脱走騒動も似たようなことをネタにしているけど、あんまり気にしないでね
今現在、絶賛逃走中のパンジーは、無理矢理な形でアルジームとルーシィを引き連れて町の中を走り回っていた。
「王女はどこだー!」
「こっちだ!」
「回り込んで挟み撃ちにしろ!」
「無理です! 通路が狭くて走れません!」
「何をやっているんだお前は……あぎゃァァァァァ! 何でここに木箱が!」
「ギャァァァァァァァァァァ! 猫のしっぽふんじゃったァァァァァァァァァァ!」
などと、町を走り慣れていない兵士たちの悲鳴がアルジームの耳に聞こえた。その声を聞いたアルジームは、冷や汗をかいてパンジーにこう言った。
「なぁ、本当にこんなことしていいのか?」
「大丈夫よ。これで私を逃したら、兵士たちの根性が足りないってことだから」
「王女様なのに、すごいことを言いますねー」
と、ルーシィはアルジームのズボンを握りながらこう言った。そんな中、ルーシィがズボンを力強く引っ張るせいで、アルジームのズボンが抜けた。
「うわァァァァァ! 俺のズボンが!」
「いィィィィィやァァァァァ! おいてかないでくださァァァァァい!」
ルーシィはアルジームのズボンを手にして、急いで走り始めた。パンジーは立ち止まってルーシィの元へ向かおうとしたが、そこにシアンが現れた。
「あなたがパンジー王女ですね。城の皆さんが心配しています。できることなら、帰ってください」
シアンは手でトランクスを隠すアルジームを見て、驚きの声を上げた。
「アルジーム! 無事だったのね! 町に戻ったんなら一言くれればよかったのに!」
「言えるタイミングがなかったんだよ」
「ほう。勇者パーティーとお知り合いなのですね。ですが……今はのんびりしている場合ではありません!」
「わーん! 待ってくださーい!」
ここで、アルジームのズボンを持ったルーシィがやってきた。アルジームは急いでズボンをはき、パンジーにこう言った。
「なぁ、戻った方がよくないか? 相手が悪い」
「それでも逃げます!」
と言って、パンジーはアルジームとルーシィを連れて、再び逃げてしまった。シアンはため息を吐き、魔力を開放して高くジャンプしてパンジーの前に着地した。
「驚いた? 勇者から逃げられると思わないでね」
シアンがこう言うと、パンジーはあることを思いつき、こう言った。
「あ! あなたの仲間が上半身裸で歩いています!」
「えええええ! ベーキウがそんなことを! これは見たい……じゃなくて注意しないと!」
と言って、シアンはパンジーが指さす方向に向かって走り出した。アルジームはあっさりパンジーの嘘に騙されるシアンを見て、呆れてため息を吐いた。
アルジームは周囲を見回し、追手がいないことを察して安堵の息を吐いた。
「ここならしばらく休めそうです」
「そう。それならゆっくり話ができるわね」
と言って、パンジーはアルジームに向かってほほ笑んだ。その笑みを見て、アルジームの顔は赤くなった。
「ねぇ、アルジームって言ったわね。あなたはどうして勇者パーティーと知り合いなの?」
「ドレミーファ大臣の洞窟探検で知り合ったんだ」
「まぁ! 洞窟探検で? いろいろと話を聞かせて!」
目を輝かせながら、パンジーはアルジームに近付いた。だがその時に、クーアとキトリが上からやってきた。
「やーっと見つけたぞ! 王女、町を歩くなら護衛の一人……おっ! アルジームではないか!」
「無事でよかったけど、今はそれどころじゃないみたい」
キトリは状況を把握し、急いでパンジーに近付いた。パンジーはアルジームとルーシィを連れて再び逃げようとしたのだが、キトリの闇がパンジーの足元に現れた。
「何これ! ヌメヌメする!」
「手荒なことはしたくありませんが、一時的に足元を封じました。クーア、今のうちに城に運ぶわよ」
「参ったの、まさかお前の活躍で事件が解決するとは……」
「早く手伝って」
「はいはい」
その後、クーアとキトリによってパンジーは城に連れ戻された。アルジームは暴れるパンジーを見て、助かったという気持ちと、もう少し話せばよかったという後悔の気持ちの二つの意味が込められたため息を吐いた。
その後、アルジームは自宅に戻った。アルジームの家に入ったルーシィは、珍しそうに周囲を見回した。
「男の人の家に入るの、初めてです」
「付き合って間もない彼女みたいなことを言うな。ま、初めて家に入れる女性が幼女になるとは、思ってもいなかったよ」
そう言うと、アルジームは冷蔵庫から麦茶をコップに注ぎ、ルーシィに渡した。ルーシィは麦茶を飲み、外を見るアルジームにこう言った。
「もう一度王女様に会いに行きますか?」
この言葉を聞き、アルジームはため息を吐いた。
「無理だよ。俺みたいな貧乏戦士が城に入りたいって言ったら、速攻で牢屋行きだ」
「でも、勇者パーティーって人たちとお知り合いなんですよね? その人たちに頼めば?」
「知り合っても一日も経過してない。惚れた女に会いたいって言う理由で動いてくれるかどうか」
「あ、やっぱり惚れてたんですね」
この言葉を聞き、アルジームは顔を赤くした。
「あまり言うなよ。恥ずかしい」
「すみませんすみません。そうだ。この時のために願いを使えばいいではありませんか」
ルーシィがこう言うと、アルジームは少し考えた。
確か、願いは三回までって言ったよな。でも、ドジっ子だから失敗する可能性も……だけど、怖がっていたら王女に会えない。一か八か、やってみよう。
そう思ったアルジームは、ある作戦を思いついてこう願いを言った。
「頼む。俺を王子みたいにしてくれ」
「王子? 例えば?」
「家来がたくさんいて、スーツみたいな奇麗で高級な服を着て、宝石とかも身に着けているような感じの……」
「うーん……とりあえずやってみましょう!」
ルーシィがそう言うと、足元に魔法陣を作り出した。その直後、紫色の煙がアルジームに周りに現れた。
「うわっ! 何だこれ!」
「ちょっと待っててください。衣装の用意をするだけです」
ルーシィの言葉がアルジームの耳に入った。それなら大丈夫だろうと思ったのだが、紫色の煙の中から、ブーメランパンツ一丁のムキムキマッチョマンが現れた。
「おい! なんか変なマッチョマンが現れたんだけど!」
「私の名はコーディネートハ・コーデネート。あなたにピッタリな服を用意します」
「服を用意してくれる人か……おいちょっと、この人のセンスを信頼していいのか?」
「大丈夫です。多分」
「多分ってなんだ!」
アルジームが騒ぐ中、コーディネートハはアルジームの服を無理矢理脱がした。
「ほう。いい腹筋ではないか。それなりに鍛えているようだな、坊主」
「ちょっと! この人服のことよりも俺の腹筋の方に興味津々だけど!」
「うわーん! しっかり仕事をしてくださーい!」
ルーシィの泣き言を聞き、コーディネートハはしくじっちまったぜと言って笑みを浮かび、煙の中からタンスを出した。
「この中に坊主におススメの服がある」
「とりあえず、良さそうなのを選んでくれ」
「それじゃあこれだな」
アルジームが渡されたのは、金色のブーメランパンツだった。アルジームはそれをコーディネートハの顔面に向かって投げた。
「いらねーよこんなの! こんなの履いてたら、まるで変態じゃねぇか!」
「俺が変態だと?」
「そういう意味じゃない! 変態って言われてショックを受けるな! それだったら、普通の服を着ろ!」
「これが俺の……おしゃれな服なんだ!」
と言って、コーディネートハはセクシーポーズをして、黒いブーメランパンツをアルジームに近付けた。
「うわァァァァァ! 近寄るな変態野郎!」
アルジームは怒声を上げながら、コーディネートハの顔面に向かって蹴りを放った。
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