手段はないのか?
グレトールは強敵であった。一対三の状況の中、ベーキウたちを追い込んでいるのだ。不思議な力による攻撃を見極めること、そして異様な運動神経を持つグレトールをベーキウたちは対処できなかったのだ。電撃を受けたベーキウたちだったが、シアンは何とか立ち上がり、グレトールを睨んだ。立ち上がったシアンを見たグレトールは、ゆっくりと拍手を送っていた。
「すごいねぇ。あの野郎二人は電撃を浴びて気を失ったけど、君はピンピンしてる」
「うるさいわねぇ……私は勇者。あんたみたいなふざけた奴に倒されるわけにはいかないのよ」
と言って、シアンは剣を構えた。シアンの言葉を聞いたグレトールは腹を抱えて笑い始めた。
「君みたいな弱っちい奴が勇者? ギャーッハッハッハ! おかしい話だねぇ! 確かに勇者の一族とか自分で名乗ってる頭のイカれた一族がいたよ! そうか、君はその頭のねじがぶっ飛んだおかしな連中の血を引き継いだカワイソーな子なんだね! ご愁傷様!」
グレトールの言葉を聞いたシアンの怒りは爆発し、魔力を開放してグレトールに接近した。シアンは感情に任せて拳を振るったが、グレトールは攻撃をかわした。
「それなりにプライドは持っているんだね。そんな馬糞が付着したクソみたいな汚いプライド、捨てればいいのに」
「これ以上喋ると、殺す!」
「殺す? 君みたいな脳みそが腐った哀れで愚かで超間抜けな一族の血を引き継いだこの世で一番存在価値のない無意味な君がこの私を殺すって? おいおい、質の悪い冗談を言うのは止めてくれよ。私、そういうのは嫌いなんだ」
「殺す!」
シアンは剣を手にし、グレトールに向かって振り下ろした。グレトールは斬撃を受け、ショックを受けた表情をした。
「嘘だろ」
その直後、シアンは手にした剣でグレトールの腹を突いた。追撃を受けたグレトールだったが、鬼のような形相のシアンを見て、大きな声で笑い始めた。
「アーッハッハッハ! これで倒したつもりかい? 残念! ヒジョーに残念!」
グレトールがこう言うと、突如グレトールの体が霧散した。
「なっ!」
「力を使えば、体を霧のようにすることができる。君がさっき放った斬撃も、無意味だったんだよねー」
シアンの後ろに回ったグレトールはシアンの頭を掴み、電撃を放った。
「キャァァァァァァァァァァ!」
「いやー、いい悲鳴だねー。寝る前に聞いたらいい夢見そうだよ」
再び黒焦げになったシアンを見た後、グレトールは気を失ったシアンを蹴り飛ばした。その後、気を失っているベーキウとジャオウに近付き、笑みを浮かべた。
「情けない野郎だねぇ。あのクソまずいパンのように黒焦げになった自称勇者のバカ少女は果敢に挑んだのに、野郎は気を失ってダウンだなんて。そんな野郎には、今後生きる資格などありましぇーん」
と言って、ベーキウとジャオウの頭を掴んだ。
ランプの外にいるクーアは、ランプの中のベーキウたちの魔力が弱くなったことを察していた。
「まずい! ベーキウたちの魔力がかなり弱くなっておる!」
「どうしよう、何かできないかな?」
アルムがおろおろしていると、槍を持ったパンジーがランプに近付いた。
「こうなったら実力行使! とにかくこれをぶん投げるわ!」
と言って、パンジーは無理矢理槍をランプの中に入れようとした。パンジーが無茶なことをすると察したランプは悲鳴を上げた。
「いやァァァァァァァァァァ! 止めてェェェェェ! そんなに太くて大きいものを私の中に入れないでェェェェェ!」
「おい! 変な声を上げながら変なことを言うな! 絶対に勘違いする奴がいる!」
アルジームはランプに向かって叫んだ。そんな中、パンジーは無理矢理槍をランプの中に押し込んだ。
「は……入っちゃったぁ……」
「え? ちょ……これ、どうなるの?」
クーアはランプの中に入った槍を見たが、相変わらず中は暗くて何も分からなかった。
グレトールは倒れたベーキウとジャオウの寿命を奪おうとしていた。そんな中、上から槍が降ってきてグレトールの頭に刺さった。
「あがぁっ!」
攻撃を受けたグレトールは後ろに倒れ、急いで頭に刺さった槍を抜いた。
「いっだ! 実体化している時に槍が落ちてくるなんて!」
そう言いながら、頭から噴水のように流れる血を手で塞いだ。そんな中、ベーキウとジャオウが目を覚まし、立ち上がった。
「へっ……わけが分からないけど、ダメージを受けたみたいだな」
「好都合!」
と言って、同時にグレトールに攻撃を仕掛けた。油断していたグレトールは斬撃を受け、後ろに下がった。
「グウッ! 邪魔が入らなければ……」
苦しそうにそう言いながら、グレトールはベーキウとジャオウを睨んだ。
キトリはランプの中から声を聞き、クーアたちにこう言った。
「今の槍がグレトールにダメージを与えたみたい!」
「なら、外からあいつに攻撃できるってことじゃん!」
外からの介入ができると察したレリルは、部屋の中にある分厚い本や大剣、鎧のオブジェを持ってきてランプの中に入れようとした。
「いやァァァァァァァァァァ! こんなに……こんなには入らない!」
「だったら入り口を無理矢理広げてもぶち込んでやるわ!」
「いやァァァァァァァァァァ! 入り口を広げないでェェェェェ! 私、どうにかなっちゃいそう!」
「だからそれっぽいことを言うのは止めろ!」
アルジームはランプの注ぎ口を叩いてこう言った。レリルは上から無理矢理いろんなものをランプの中にぶち込んだ後、パンジーたちにこう言った。
「とにかく何でもいいからこいつの中にいろいろとぶち込むのよ!」
「オッケー!」
「じゃあ、魔力でもぶち込むか!」
と言って、クーアはランプの中に手を突っ込み、魔力を開放した。
「ひぎィィィィィ! 指を入れるのはらめてェェェェェ!」
「お前はこれ以上エロい声で変なことを言うのは止めろ!」
アルジームはランプに向かってこう言った。
グレトールは上から何かが落ちてくると察し、上を見上げた。
「な……なァァァァァァァァァァ!」
上からいろんなガラクタが落ちていると気付き、グレトールは驚きつつ当たらないように逃げた。ベーキウとジャオウも慌てて動き始めた。
「おいおいおい! 何でもぶち込めばいいってわけじゃないのに!」
「俺たちに当たるってこと、考えてないようだな」
ベーキウとジャオウが話をしていると、巨大な机が気を失っているシアンに命中した。
「ガッファッ!」
この一撃でシアンは目を覚ましたが、上から降ってきたクーアの魔力がシアンに直撃した。
「ギャァァァァァァァァァァ!」
「シアン!」
ボロボロになって吹き飛んだシアンを見て、ベーキウとジャオウは急いでシアンに駆け付けた。
「この魔力は……あのババアの魔力……あのクソババア、この戦いが終わったら血祭りにしてやるわ」
シアンはクーアに対して怒りを燃やし、立ち上がった。その時、ジャオウはシアンから恐ろしい殺意を感じ、冷や汗をかいていた。そんな中、いろんな落下物に当たり、クーアの魔力が命中したグレトールが力を開放した。
「クソッたれが! ふざけたことをしやがって!」
その時、再び落ちてきた机の角がグレトールの頭に命中した。しばらくグレトールは動かなかったが、怒りで上に乗っかっている机を粉砕し、立ち上がった。
「許さんぞ。この私をここまで怒らせたのはお前たちが初めてだ! このままお前たちを殺してやる!」
と言って、グレトールはベーキウたちに襲い掛かった。大きなたんこぶを作ったグレトールを見たシアンは、ベーキウとジャオウにこう言った。
「あいつの体は霧のように散ることもあるけど、隙を突いたらダメージを与えられるわ」
「とにかく攻撃を続けること。だな」
「その通り。さぁ、あのふざけた野郎を返り討ちにしてやるわよ!」
その言葉を聞いた後、ベーキウとジャオウは武器を構えた。
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