乱れ飛ぶ矢を攻略せよ
クーアからの罵倒を聞き、リョーバネは怒りを爆発させ、クーアに向かって襲い掛かった。その様子を見たクーアは、心の中でこう思った。
安い挑発を聞いてブチ切れするとはのう。生まれたばかりで知能が足りなかったようじゃの。
そう思った後、クーアは振り下ろされるリョーバネの右手を見ながら、バリアを張った。
「そんな質の悪いバリア、ぶっ壊してやる!」
リョーバネは叫び声を上げながら、力を使ってバリアを破壊しようとした。だが、いくら火花を散らしても、クーアが放ったバリアは壊れることはなかった。
「ぐがっ! クソッ! 何だこのバリアは? なかなか壊れないィィィィィ!」
痛々しい顔をし、苦痛な声をリョーバネは発した。その様子を見たクーアはため息を吐き、リョーバネにこう言った。
「当り前じゃ。わらわが魔力を込めて発したバリアじゃ。生まれたてでやわなお前の力で壊れるほど弱くはない」
「何ィィィィィ!」
クーアの言葉を聞き、リョーバネの怒りは爆発した。
「ふざけるなァァァァァァァァァァ! 私はお前より強いんだァァァァァァァァァァ!」
「プライドだけは一人前じゃな。実力は半人前以下じゃが」
「貴様! これ以上私を愚弄するなァァァァァ!」
リョーバネは感情に任せて爪を振り下ろした。次の瞬間、リョーバネの右手の爪は音を発しながら折れてしまった。
「な……何だと……私の爪が……」
「残念じゃったのー。これでお前とのくだらない戦いに幕を下ろせる」
クーアはバリアを解除し、動揺するリョーバネに向かって雷を発した。
「グギャァァァァァァァァァァ!」
雷を浴びたリョーバネは悲鳴を上げ、その場に倒れた。クーアは黒焦げになり、感電して体をびくびくと動かしているリョーバネを見下すように見た。
「終わりじゃのー。あっけない幕引きじゃ」
「ぐ……クソ……」
リョーバネは苦しそうに口を開いた。驚いたふりをしたクーアは、手を口に当ててこう言った。
「あらまぁ。まだ動くのか」
「ふざけるな……まだ……終わってないぞ」
「あと一発殴られたら終わるような気がするのー」
「勝手に……終わらせるな」
リョーバネは立ち上がろうとしたのだが、折れた爪がリョーバネの背中に突き刺さった。
「あ……あが……」
「自分の爪が体に突き刺さるなんて、そんな最期迎えたくないのー」
爪が刺さって目を開くリョーバネを見て、クーアはこう言った。しばらくして、リョーバネの体は塵となって消えた。
アルジームは何とかベーキウたちがいる部屋に到着し、ルーシィから治療を受けているキトリを見つけた。
「キトリ! 傷が……」
「大丈夫。この子が助けてくれたから。でも、もう少し包帯を緩めてほしいわね」
包帯を何重にも巻き付けられ、ミイラになったキトリがこう言った。ルーシィは慌てながらアルジームにこう言った。
「ど……どうしましょう! これで治ったんですか?」
「傷の手当は済んだんだろ? 後は安静にしてればいいよ」
「本当にそれで治るんですか?」
「それでいいわ。しばらくゆっくりさせて」
キトリがこう言うと、何かの気配を感じて後ろに下がろうとした。だが、その前に剣を持ったアルジームが立った。
「そこにいるのは分かっているんだぜ、姿を見せろ!」
「私の殺意を感じるとは……なかなかの実力者だ」
アルジームの言葉を聞いた何者かは、離れた窓のところで姿を見せた。敵は弓を持っており、攻撃の準備を終えていた。
「弓使いか。銃がある状況でよくもまぁ古臭い武器を使う」
「銃のように面倒なメンテナンスをしなくて済むからね」
敵はそう言って、アルジームに向かって矢を放った。猛スピードで飛んでくる矢に対し、アルジームは剣を振り下ろして矢を叩き落とした。
「遠くから矢をピュンピュン放つだけか? 臆病者が好む戦い方だなぁ」
「それで敵を始末できればいい。私の名はジナーニャ。以後、よろしく」
ジナーニャは背中の矢筒から三本の矢を取り出し、同時にアルジームに向かって放った。
「ルーシィ、キトリを連れて下がってくれ!」
「は……はい!」
アルジームの言葉を聞いたルーシィは、急いでキトリを連れて下がった。キトリとルーシィが下がったことを察したアルジームは、矢をかわしつつ後ろの部屋に隠れた。
「隠れても無駄ですよ。次に出てきた瞬間、あなたを撃ちます」
隠れたアルジームに対し、ほほ笑みながらジナーニャはこう言った。部屋の中に隠れたアルジームは、ため息を吐いてこう思った。
さて、どうやってこの状況を打破するかな。
アルジームは冷静にこの状況を考えていた。ジナーニャはすでに次の攻撃の支度を終えており、アルジームが姿を現した瞬間に矢を放つ。三本の矢を放った時、アルジームは矢の速度がかなり速いと学んだ。もし、何も考えずに姿を出したら、あっという間に矢で打ち抜かれるのだ。攻撃の準備を終えた相手にどう動くか考えたアルジームは、部屋の中を見回した。隠れた部屋の中には、ヘンテコながらくたがたくさんあった。それを見たアルジームにはある作戦が思い浮かび、すぐに作戦を実行した。
弓矢を構えていたジナーニャは、まばたきもせずにアルジームが隠れた部屋を見ていた。しばらくして、扉の中から何かが飛び出した。
「やっと出てきたか!」
アルジームが動いたと思ったジナーニャだったが、飛び出したものを見て安堵の呼吸を吐いた。
「何だ、空の段ボール箱か。そいつで私の狙撃の邪魔をしようとしたのだな」
ジナーニャは、アルジームが部屋の中から物を投げ、自分だと勘違いしたジナーニャがそれに向かって矢を放つという作戦を考えたのだと思った。
「くだらないことを考えるな! 囮のつもりのようだが、私には通用しないぞ!」
「じゃあこれはどうだ?」
突如、アルジームの言葉が聞こえた。ジナーニャは急いで矢を構えたが、目の前には台車に乗った山積みの段ボール箱があった。
「おわァァァァァァァァァァ!」
いきなり山積みの段ボールが突っ込んできたため、ジナーニャは驚いて弓矢を落としてしまった。
「クソッ! 次ふざけたら本当に殺すぞ!」
ジナーニャは叫びながら弓矢を手にしようとしたのだが、目の前には空を飛ぶじゅうたんに乗ったアルジームがいた。
「なっ! 空を飛ぶじゅうたん……そんなのがあるのか!」
「あるんだよ! 目の前にあるだろうが!」
アルジームは勢いを利用し、ジナーニャに向かって剣を振るった。ジナーニャは慌てながらも攻撃をかわしたが、アルジームの剣の刃はジナーニャの左肩に命中した。
「あぐあ! クソッ!」
後ろに飛んで行ったアルジームを見て、ジナーニャは左肩の痛みを我慢して矢を構え、アルジームに向かって矢を放った。
「肩が痛いのか? 狙いを外してるぜ!」
アルジームはじゅうたんを操って矢をかわし、もう一度ジナーニャに接近した。逃げ決めの攻撃を仕掛けるつもりだと察したジナーニャは、矢筒から五本の矢を手にした。
「これ以上私を怒らせたらどうなるか、その身をもって思い知れ!」
叫んだ後、ジナーニャは五本の矢を放った。アルジームは攻撃をかわしたが、五本の矢は大きく軌道を変え、アルジームの背後に回った。
「い! 何だよ、あれ自由に動くのか!」
矢が意志を持ったかのように動くことを察したアルジームは、急いでじゅうたんに逃げるように告げた。逃げるアルジームを見て、ジナーニャは笑みを浮かべながら矢を構えた。
狙うとしたら今。本命のこの攻撃であいつの心臓を射抜いてやる!
そう思いつつ、ジナーニャは矢を放った。アルジームは後ろから追いかけてくる矢から逃げるのに夢中で、本命の一矢に気付くことはなかった。
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