一番の悪との戦い
ルーシィを支配しているランプの魔人、グレトールが本性を現した。激しいバトルが始まると予測したアルジームは、室内にいる人たちに声をかけた。
「皆! やばそうだからここから離れるんだ!」
アルジームの言葉を聞いた王たちは、急いで室内から出て行った。アルジームは王やパンジーたちが出て行ったことを察した後、呆然と立っているルーシィの手を引っ張った。
「ルーシィ! お前もくるんだ! ここにいたら危ないぞ!」
「でも、ベーキウさんたちが……」
「大丈夫だ。ベーキウたちがやられるはずがないって! ここは皆に任せよう!」
と言って、アルジームはルーシィを連れて部屋から出て行った。
アルジームたちが部屋から去った後、ベーキウはクレイモアを構えてランプに向かって走り出した。
「俺の一撃でぶっ壊してやる!」
叫びながらクレイモアを振り下ろしたが、ランプから発する奇妙な衝撃波を受け、ベーキウは吹き飛んだ。
「あぐあ!」
「大丈夫ですか?」
近くにいたアルムが、すぐにベーキウを助けた。グレトールは不気味な笑みを浮かべ、こう言った。
「バカな奴だ。だが、バカな奴ほどしぶといものだ。ここで確実に殺してやる!」
そう言うと、刃の形になった衝撃波がベーキウに向かって飛んできた。だが、キトリが闇のバリアを張って防御した。
「ほう。闇の魔力か。珍しい魔力を見た」
「だったら味わってみる? 闇の魔力を!」
キトリは闇の魔力を発して攻撃を仕掛けたが、グレトールはランプを動かし、攻撃をかわした。
「結構。私は食に関してはこだわりがない。珍しいものがあっても、無暗に食べたりはしないよ」
「ランプ如きが偉そうにほざくな!」
ここで這い上がってきたクーアがランプに向かってかかとを落とした。ランプは床の上に強く叩きつけられたが、すぐに浮いた。
「ほう。なかなかいい攻撃だが、これで私を倒せると思うなよ?」
「やかましいランプだ」
ジャオウは魔力を開放し、大剣を薙ぎ払うように振るった。攻撃は命中したのだが、ランプは壊れることはなかった。
「やはり壊れぬか……」
「何度やっても同じことだ。だが、一対多数では分が悪い」
そう言うと、ランプの注ぎ口から紫色のオーラが発し、人のような形になった。
「な……何だ! あいつ、一体何をするつもりだ!」
ベーキウはそれらを見て驚いたが、グレトールは笑いながらこう言った。
「部下を作るだけだ! 敵も数がいれば、戦いが楽しくなるだろう?」
「バカ言ってんじゃないわよ! あんたをぶっ倒せばこの戦いは終わるのよ!」
シアンは剣を構えて走り出したが、グレトールの作った部下が攻撃を受け止めた。
「ぐっ! 作りたてのくせに強い!」
「一度離れるぞ!」
ジャオウは急いでシアンに近付き、抱きかかえて後ろに下がった。シアンは文句を言ったが、ジャオウが慌てていると察した。
「何かやばいものを感じたの?」
「かもしれん。異形な化け物だ、俺でも勝てるかどうか……」
ジャオウは大剣を構え、シアンにこう言った。
アルジームはルーシィをパンジーに渡した後、周りを見回した。すると、剣を二本持っている兵士がいたので、彼に近付いた。
「すみません。剣を一本貸してもらえないでしょうか?」
「お安い御用だが、まさか君もあの化け物と戦うつもりか?」
兵士の言葉を聞いたルーシィは驚き、アルジームに近付いた。
「アルジーム様! 無茶は止めてください! あなたはただの人間! あんなへんてこな化け物を相手に戦うなんて命を捨てるようなものですよ!」
「だけど、ベーキウたちが戦ってる。大丈夫だ。俺もそれなりに強いからさ」
アルジームはルーシィを安心させるため、笑顔でこう言った。ルーシィは何を言っても聞かないと察し、ため息を吐いた。そんな中、パンジーはアルジームを手招きした。
「どうかした?」
「今から激しい戦いになりそうだから、おまじないをしようと思ってね」
「おまじない?」
「そっ。おまじない」
と言って、パンジーは無理矢理アルジームの顔を自身の顔に近付け、キスをした。キスをされたと察したアルジームの顔はすぐに真っ赤になった。
「これで勝てるわ。さぁ、行ってらっしゃい!」
パンジーは笑顔でこう言ったが、キスをされたアルジームは恥ずかしさのあまり、その場に倒れて気を失った。それを見た王は、呆れてこう言った。
「刺激が強いおまじないじゃのー」
キトリは剣を使う化け物の動きを見ながら、バリアを張って防御していた。
隙のない動き。一回でも防御を失敗したら、確実に斬られる!
相手の強さを察したキトリは、苦しそうな表情で攻撃を防御していた。一度後ろに下がり、相手との距離を取ろうとしたのだが、敵は剣を構えてキトリに近付いた。
「ぐっ!」
接近した敵に対し、キトリは一か八かと思いながら、闇の魔力を放った。敵は闇の魔力を受け、後ろに吹き飛んだ。
ダメージが入った!
攻撃を与えたことを知ったキトリは驚きつつ、態勢を整えて追撃を放とうと考えた。だが、その前に敵は剣を持ってキトリに襲い掛かった。
「やっぱり、追撃してきたか!」
キトリは苦しそうな声を上げつつ、この敵との戦いが激しくなるだろうと予測した。
クーアは周囲を飛んでいる羽が生えた敵を見て、嫌そうな顔をしていた。
「おーい、気味悪い声を上げながら飛び回るな化け物。うるさいじゃろーが」
嫌味を込めてクーアはこう言ったが、敵にはその声が届かなかった。
「しょーがねーのー。ああいうバカにはちょっと痛い目を見せた方がいいの」
クーアは魔力を開放し、宙を飛んで敵を追いかけた。クーアが宙に浮いて追いかけていると察した敵は、後ろを振り向いて羽を飛ばした。
「その羽、武器になるのか。珍しい。ならこの戦い、少しは楽しくなりそうじゃのう」
クーアは笑みを浮かべてこう言った。その笑みを見た敵は、少しだけ恐怖を感じていた。
アルムは強い魔力を感じる敵を見て、どう戦おうか考えていた。
まずい、体が震える! どうして……敵が目の前にいるって言うのに!
アルムは心の中でこう思った。そんな中、敵が魔力を開放して氷で攻撃を仕掛けてきた。アルムはナイフを振るって氷を斬り壊そうとしたのだが、氷は壊れることはなく、アルムに激突した。
「うわぁ!」
アルムは後ろに転倒し、その動きに合わせて敵はアルムに接近し、氷の刃を作ってアルムを切り裂こうとした。だが、レリルが現れて敵の脇腹に蹴りを入れた。
「もう! しっかりしなさいよ! 女みたいな見た目をしてるけど、あんたは男でしょ!」
レリルはアルムの手を掴んで立ち上がらせ、背中を叩いた。
「で、どうして動かなかったのよ? いつもならぴんぴんしてるのに。あそこはでかいくせにへなへなだけど」
「こんな状況で下ネタを言うのは止めてください! それと……あの敵は強いです。今まで戦った敵よりも強いって感じるんです」
アルムの言葉を聞き、レリルはため息を吐いた。
「それでへっぴり腰になってるってわけ? 相手が強いかどうかなんてしっかり戦わないと分からないし、今は敵が強かろうが弱かろうがぶっ倒さないといけないのよ!」
「でも……」
「あんた一人で戦うわけじゃないでしょうが! 私も戦力の一人として数えなさいよ! それなら少しはまともに戦えるでしょ?」
レリルの言葉を聞き、アルムは嫌そうな顔をした。
「ちょっとー! なんでそんな顔をするのよー!」
「いやだって、レリルさんは基本的に戦いから逃げてばかりじゃないですか」
「私だって戦う時は戦うわよ! ほら、前を見なさい。敵が立ち上がったわ」
その言葉を聞いたアルムは、急いでナイフを構えた。
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