城下町鬼ごっこ大騒動
洞窟から脱出したベーキウたちは、ドレミーファに話をするために城へ向かった。城の門番に事情を話した後、すぐにドレミーファに会うことになった。
「大臣は、帰りがこないから心配していました」
「我々は報告を待ちます。すぐに大臣に連絡をしてください」
案内の兵士は、シアンにこう言った。しばらく歩いていると、ベーキウたちはドレミーファがいる部屋に到着した。兵士はドアをノックし、こう言った。
「ドレミーファ大臣。洞窟探検へ行った一部の戦士……勇者シアンたちが戻ってきました」
「そうか。通してくれ」
「了解」
兵士は扉を開け、部屋の中に入るように促した。ベーキウたちは会釈をして部屋に入ると、ベーキウたちの姿を見たドレミーファも会釈をした。
「無事でよかった。人数分の椅子がないが、じゅうたんの上に座っても構わないよ」
「分かりました」
と言って、クーアはじゅうたんの上で横になった。キトリは止めなさいと言ったが、クーアはだるいと答えた。ベーキウとシアンは動揺してクーアを起き上がらせようとしたが、ドレミーファは少し笑ってこう言った。
「あの危険な洞窟から、命からがら出てきたんだ。疲れたのなら、横になっても構わないよ」
「ほ……本当にすみません!」
シアンは何度も頭を下げてこう言った。その後、シアンは洞窟であったことをドレミーファに伝えた。話を聞いたドレミーファは、少し考えてこう言った。
「やはり、危険な洞窟だったか。生き残った戦士は君たち以外にもいるか?」
「私たちのライバル的存在がいます。奴らはどこかに行ったんですが……」
「そうか、生き残ったのは君たちだけか」
ドレミーファはため息を吐いてこう言った。そんな中、キトリがドレミーファにこう言った。
「実は、洞窟の中で知り合った戦士がいるんです。途中で離れ離れになってしまったので、またあの洞窟へ向かっても大丈夫ですか?」
「君たちが望むなら、私は構わないが……あの洞窟は崩壊したのだろう?」
「探し方は魔力でどうにかします」
シアンの返事を聞き、ドレミーファは苦笑いをした。
「はは……立派だな、君たちは。私にも、君たちみたいな力があればあんなことには……」
その時、兵士の一人が部屋に入った。
「大臣、定時報告のお時間です!」
「もうこんな時間か。パンジー王女は見つかったか?」
「いえ、まだです。今回の家出騒動はかなり長引きます!」
「そうか、徹底的に町の中を探すんだ。いざとなったら、私も王女を探す」
「分かりました!」
兵士はそう言って、急いで走って去って行った。シアンはドレミーファに何が起きているのか聞いた。
「王女が家出したんですか?」
「はい。実は、パンジー王女は町の様子を見ると言って、これまで何度も何度も何度も家出をしているのです。この騒動は私たちが解決しますので、勇者シアンたちは少しゆっくりしてください」
ドレミーファはこう言ったが、シアンは立ち上がった。
「私たちも手伝うわ。困っている人は助ける!」
シアンの言葉を聞いたクーアは、あくびをしながら立ち上がった。
「それじゃあ、わらわも手を貸すしかないのー」
「ドレミーファ大臣、王女の写真を見せてもらいませんか?」
「地図を貸してください。それと、人がいそうな場所を教えてください」
パンジー王女捜索に手を貸してくれるというベーキウたちを見て、ドレミーファは涙を流してありがとうと言って、頭を下げた。
アルジームは王女、パンジーとデートまがいのことをしていると思いながら、ドキドキしつつも、こんなことをしてていいのかなと思っていた。そう思っていると、屋台を出しているおばさんが声をかけてきた。
「あらまぁ、アルジームじゃないの!」
「あ、おばちゃん」
「その子は……あらま、パンジー王女じゃないの!」
この言葉を聞いたアルジームは、目を丸くして驚き、急いで屋台のおばさんに近付いた。
「あのあのあのあのあの、おばちゃん。このことはあまり他の人には言わないでくれよ? 王女の命を狙っている奴もいると思うし、兵士に見つかると文句を言われるかもしれないんだ」
「大丈夫よ。王女は何度も城から抜け出して城下町を歩いているんだから!」
この言葉を聞いたアルジームは、パンジーを見た。あんた、何やってんだって思うような視線を感じたパンジーは、急いでルーシィと遊ぶふりをした。
「こんなお転婆が王女でいいのだろうか……」
「まぁいいじゃない。私たちのことを知ろうとしているのよ。何も知らない、理解しようとしないバカな政治家よりもまともよ! はいこれ、私のおごりってことで!」
と言って、おばさんは串に刺さった三本のチキンステーキをアルジームに渡した。アルジームは急いで財布を取ろうとしたのだが、おばさんは笑ってこう言った。
「私のおごりって言ったじゃないの! 王女とその女の子と一緒に食べなさい!」
「ありがとうおばちゃん! また今度、高いの買うから!」
「あっはっは! その時はお願いねー!」
おばさんは笑いながら、アルジームにこう言った。その後、パンジーはとても満足した表情でアルジームから渡されたチキンステーキを食べていた。
「んー! やっぱりおいしい!」
「やっぱりって、何回かおばちゃんとこのチキンステーキを食べてたんだな」
「そりゃーそうよ! ああ、満足!」
パンジーは笑みを浮かべてこう言った。そんな中、ルーシィの泣き声が聞こえた。
「ふェェェェェ! ちょっと熱いです! ちょっと辛いです!」
「分かった。ちょっと待ってろよ、今冷たいお茶を買うから」
アルジームは近くの自動販売機で冷たいお茶を買い、ふたを開けてルーシィに渡した。
「串は俺が持ってるから。お茶を飲んでくれ」
「ジュースがよかったです」
「逆にのどが渇くって。お茶が一番だ」
パンジーはルーシィの相手をするアルジームを見て、とてもいい人だと思った。そんな中、兵士の声が響いた。
「あああああ! 王女を見つけたぞ!」
「王女! やっと見つけました!」
「もうこっそりと町から抜け出すのは止めてくださーい!」
兵士たちの声を聞き、パンジーは急いでアルジームとルーシィの手を掴み、走り始めた。
「ふェェェェェ! いきなり走ったら転びますゥゥゥゥゥ!」
「ちょっと王女! 無理矢理走ったら、転倒しますって!」
「大丈夫よ! 私に任せて!」
パンジーは周囲を見回すと、町の人がタルを持って近付いた。
「任せな王女様! 俺のタルで足止めしてやるぜ!」
「お願いします!」
「いや、お願いしますじゃないって! 兵士の邪魔をしたら罪になるって!」
「私の王女の特権を使えば問題ない!」
「それでいいのか!」
アルジームがツッコミをする中、町の人は兵士に向かってタルを投げた。飛んでくるタルを見た兵士は動揺したが、後ろからベーキウが現れ、タルを弾いた。
「あの人が王女ですね。俺が保護します」
「ベーキウさん、お願いします。我々は別ルートで王女を保護します」
「お願いします」
兵士が別の通路に走って行った後、ベーキウはパンジーに近付いた。
「王女、皆が心配しています。どうか城に戻ってください」
ベーキウはパンジーを見てこう言ったが、横にいるアルジームを見て驚いた。
「アルジーム! 無事だったんだな!」
「ああ……まぁ、いろいろあってな」
「あらまぁ、お知合いですのね。でも、今はのんびり話をしている場合ではありません! 逃げることが一番です!」
と言って、パンジーはアルジームとルーシィを連れて逃げて行った。猛スピードで逃げるパンジーを見て、ベーキウは驚いた。
「すげー運動神経しているな……あの人、本当に王女なのか?」
異常な運動神経を持つパンジーを見て、ベーキウは呟いた。
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