何故か逃げる謎の美少女
「おわぁっ!」
アルジームは突如響いた爆発音を聞き、驚きの声を上げた。目の前には白い煙が充満しており、目の前を確認するのは不可能に近かった。
「おいおい、本当にワープしたのか?」
「大丈夫です。多分」
「多分って……」
アルジームは不安に思いつつも、目の前の煙を払った。煙を払った先に映ったのは、見覚えのある光景であった。
「ありゃま。ここは俺が住む町から少し離れた……」
「どうですか? 私の力は本当だって分かりましたか?」
と、ルーシィはどや顔でこう言った。だが、アルジームはため息を吐いた。
「ああ。だけど、場所がなぁ……」
アルジームがいる場所は、住んでいるアパートの離れにある大きな時計台の真上だった。下に降りるため、アルジームはじゅうたんを呼んで下に降りた。
「ありがとう。人目に付かない場所に移動してくれたのは、本当に助かったよ」
じゅうたんに礼を言いながら、アルジームはじゅうたんを触った。じゅうたんは縦横無尽に飛び回り、アルジームに近付いた。
「褒められて嬉しいのか? ははっ、動物みたいだな」
「さて、これからどうするんですか?」
ルーシィにこれからのことを聞かれ、アルジームは考え始めた。
「うーん……何をするかって聞かれてもなぁ。とりあえず、洞窟での出来事を大臣に話すか。信じてもらえるかどうか分からないけど」
そう言うと、突如後ろから誰かに突進された。
「おわっと!」
「ああ! すみません! 前を見ていませんでした!」
「そうか……気を付けてくれよ」
アルジームは立ち上がり、後ろを振り向いた。そこには、フードを被った美しい女性がいた。その女性を見たアルジームは、あっという間に心を奪われた。ぼーっとしていると、女性は何かに気付き、アルジームの後ろに隠れた。
「あの、ちょっと?」
「いいからそのままで」
女性がそう言うと、前から白の兵士が現れた。
「すまない。そこにパンジー王女がいなかったか?」
「え? パンジー王女?」
アルジームは後ろに隠れた美しい女性が、兵士たちが探しているパンジー王女だと察したが、パンジーから威圧を感じ、勢いよく首を振った。
「すみません、知りません!」
「そうか」
「ん? そう言えば、お前は洞窟探検に向かったメンバーの一人だな。戻ってきたのか」
「はい。今からドレミーファ大臣に連絡をしに行こうかなって思っていたところです!」
アルジームは少々動揺しつつも、正直にこう答えた。兵士はあごを触りながら、アルジームに近付いてこう言った。
「できれば、すぐに連絡を頼む。大臣も探検メンバーが帰ってこないから、すごく心配しているのだ」
「は……はい!」
会話を終えた兵士たちは、軽く会釈をして去って行った。アルジームは安堵の息を吐き、後ろにいるパンジーに顔を向け、土下座した。
「すみません王女様! まさか、王女様がこんなところにいるなんて思ってもいませんでした!」
「いえいえ、気にしないでください」
パンジーは周囲を見回し、アルジームに近付いてこう言った。
「ねぇ、これから町の案内を任せてもいいかしら?」
とんでもないことを言われ、アルジームは動揺して驚きの声を上げた。
「あの、ドレミーファ大臣に報告を……」
「そんなのはあとでいいのよ。私、ようやく隙を突いて町に出ることができたのよ! 町を見たくてうずうずしてたの!」
「そ……そうですか」
「それじゃあ早く案内をしてください!」
パンジーはアルジームの手を引き、走り出した。アルジームは急いでじゅうたんとルーシィを呼んだ。
クーアの魔力の暴走により、洞窟の天井が崩れ始めた。ベーキウたちは悲鳴を上げながらひたすら走っていた。
「出口! 出口は一体どこなのよ!」
「うわァァァァァ! こんなところで死にたくなァァァァァい!」
「私だってそうよ! 世界中の男とにゃんにゃんするまで死んでたまるかァァァァァ!」
シアン、クーア、レリルは悲鳴を上げていた。そんな中、後ろを走っていたベーキウとアルムが、後ろを見て声を上げた。
「まずい! 落下速度が上がってる!」
「苦戦したモンスターがあっさり潰されてる! まずい! 出口を早く見つけないと!」
ベーキウとアルムがこう言うと、キトリは突如立ち止まった。
「おい! 立ち止まると潰されるぞ!」
ジャオウは急いでキトリの手を引こうとしたのだが、キトリはウインクをしてジャオウにこう言った。
「いい案を思いついたのよ。皆、魔力を開放してバリアを張って」
「ええ? なんで急に?」
「そうか。お前の考えが分かったぞ!」
キトリの考えを理解したクーアは、魔力を開放してバリアを張った。レリルは仕方ないと思いつつ、魔力でバリアを張った。それに続いてベーキウたちも慌ててバリアを張った。しばらくして、天井がバリアの上に落下した。
「キャァァァァァ! 落ちてきてる!」
「とにかく崩壊が収まるまで耐えて!」
「分かった! 今はキトリの言うことを信じるしかない!」
ベーキウは苦しそうな声を上げながら、ひたすら魔力を使ってバリアが壊れないように耐えた。しばらくして、天井が落下する轟音は静まった。
「天井は完全に崩れたみたいだけど……これからどうするのよ?」
「もう一度魔力を使って、バリアの上に落ちた天井の瓦礫をぶっ壊す! 無理矢理出口を作るって作戦じゃろ?」
クーアの言葉を聞き、キトリは頷いた。
「クーアの言う通り。こんな状況で出口を見つけるのは困難。だから、出口を作ればいいの」
「すごいことを考えるな。下手をすれば、俺たちは天井に潰されてぺしゃんこになっていたのに」
「皆の力を合わせれば、この程度の困難は軽く超えられるって考えたからね」
ジャオウはキトリの返事を聞き、頷いて納得した。そんな中、シアンとクーアが魔力を開放した。
「それじゃあ、どでかいのをぶっ放すわよ」
「いいかシアン? 最初から全力で行くぞ!」
「分かってるわよ! 行くわよ!」
その後、シアンとクーアは強い魔力を放ち、天井に向かってビームを放った。放たれた巨大なビームは天井を打ち抜き、大きな穴を天井に作った。それを見たアルムは、目を開けて驚いていた。
「ありゃま……すごい力」
「最初に戦った時よりも、確実に強くなっているな」
ジャオウとアルムは、シアンとクーアの魔力を感じてこう言った。その一方で、魔力を完全に使い果たしたシアンとクーアはその場に倒れた。
「げ……限界……ベーキウ、私を抱いて」
「魔力がすっからかんじゃ。ベーキウ、わらわを抱いて上へ……」
バカなことを言ったバカ二人に対し、キトリは余った魔力を使ってバカ二人を上へ吹き飛ばした。バカ二人が星になった後、キトリはジャオウたちを見た。
「それじゃあ戻りましょう」
「あ……ああ」
仲間に対してとんでもないことをやったキトリを見て、ジャオウは驚きの表情を見せていた。
その後、ベーキウたちは何とか洞窟から脱出することができた。ジャオウはアルムとレリルを呼び、去ろうとした。
「何度も世話になった。だが……本来は敵同士だ」
「ああ。次に会ったら……」
「白黒はっきりさせよう。できればいいのだが」
ベーキウとジャオウは短い会話を交わし、話を終えたジャオウはアルムとレリムと一緒に去って行った。が、ベーキウとキトリはまだ砂漠に残っていた。
「さて、いつ落ちてくるか……」
「だな」
ベーキウとキトリは日陰の上で休みながら、シアンとクーアがいつ落ちてくるか待った。数分後、悲鳴を上げながらシアンとクーアが落ちてきて、頭から砂漠の中に突っ込んだ。
「落ちてきた」
「よし、それじゃあ行くか」
ベーキウとキトリは、砂漠の中に顔を突っ込んでいるシアンとクーアを引っ張り出し、そのまま引きずって町へ戻って行った。
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