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灼熱の砂漠を行く


 ツエルたちに旅立ちの挨拶をした後、シアンたちは空港へ向かった。その話を聞いたベーキウは目を丸くして驚いていた。


「飛行機に乗るのか。俺、初めてなんだよな」


「そうなの? 私は修行とかの旅でよく使ったけど」


 シアンは搭乗手続きをしながらこう言った。クーアはうなり声をあげて何かを考えていた。そこに、キトリが近付いた。


「どうしたの? おなかが痛いの?」


「違うわい。わらわはいつ、飛行機に乗ったかなーって思い出している」


「おばさんの子供時代に飛行機って存在したのー?」


 胡散臭そうな目をしながら、シアンはこう言った。その言葉を聞いたクーアはイラっとした表情でシアンに近付いた。


「そこまで歳を取っておらんわい! 三十代ぐらいには確かあったはずじゃ!」


「今から半世紀前……」


 クーアの言葉を聞いたシアンとキトリは、後ろに引いてこう言った。その様子を見たクーアの怒りは爆発し、シアンとキトリを追いかけ始めた。




 その後、ベーキウたちは飛行機に乗り込み、次の目的地であるデザトスミスへ向かった。


「うわ、本当に飛んでるよ」


 ベーキウは窓から空を見て、子供みたいにこう言った。隣にいるキトリも、珍しそうに空を眺めていた。


「私も飛行機初めてなの。空の上ってこうなっているのね。生で見れて感激」


 と、ベーキウとキトリははしゃぎながらこう言った。一方、別の席に座っていたシアンとクーアは嫌そうな顔をしていた。


「どうしてあの二人が一緒なのよ?」


「仕方ないじゃろ。キトリが怖い顔で、あなたたちがベーキウの隣に座ると確実に騒動が起きるって言ってたんじゃ。あーあ、本当はわらわもベーキウの隣に座りたかったのに、どうしてこいつと一緒なのじゃ?」


 そう言って、クーアは深いため息を吐いた。シアンは仕方ないと思いつつ、アイマスクをしてデザトスミスに到着するまで寝ようとした。それから数時間、順調に飛行機は空の上を飛んでいた。だが、突如アナウンスが聞こえた。


「今、デザトスミス上空を飛んでおりますが、砂嵐が発生したため、ルートを少し変えます」


 このアナウンスを聞いたベーキウは、驚いて声を上げた。


「砂嵐か。じゃあ、砂漠の上を通っているってことか」


「そうみたいね。見て、砂みたいな粒子がここまで飛んでいる」


 キトリは窓から外を見てこう言った。外には、砂のような粒子がぐるぐると動きながら宙に浮いていた。


「はぁ、ここまで砂が飛んでいるってわけか。ここの砂嵐って強烈だな」


「砂漠を歩く時、気を付けないとね」


 キトリの言葉を聞き、ベーキウは頷いた。




 砂嵐が発生するというちょっとしたアクシデントがあったが、何とか飛行機はデザトスミスの空港に到着した。


「さーてと、すぐにデザトスミスの首都に行くわよ。次の狙い、プラチナの砂鉄があるかもしれないわ」


 シアンの言葉を聞いたクーアは、嫌そうな声を上げた。


「えー? もう行くのかー? 長時間の移動じゃったんだ。今日はホテルで休んでゆっくりしようぞー」


「バカ言ってんじゃないわよ。ジャオウたちが先にここにいるかもしれないじゃない。それに、あんたも私の横で爆睡してたじゃないの」


 シアンの言葉を聞いたクーアは、ため息を吐いた。


「爆睡? 眠りが浅い。全然寝た気にならぬぞ」


 クーアの言葉を聞いたキトリは、呆れた表情でクーアに近付いてこう言った。


「完全に寝てたわよ。いびきが酷かった」


「え? そんなに?」


「そうよ。おかげで仮眠しようとしたけど、あんたのせいで一睡もできなかったのよ」


 シアンはクーアの鼻を力強くつかみ、上に持ち上げた。


「いだだだだだだだだ! すいませんすいません! 本当にすいません!」


 空港に到着して騒ぐシアンたちを見て、ベーキウはため息を吐いていた。その後、シアンが首都へ向かう乗り物の手配を行い、それに乗って首都へ向かうことになった。のだが。


「おい、何じゃこれは?」


「何って、砂漠横断用のソリと、引っ張ってくれるダチョウのモンスター、デカアシダチョウだけど」


 シアンは目の前にあるソリとモンスターの説明をした。それを聞き、クーアは歯ぎしりしながらシアンに近付いた。


「見て分かるわい! もしかして、こいつに乗って首都へ向かうつもりか!」


「そうよ。まさか、バスやタクシーで首都に行けると思っているの? 砂漠には凶暴なモンスターがたくさんいるの。そいつらの攻撃を受けたら、車が大破するわ。あんたが心配するのも分かるけど、デカアシダチョウは危険を察知して走る。だから、モンスターがいないルートで走れるのよ」


 シアンの説明を聞いたクーアは、ため息を吐いた。


「確かにモンスターとの戦いは避けれるが、クソ熱い中を走るのじゃぞ? クーラーがある車じゃダメなのかー?」


「魔力でどうにかできるわよ。さ、早く乗って」


 シアンはクーアをソリに乗せた。ベーキウとキトリもソリに乗り、シアンに乗ったと合図を送った。


「皆乗ったわね。それじゃあ出発!」


 シアンは準備ができたとデカアシダチョウに合図をした。その直後、デカアシダチョウは鳴き声を上げて勢いよく走り出した。


「皆! デカアシダチョウは高速道路を走っても文句を言われない速度で走るわ! しっかり綱を握ってて!」


「うわぁ! こりゃぁ早い!」


「バイクに乗っているみたいじゃ!」


「のんきなことを言わないで。魔力を使って、砂が飛んでくるわよ」


 そんな会話をしながら、ベーキウたちを乗せたソリは勢いよく走っていた。




 数時間後、デカアシダチョウは砂漠のオアシスにいた。熱中症対策グッズを身にまとったベーキウは、トウモロコシをデカアシダチョウに食べさせていた。


「勢いよく食べるな。腹ペコだったのか?」


 勢いよくトウモロコシを食べるデカアシダチョウを見て、ベーキウはこう言った。その一方、シアンたちは服を脱いで水浴びをしていた。


「はぁ、ベーキウも水浴びをしたらいいのにのー」


 そう言いながら、全裸のクーアは立ち上がって動いていた。シアンはため息を吐き、こう言った。


「ババアのエロシーンなんて誰も得しないわよ」


「わらわはババアではない! 何度も言ったじゃろうが、わらわの見た目は十七歳って!」


「中身の問題じゃないの?」


 平泳ぎしながら、キトリがぼそりとこう言った。その言葉を聞いたクーアは、歯ぎしりしながら叫んだ。


「だったらわらわがまだ若いって証拠を見せてやるわい! いいか? 今からわらわのスッポンポンをベーキウに見せる! ベーキウが興奮したらわらわはまだ若い証拠じゃ!」


「バカなことをしないの」


「バカではない! 愛しのベーキウ、今行くぞーい! 今なら間違いを起こしても問題ないからのー!」


 そんなバカなことを言いながら、クーアはすっぽんぽんで岸に上がり、ベーキウの元へ向かった。


「ベーキウゥゥゥゥゥ!」


 クーアの声を聞いたベーキウは、前から全裸で突っ込んでくるクーアを見て悲鳴を上げた。


「おわぁ! 何やってんだ!」


「興奮したか? 興奮するじゃろ? 間違いを犯してしまっても、わらわは問題ない! と言うか、問題を起こせ! 起こしてくれ! こんな真昼間から盛んになってもわらわは問題ないのじゃー!」


「問題大ありよ!」


 そう言いながら、シアンが光の魔力を使ってクーアを攻撃した。だが、クーアはジャンプして攻撃をかわした。


「何ッ!」


「だーはっは! そんな幼稚な攻撃がわらわに通用すると思っているのか! この間抜け勇者が!」


 クーアはシアンに対して罵倒しながらベーキウに近付いた。だが、デカアシダチョウが鳴き声を上げながらクーアの顔面に向かって蹴りを放ち、オアシスに向かって蹴り飛ばした。その後、デカアシダチョウは自身の頭をベーキウの頬に近付け、すりすりした。その様子を見ていたキトリは、あることを察した。


「あのデカアシダチョウ、メスだったのね」


「メスなら種族を構わずフラグを立てるのね、さすがベーキウ」


 と、横にいたシアンがこう言った。


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