グレトールとの戦い
グレトールがいるランプの中に突入したベーキウ、シアン、ジャオウはグレトールと戦いを始めた。だが、グレトールは不思議な力でベーキウたちを翻弄した。
奇襲攻撃に失敗したジャオウは、ベーキウに近付いた。
「もう一度手を貸してくれ。何が何でもあいつにダメージを与えたい」
「俺も同じ気持ちだ。だけど、あの訳の分からない力をどう対処する?」
「そうだな……一度、バリアを使ってあいつの攻撃を防ぎつつ、近付こう」
「なら、私も手伝うわ」
シアンはベーキウとジャオウに近付いてこう言った。その後、不敵な笑みを浮かべているグレトールを睨みながら、ベーキウとジャオウは走り出した。
「おいおい、懲りない奴らだなぁ」
グレトールは両手を前に出し、衝撃波を発した。だが、ベーキウとジャオウの前に現れたシアンがバリアを張り、衝撃波を防いだ。
「ほーん。衝撃波を防いだか」
シアンが張ったバリアが衝撃波を防いだことを知り、グレトールは感心した声を上げた。シアンが攻撃を防御した直後、ベーキウは左、ジャオウは右に走り、グレトールに接近して武器を振るった。だが、グレトールはベーキウとジャオウの武器が振り下ろされるタイミングで武器を掴み、攻撃を邪魔していた。
「なっ!」
「大剣とクレイモアの一撃を……片手で防いだだと!」
「一応、魔人なんだよね。そんな安っぽい攻撃が通用すると思わないでほしいなぁ!」
グレトールは力を発し、再びベーキウとジャオウを吹き飛ばした。シアンはその隙にグレトールの背後に回り、剣を突き刺そうとした。だが、シアンの殺気と気配を察していたグレトールは素早く振り返り、シアンの腹に蹴りを入れた。
「ウアッ!」
シアンは悲鳴を上げながら、後ろに吹き飛んだ。グレトールは両手を垂らし、ぶらぶらと動かしながらこう言った。
「おいおいおいおい、これで終わりってわけじゃないだろ? もうちーっと本気を出してもらわないと、楽しくないよ」
苦しそうな顔で立ち上がるベーキウとジャオウは、無邪気に笑うグレトールを睨みつつ、歯を食いしばった。
ベーキウたちがランプの中に入ったことを知ったクーアたちは、急いでランプの近くに集合した。
「どうしよう、僕たちも中に入れないかな?」
アルムがこう言うと、クーアとキトリはランプのふたを開けて中に入ろうとした。
「クソッ! 中に入れないのじゃ!」
「さっきみたいな変な煙が出ない。あれを使わないと中に入れないのかしら?」
クーアとキトリが焦る中、ランプから声が聞こえた。
「ランプの中に入れるのは四人までです。それ以上この中に入ったら壊れます」
ランプの声を聞き、少しイラっとしたクーアが無理矢理右足をランプの中に突っ込もうとした。
「そんなこと知るかァァァァァ! そもそも、ランプの中に入れる定員なんてあるのか? あったとしても、何が何でも入ってやるのじゃ!」
「らめぇ! これ以上入ると、私が壊れちゃう!」
「うるせェェェェェ! エロゲーでチョメチョメしている時みたいな声を出すな! それに、お前を壊せるなら何だってやるのじゃ!」
「止めてェ! もし、グレトール様を倒さないで私を壊すと、あの子が消えちゃうわ!」
ランプが言うあの子がルーシィだと察し、クーアはランプから足をどかした。
「ねぇ、ランプのあんたが喋れるのは驚いたけど、やっぱりグレトールを倒さないとルーシィは解放されないの?」
レリルがランプに聞くと、ランプは少し光った。
「その通りです。グレトール様はあの子の体を捕らえ、自分の力と私を結びつけています。力の元はグレトール様。その元であるグレトール様を倒さないとあの子は解放できません」
「うーん、なんだか厄介な設定だけど……とにかくグレトールを倒さないといけないってことか」
アルジームがこう言うと、ルーシィは慌て始めた。
「でももし、グレトールさんが倒されたら私は一体どうなるんですか?」
「あなたはグレトール様に力を与えられ、その力を使えるだけの状態。願いの力を三つ使ったらその体は消滅してしまいますが、まだ願いを叶える力は二つ残っています」
「よかった……俺が願いを全部叶えなくて」
アルジームは安堵の息を吐いてこう言った。
物語の途中ですが、なんだかランプの設定やらグレトールの設定が難しいのでちょいと解説と過去話をはさみます。
まず、グレトールを作ったのは古の時代の欲深いバカな奴。そいつは魔力に似た力でグレトールを生み出します。グレトールは願いを叶える力を持っており、欲深い人間の願いを叶えました。
だけど、バカな人間の願いを叶えることがバカバカしくなってきたグレトールは次第に人間を見下すようになります。それで、逆に人間を使って遊んでやろうと考えました。それで、自身の体を隠せるようなランプを作り、自分の力を使って誰かを捕らえ、そいつに力を貸して願いを叶えることにしました。
で、どうしてここまでグレトールが長く生きていられる理由なんですが、三回願いをかなえた後、力を与えた人間は消滅してしまいます。その時残っていた寿命を奪い、それを使って生きてきたということです。以上で解説は終わりです。
グレトールと戦うベーキウたちは、苦しそうに呼吸をしていた。
「クソ……あいつ……強すぎる」
「なんて奴なの? 攻撃が当たらない」
「こんな奴、初めてだ」
ベーキウたちの苦しむ様子を見て、グレトールは笑っていた。
「おいおい、最初の威勢はどこに行ったんだよ? もっと楽しませろよ」
「うるせぇ!」
ベーキウはクレイモアを構え、グレトールに接近した。ベーキウの走る速度を見たグレトールは、口笛を吹いた。
「すごい速いねぇ。そんなに早く動けるなら、最初からそうしろよ」
「黙ってろ!」
力を込めてベーキウはクレイモアを振るったが、グレトールは上半身を後ろに反らし、攻撃をかわした。
「クソッ!」
「どう? フィギュアスケートの選手みたいで美しかっただろ?」
と言って、グレトールは足を勢いよく振り上げてベーキウのあごを蹴った。蹴りを受けたグレトールは後ろに下がったが、その隙に態勢を整えたグレトールは右手に力を込め、ベーキウの腹を殴った。
「ガハァッ!」
殴られたベーキウは勢い良く後ろに吹き飛び、見えない壁に激突した。
「ベーキウ! お前、よくも!」
シアンは剣と盾を構え、グレトールに向かって走り出した。ベーキウがやられて怒りが爆発したシアンを見たジャオウは、急いでシアンの動きを止めた。
「止めてよ! 放して! あいつを叩けないじゃない!」
「あんな野郎の挑発を聞くな! 突っ走っても、返り討ちにされるだけだ!」
ジャオウの言葉を聞き、シアンは冷静になった。その時、咳き込みながらベーキウがシアンに近付いた。
「まずいな……俺たちがどうやって戦っても、あいつに通用しない」
「確かにそうだな。何か、あいつに弱点があればいいんだが」
「弱点? このグレトールにそんなのはないよ」
グレトールが背後にいることを察したベーキウたちは、振り向いて武器を構えようとしたが、その前にグレトールは不思議な力でベーキウたちを捕らえ、電撃を流した。
「うわァァァァァァァァァァ!」
「キャァァァァァァァァァァ!」
「グワァァァァァァァァァァ!」
ベーキウたちは電撃を浴び、悲鳴を上げた。しばらくして電撃は収まり、黒焦げになったベーキウたちはその場に倒れた。
「アッハッハッハ! それで終わり? 情けないねぇ、強がりに似合った強さじゃなかったねぇ、アッハッハ!」
その場に倒れたベーキウたちを見て、グレトールは大声で笑いだした。その声を聞き、シアンは悔しそうに拳を握っていた。
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