悪いことをしたらその反動がいつかきっとあるもんだよ
ベーキウが捕らえられている部屋に上がり込んだシアンとクーアは、怯えているレリルを睨み、手にしているガトリング砲や火炎放射器、ロケットランチャーを向けていた。
「さーて、今からどうされたいか教えてよ。ガトリング砲でハチの巣にされるか、火炎放射器で汚物のごとく消毒されるか、ロケットランチャーでぶっ飛ばされるか」
「わらわは優しいからのー。どんなことをされたいか選択させてやるぞー」
シアンとクーアは、ホラー映画やホラーゲームによくいる主人公やヒロインを脅かす怖くておっかなくて滅茶苦茶強いお化けや、化け物のような笑みを浮かべていた。そんな中、キトリが闇でベーキウに付けられている拘束具を壊し、ベーキウを自由にさせていた。
「ベーキウ、大丈夫? 怪我はない?」
「ああ。怪我はないが、あのサキュバスの体臭と口臭がきつくて鼻が曲がりそうになった」
「酷い……じゃあ、あの時キスされた時って……」
「口臭が本当にきつかった。気分が一気に悪くなったよ……」
ベーキウを助けた後、キトリは魔力を使ってベーキウを精神的に癒した後、魔力を解放してレリルを睨んだ。
「私の想い人を困らせて……絶対に許せない」
その時のキトリの表情を見たレリルは、キトリの背後から禍々しいオーラを感じた。キトリの見た目は美少女でも、キトリは魔王の娘。魔界を統一している魔王とほぼ同じ実力を持っているのだ。そのことを察し、シアンとクーアが放っている殺意を察したレリルは、情けない格好でその場から逃げて行った。
「あ! 逃げやがった、待ちなさい!」
「逃げたら殺す! 待っても殺す!」
逃げたレリルを負うため、シアンたちは部屋から出て行った。部屋から去るシアンたちを見て、ベーキウは大声でこう言った。
「あまり派手に暴れるなよー」
レリルは猛スピードでシアンたちから逃げ、何とか距離を開けることに成功した。周りを見回し、シアンたちの姿がないことを確認したレリルは安堵の息を吐いていた。そんな中、部下の一人が近付いた。
「レリル様、何やってるんですか? 今、大変なことになってますよ」
「知ってるわよ。今、あいつらから逃げてた途中なのよ」
「もう遭遇してたんですね。殺されないように気を付けてください」
と言って、部下はレリルから去って行った。まだ部下は残っているのかとちょっと安心したレリルだったが、去って行った部下がまた戻ってきた。
「そうだ。レリル様、あんた一体どんだけ歯磨き粉を使ったんですか? ストックがもうないですよ」
部下がこう言った直後だった。突如近くの壁を破壊しながら腕が現れ、部下の首を掴んでしまったのだ。
「ピギョエァァァァァ!」
「なっ……何これ!」
轟音と共に現れた腕を見て、レリルと部下は悲鳴を上げた。そして、その腕は部下の首を掴んだまま、後へ戻った。その直後、何かを叩く音と部下の悲鳴が轟いた。
いる。あの女の誰かがここにいる。
そう察したレリルは、急いで逃げようとした。だが、恐怖のせいで足腰を動かすことはできなかった。今、レリルができるのは涙を流し、小さな声でうめき声を出すことしかできなかった。しばらくして、破壊された壁から狂気的な笑みを浮かべるシアンの顔が現れた。
「みーつけたァァァァァァァァァァ!」
シアンは壁を破壊しながら全身を出し、動けないレリルに迫った。
「ギャァァァァァァァァァァ!」
生命の危機を察したせいか、急にレリルは動けるようになった。殺意のオーラを放つシアンを見たレリルは猛スピードで走って逃げた。
シアンから逃げたレリルは、息を切らせながら別の部屋の前にいた。
「はぁ……はぁ……死ぬかと思った。勇者の一族があんな化け物とは知らなかった……」
そう言うと、レリルは急いで周囲を見回した。そこにあるのは使われていない部屋だけ。それ以外本当に何もなかった。魔力の探知をしたのだが、周囲には誰もいなかった。
「はぁ……とりあえず……安心」
誰もいないことを察し、安心したレリルは大きく息を吐いてその場に座り込んだ。その時だった。突如チェーンソーの音が響き渡り、近くの扉を破壊したのだ。
「ギェェェェェェェェェェ!」
扉を貫通するかのように現れたチェーンソーの刃を見て、レリルは汚い声で悲鳴を上げた。それからチェーンソーの刃は激しい音を鳴らしながら扉を壊し、壊れた扉の中から狂気的な笑みを浮かべるクーアの顔が現れた。
「見つけたぞ、クソビッチサキュバス! 今からこのチェーンソーでマグロのように貴様を解体してやるからな!」
「ギエアァァァァァァァァァァ! そんなことをしたらとんでもない光景になるゥゥゥゥゥ!」
レリルはすぐに立ち上がり、猛スピードで逃げて行った。クーアは扉にくっついたままのチェーンソーをその場に投げ捨て、扉を蹴って破壊して逃げたレリルを追いかけた。
「待ちやがれ! よくも! よォォォォォくもベーキウのファーストキスを奪いやがったなァァァァァァァァァァ! 天の神々がお前の行為を許ししても、わらわはお前を許さない! お前は今から処刑じゃァァァァァァァァァァ!」
クーアはそう叫びながら、氷で作られた刃をレリルに向かって放った。飛んでくる氷の刃を避けながら、レリルはひたすら逃げた。
「誰か助けて! 私の戦闘能力知っているでしょ? 私はフェロモンを操ったり、誰かを強化することしかできないのよォォォォォ!」
レリルは泣き叫びながら、ひたすら逃げた。
クーアから逃げきったレリルは、緊急用の脱出装置がある部屋の前にいた。
「早くここから逃げないと!」
レリルは扉を開け、部屋の中にある簡易的に作られたロケットを見た。それを見たレリルは急いでロケットの扉を開け、スイッチを押した。すると、モニターが白く光出し、ロケットの周りの機械が音を出しながら光を発し、煙が発した。
「こ……これで逃げられる……」
「どこへ行くのよ?」
逃げられると思ったその時だった。闇の魔力を発したキトリがロケットの前に現れたのだ。
「ヒェェェェェ!」
「質問に答えなさい。どこへ行くつもりなの?」
キトリは闇で巨大な剣を作り出し、レリルの前に突き付けた。
「あ……あなたたちに土下座をして謝ろうかなーって思いましてね」
「一人用のロケットの中に入って? やってることと言ってることが違うよね? よね?」
その時のキトリの目を見たレリルは、命の危機を感じた。キトリの目は狩人の目をしていた。何を言っても無駄だ。そう思ったレリルは急いでロケットのスイッチを押した。
「ハーッハッハ! これで私はここから逃げられる! ザマァ!」
ようやく逃げられると思ったレリルは、高笑いでこう言った。ロケットの周りから発する煙のせいで、周囲が見えなくなったキトリは煙を払いながらロケットに向かって手を伸ばした。だが、ロケットは轟音を鳴らしていた。逃がしてしまうと思ったキトリだったが、しばらくして煙は止まった。
「あ……あれ? 動かない。どうして?」
発射しないロケットに疑問を思ったレリルは、ボタンを押し続けた。すると、突如着物を着た小さな人形が下から現れ、マイクを持って歌いだした。
「ああーこれは偽物だよーん。本物のロケットっぽいおもちゃだよーん。だからだからー、煙とか音とか光とか出るけど、発射はしませんよーん。本当に発射したら大変なことになるからねーん。これで宇宙飛行士の気分を味わえましたか?」
「ふっざけんなァァァァァァァァァァ!」
レリルは怒りを爆発させながら、人形を殴って壊した。
「あのインチキネットショッピングサイトめ! いざって時のためにって書いてあったから脱出用のロケットを大金使って買ったのに、おもちゃじゃねーかァァァァァァァァァァ! おもちゃならおもちゃって一言書いておけやァァァァァァァァァァ!」
「気は済んだ?」
レリルがシャウトをする中、キトリがおもちゃロケットの扉を破壊してレリルの前に立ちふさがった。その後ろには、いつの間にか合流していたシアンとクーアの姿があった。
詰んだ。
怒りと殺意を爆発させているシアンたちを見て、レリルはこう思った。
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