこう言った。


「私も手伝うわ。あのサキュバスが何かする前にランプから遠ざけないと」


「ありがとうございます」


 その後、キトリとアルムはレリルの腰を掴み、ランプからどかそうとした。


「あ! ちょっと、放しなさいよ!」


「いいからランプから離れなさい!」


「下手したら、あなたの口臭で戦いの邪魔になってるかもしれないんですよ!」


「私の口の臭いごときで戦いの邪魔になるわけないでしょうが!」


「ミントキャンディ舐めてもこれだけの口臭がするんですよ? あなた、自分の口臭がどれだけ強いか知らないんですか?」


「知るわけないでしょうが!」


「なら教えますよ! 羽虫があなたの口臭のせいで命を落とすレベルの臭さですよ!」


「そこまで言うのは酷くない? 私の口がそこまで臭いわけないでしょうが!」


「なら、これを使って」


 と言って、パンジーは使い捨てマスクをレリルに渡した。レリルはぶつぶつ文句を言いつつも、マスクを身に着けた。それから数秒後、レリルの表情が真っ青になり、急いでマスクを外し、窓を開けて外に顔を出した。


「おげっ! オェェェェェ! ゲホッ! ゲホッ!」


 アルムは苦しむレリルを見て、ようやく自身の口臭がどれだけ強いのか察することができたのだろうと思った。


「な……何よ今の? 走馬灯が見えたわ」


「やーっと自分自身の口臭が、どれだけ周りに迷惑をかけているのか理解したか」


 クーアは呆れた様子で咳き込むレリルを見た。




 一方ランプの中。レリルの口臭のせいで苦しんでいたベーキウたちだったが、レリルが何度も口を開けて応援したため、中で充満している口臭は強さを増していた。そのせいで、ベーキウたちは気を失っていた。もちろん、グレトールもレリルの口臭のせいで気を失っていた。


 しばらくの間、誰も目を覚ますことはなかった。静寂、そしてレリルの口臭がこの場を支配する中、シアンの体が動いた。


「ゲホッ! ゴホッ、ガハッ!」


 シアンは咳き込みながら目を覚ました。そして、再びレリルの口臭が鼻を襲った後、シアンは周りを見回した。


 嘘……あのサキュバス女の口臭で皆気を失ってる! どれだけあのサキュバス、口が臭いのよ!


 そう思いつつ、シアンは気を失ったベーキウとジャオウに近付いた。ベーキウは白目をむいていて、ジャオウは腕や体を突いても反応しなかった。


 こりゃー完全に気を失ってるわ。もしかして、あいつも。


 シアンはグレトールのことが気になり、倒れているグレトールに近付いた。グレトールもベーキウと同じように、白目をむいて完全に気を失っていた。


 ありゃま、今回の長編のラスボスが口臭ごときで気を失うなんて、情けない話……いや、私たちも口臭で気を失ったから同じことか。


 そう思いながら、完全に気を失ったグレトールを見ていた。


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