元を叩け!
エバソスはアルムの不思議な技の仕掛けを察し、笑みを浮かべながら叫んだ。
「お前の攻撃の正体、ようやく理解したぜ!」
エバソスは叫んだ後、咳払いして話を続けた。
「お前のちっこいナイフがどうして俺の体を切り裂いたか? それはナイフの刃に魔力をぶち込み、ロングソード並みの刃の長さの魔力を放っていたんだ! それも、敵に攻撃が当たる寸前に魔力を開放する! フフフフフ……どうだ? 正解だろ?」
「ええその通りです。ですが、分かったとしても僕の攻撃を防ぐことはできませんよ」
攻撃の仕組みがエバソスにばれたにもかかわらず、アルムは動揺することも焦ることもせず、エバソスを挑発するような口調でこう言った。その口調、態度が気に入らないエバソスは魔力を開放し、無数の魔力の玉を放った。
「そのふざけた態度、いい加減改めろや! お前の攻撃はすでに察した! なのに、俺を倒すつもりかァァァァァ!」
「その通りですよ」
アルムはそう言うと、ナイフの刃の周りに魔力を注ぎ、魔力の刃を作った。そして、その刃でエバソスが放った魔力の玉を切り裂いた。
「覚悟してください」
アルムはエバソスに接近して、攻撃を仕掛けた。だが、その寸前に魔力の刃は消滅した。
「は……ギャハハハハハ! 運がなかったなぁ! 俺に攻撃をする前に、刃が消えちまうなんてなぁ!」
笑いながらエバソスはこう言ったが、レリルがアルムに近付き、魔力を送った。
「うるさい声を出さないでよ、口臭野郎」
その直後、アルムのナイフから再び魔力の刃が発生した。魔力の刃はエバソスの腹を突き刺し、そのまま背中を貫いた。
「あ……あぐがぁ……」
アルムはエバソスに攻撃を与えた後、魔力の刃を消した。攻撃を受けたエバソスは崩れるようにその場に倒れ、頭を上げてアルムを睨んだ。
「ぐ……クソが……」
「一対二の状況、そしてあなたは戦いの経験がないに等しい状態。それなりに魔力を使った攻撃はきつかったですが、その程度では僕たちを倒すことはできません」
「ち……勝ち誇りやがって……」
悔しそうに言葉を放つエバソスを見て、レリルは舌を出して威嚇しながらこう言った。
「勝ったから勝ち誇って何が悪いのよ! あんたは負けたんだから、さっさと潔く消えなさい!」
「ち……チクショウ……」
エバソスはそう呟き、消滅した。アルムは魔力を抑え、レリルの方を振り向いた。
「ありがとうございますレリルさん。あなたがいなかったら、あいつを倒せませんでした。魔力の刃が消えた時、正直焦りました」
「ふっふーん。多少は見直したー?」
「ええ。多少は」
アルムは小さく微笑みながら、レリルにこう言った。
ベーキウたちはランプから出てくる敵を、ひたすら斬っていた。シアンはクーアたちの戦いが終わったことを察し、ベーキウとジャオウにこう言った。
「とりあえず強敵は倒したみたい!」
「そうか、じゃああとは俺たちの戦いだけか」
「アルムとレリルが無事みたいでよかったが……魔力も体力も使ったから戦えないな」
「そうね。おっと!」
シアンは目の前に敵が現れたため、急いで剣を振るって攻撃した。ベーキウは倒してもわらわらと現れる敵を見て、何か敵を止める手段がないかと考えた。ジャオウはベーキウに近付き、こう聞いた。
「敵の動きを止める方法を考えているのか?」
「ああ。もしかしたら、クーアたちが戦った敵と同じレベルの奴が出てくるかもしれない。今、クーアたちはまともに戦えないんだ」
「そうだな。この状況で出てきたら全滅する。む、危ない!」
ジャオウは大剣を振り下ろし、ベーキウに攻撃をしようとした敵を一閃した。ベーキウは礼をしようとした時、ジャオウの背後にいた敵に気付き、急いで攻撃を放った。
「まずいな、さっきより数が増えているような気がする」
「気のせいじゃないわ。確実に敵の数が増えているわ!」
シアンは深呼吸しながらこう言った。早く敵の出所をどうにかしなければ、いずれ負ける。そう思ったベーキウたちだったが、ベーキウはグレトールがいるランプを見てこう言った。
「あいつのランプが出現しているなら、元を叩けば……」
「だが、あいつのランプはどれだけ叩いても壊れないぞ」
ジャオウがこう言ったが、ベーキウはグレトールのいるランプに近付いた。そして、無理矢理ランプのふたを開けた。
「外からダメなら中から攻撃だ!」
と言って、ベーキウはランプの内側を攻撃しようとしたが、突如ランプから紫色の煙が現れ、ベーキウを包み込んでしまった。
「うわァァァァァァァァァァ!」
「ベーキウ!」
「今助けるぞ!」
シアンとジャオウは急いでベーキウの元へ向かい、助けようとした。だが、紫色の煙はシアンとジャオウを包み込み、ランプの中に戻って行った。その様子を見ていたクーアとアルムは、急いでランプの元へ向かった。
「ベーキウは? シアンは? ジャオウはどうなったのじゃ!」
「変な煙に包まれて……その煙はこの中に戻って……」
「まさか……このランプの中に!」
クーアは急いでランプを手にし、上からランプを覗いた。だが、ランプの中はかなり暗く、中が見えなかった。
紫色の煙に包まれたベーキウは目を覚まし、起き上がって周囲を見回した。
「あ……あれ? どこだ、ここ?」
周囲を見回すと、気を失って倒れているシアンとジャオウの姿があった。ベーキウは急いでシアンとジャオウの元へ近付き、肩を叩いて起こした。
「う……うん……」
「どこだ、ここ?」
シアンとジャオウは目を覚まし、起き上がって周囲を見回した。その時、ベーキウたちの目の前に派手なファーが付いた暑苦しいコートを羽織った男が現れた。
「まさか、ランプの中に入ってくるとは思ってもいなかったよ」
この言葉を聞いたベーキウたちは男の正体を察し、攻撃を仕掛けた。だが、男はバリアを張ってベーキウたちの攻撃を防ぎ、衝撃波で吹き飛ばした。
「オイオイオイオイ、起き上がってすぐに攻撃するのは反則じゃねーか?」
「幼い子供を捕まえて力の源にして、何年も拘束した野郎に言われたくないわよ!」
シアンはそう言って、剣を構えた。男は小さく笑い、シアンに言葉を返した。
「そうでもしないと私は生きられないからなぁ。文句を言うなら、私を生み出した欲深い昔の人間に言ってくれよ」
「あの世で文句を言えって言いたいのか?」
ベーキウがこう言うと、男は大きな声で笑い始めた。
「その通りだ! お前たちはこのグレトールの手によって、このランプの中で息絶える運命なのだァァァァァァァァァァ!」
グレトールはそう言うと、強い魔力を発してベーキウたちに攻撃をした。ベーキウたちは攻撃をこらえた後、同時に攻撃を仕掛けた。
「あんたを倒して、ルーシィを救う!」
ベーキウは叫びながらクレイモアを振り下ろした。グレトールは左手でクレイモアを受け止め、右手でベーキウの腹に拳を入れた。
「うぐう!」
「そんな攻撃が通用するかっつーの」
攻撃を受けて意識が半分飛んでいるベーキウを投げ飛ばし、グレトールは攻撃を仕掛けようとするシアンを睨んだ。
「あのイケメンの仇討ちってわけか?」
「そうよ!」
シアンは剣を振り下ろして攻撃を仕掛けた。だが、グレトールは攻撃をかわした。
「今のは囮の攻撃だろ? 本命は次の攻撃」
「その通りよ!」
シアンは力を込め、逃げ決めの攻撃を放った。グレトールはバリアを張ってシアンの攻撃を防御したが、上から迫るジャオウの攻撃を見切ることができなかった。
「上から奇襲ね。でも……若いねぇ、そんな安っぽい攻撃が効くかっつーの!」
グレトールは再び強い衝撃波を発し、シアンとジャオウを吹き飛ばした。
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