アルムのプライド
ジナーニャは自在に動く矢を利用し、アルジームに攻撃を仕掛けていた。アルジームが矢の動きに悪戦苦闘する中、本命の攻撃を仕掛けるために矢を手にし、力を込めて放った。放たれた矢はアルジームに向かって飛んで行ったのだが、突如雷が放たれ、矢に命中して破裂した。
「なっ!」
突如現れた雷を見て、ジナーニャは驚いて動きを止めてしまった。次の瞬間、もう一発鼻垂れた雷がジナーニャに命中した。
「ギャァァァァァァァァァァ!」
攻撃を受けたジナーニャが悲鳴を上げると、アルジームを追いかけていた矢は動きを止め、下に落ちた。アルジームは周囲を見回すと、扉の外には杖を構えているドレミーファがいた。
「ドレミーファ大臣!」
「今のうちにあいつを倒すのだ! チャンスは今しかない!」
「ありがとうございます!」
アルジームはじゅうたんを操り、急いで倒れているジナーニャの元へ向かった。だが、到着したと同時にジナーニャは立ち上がり、弓を使ってアルジームの攻撃を防いだ。
「チッ! あと一歩だったのに!」
「くだらない技を受けて、死んでたまるか!」
そう言うと、ジナーニャはアルジームの腹を蹴って後ろに飛ばし、杖を構えているドレミーファを睨んだ。
「クソジジイ! 戦いの邪魔をするんじゃねぇ!」
「戦いの邪魔? 卑劣な手を使うのに、それなりにプライドがあるのだな」
ドレミーファはそう言うと、ルーシィに後ろに下がるように伝えた。ルーシィは心配そうにドレミーファを見たが、視線に気付いたドレミーファはこう言った。
「大丈夫だ。あの化け物は私たちに勝てない」
「私……たち?」
ルーシィがこう聞くと、ジナーニャはドレミーファに向かって矢を放った。ドレミーファはバリアを張り、攻撃を防いだ。
「はん! そんな安っぽいバリア、矢を撃ちまくればいずれ壊れる!」
「そうか。やれるものならやってみな」
ドレミーファの言葉を聞き、ジナーニャは無我夢中で矢を放ち続けた。攻撃を続けるせいで、ジナーニャは後ろにいたアルジームに気付くことはなかった。
「そらそらそら! とっとと壊れろ!」
「夢中になるのもいいけれど、ほどほどにしないとまずいな」
アルジームはこう言った。その言葉を聞いたジナーニャは後ろを振り向いたが、動きを止めたその隙にアルジームは剣をジナーニャに突き刺した。
「あ……あが……」
「ドレミーファ大臣、追撃をお願いします!」
「任された!」
ドレミーファは魔力を開放し、ジナーニャに向かって杖を振り、雷を発生させた。雷は激しい雷鳴を鳴らしながら飛んでいき、ジナーニャに命中した。
「ギャァァァァァァァァァァ! クソッたれェェェェェェェェェェ!」
苦しそうな悲鳴を上げながら、ジナーニャの体は塵となって消えた。アルジームはドレミーファの元へじゅうたんを動かし、着地した。
「大臣、傷はありませんか?」
「私は大丈夫だ。君の方は……」
「大丈夫です。それよりも、援護ありがとうございます。おかげで助かりました」
アルジームはドレミーファを見ながら、丁寧に頭を下げた。
アルムは目の前の敵を見てどう戦うか考えていた。敵はアルムを見て、笑みを浮かべた。
「おいおい、そんな顔をするなよ。このエバソスが怖いのか?」
エバソスはアルムをバカにするような口調でこう言ったが、レリルがエバソスの顔に向かって飛び蹴りを放った。
「臭い息を吐くな! 口を閉じなさい!」
「おげぇ! その息はお前の口の臭いじゃないのか?」
「レディーに向かって失礼なことを言うわね、このデカブツが!」
レリルは怒りに任せてエバソスの顔を殴り、アルムの元に下がった。
「今のうちよアルム! そのナイフであの異臭野郎をぶっ刺しなさい!」
「そんなえげつないことを……」
「いいから早く!」
レリルに煽られ、アルムは急いでエバソスに接近し、ナイフを振るった。エバソスはアルムの攻撃を察し、すぐに立ち上がって魔力を開放した。
「うわっ!」
「はーっはっは! 俺の魔力でぶっ飛ばされたな? お前はその程度の戦士ってことだな!」
アルムはすぐに立ち上がり、ナイフを構えた。アルムがまだ戦うつもりだと察し、エバソスは笑みを浮かべた。
「まだ戦う? この俺と? 弱っちいお前が俺と戦うなんて止めた方がいいぜぇ?」
「僕にもそれなりにプライドがある。確かにあなたは強いですが……品がない」
「下品で上等だよ」
エバソスは両手に魔力を発し、アルムを睨んだ。
「お前はそんな下品な俺に殺されるんだよ」
「そうはさせない。あなたのような下劣な生き物に、僕は絶対に負けない」
アルムは静かに魔力を開放し、素早く動き出した。だが、同じように魔力を開放しているエバソスの目は、アルムの動きを追えていた。
「バーカ! 俺も魔力を開放している! お前がどれだけ強い魔力を開放しても、俺の目をごまかすことができねーんだよォォォォォ!」
エバソスはタイミングを合わせ、走るアルムに接近した。アルムは走る途中で接近してきたエバソスの方を振り向き、ナイフを振るった。
ナイフで攻撃か。刃が届かないっつーのにバカなことをする!
と、エバソスは思った。だが、エバソスの考えは大きく外れた。エバソスの左肩から右の脇腹にかけて、大きな切り傷ができた。
「な……ああ……」
「品もなければ頭脳もない」
ナイフを振り終えたアルムは、傷を受けてひるむエバソスに向かってそう言うと、接近してエバソスの顔を右手で殴った。
「うぐあっ!」
殴られたエバソスは後ろに倒れ、しばらくの間痛みで動けなかった。アルムは右手を動かしながらこう言った。
「初めて本気の力を出して、誰かを殴ったよ。まだ……拳が痛いな」
殴られたエバソスはゆっくりと立ち上がり、アルムの方を睨んで叫んだ。
「おい! さっきの攻撃は一体何なんだ! どうして俺が切り傷を受けたんだ!」
「分からなかったんですね。なら、もう一度同じように攻撃してあげますよ」
アルムはそう言うと、ナイフを構えてエバソスに接近した。わけが分からない攻撃を防ぐため、エバソスは腕を使って防御したが、アルムの攻撃はエバソスの腕を切り裂いた。
「ウッギャァァァァァ!」
両腕に深い傷を受けたエバソスは、両腕を振り回しながら叫んだ。
「クッソォォォォォ! どうしてだ? どうして攻撃が当たったんだァァァァァァァァァァ!」
「分からないなら、それでいいです。敵に攻撃の仕掛けを教える人はいませんよ」
アルムはそう言うと、攻撃を続けた。攻撃の仕掛けが分からないエバソスは、アルムの猛攻を受けることしかできなかった。
クソッ! どうして攻撃が当たる? あいつのナイフの刃は、俺に届いていないのに! 一体どんな仕掛けがあるんだ? クソッ! 何が何でも見極めてやる!
攻撃を受ける中、エバソスはアルムの攻撃を見抜こうとした。だが、アルムはそんな隙を与えてくれるはずもなく、ひたすら素早く攻撃を続けた。
「これで終わりです!」
アルムがナイフを前に突き出すと、エバソスは腹から血を流しながら後ろに吹き飛んだ。
「グッファッ!」
倒れたエバソスは、荒く呼吸をしながらアルムを睨んだ。
「まだ倒れないのですか、タフですね」
「う……うるせーよ」
エバソスは立ち上がり、何度も呼吸をして痛みをごまかした。そんな中、エバソスはアルムのナイフからうっすらと魔力を感じた。
ナイフから魔力? フフフフフ……少しずつだが、あいつの攻撃のからくりが分かってきたぜ。
アルムの攻撃の仕掛けを察し、エバソスは不気味に笑みを浮かべた。その笑みを見たレリルは嫌そうな声で呟いた。
「うわぁ、気持ち悪い顔」
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