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レリルからのビデオレター


 魔界に生息するビデオカメラのようなモンスター、パパラッティがキトリの元に現れた。キトリはそのパパラッティに映像が保存されていることに気付き、映像を流した。その映像が最初に映し出したのは、上半身裸で捕まっているベーキウの姿だった。


「ベーキウ!」


 ベーキウの姿を見たシアンは叫び、キトリは驚きのあまり言葉を失った。そんな中、クーアがぽつりとこう言った。


「やっぱりベーキウの裸はカッコよくてエロいのー」


「こんな状況で何言ってんのよオバハン!」


 シアンはバカなことを言ったクーアに向かってこう叫んだ。そんな中、ベーキウは目を覚まし、周囲を見回していた。


「あれ? どこだここ? 何で俺裸なんだ? 俺のクレイモアは?」


 声を出したベーキウを見て、シアンは何か言おうとしたのだが、キトリが止めた。


「何言っても無駄。これは保存された映像よ」


「確かに」


 シアンが歯を食いしばって答えると、映像にも一人の人物が映し出された。


「はーい。私の姿が見えますかー?」


 現れたのはレリルだった。レリルの姿を見たキトリは、何かを思い出したかのようにこう言った。


「このサキュバス……かなり前、勝手に魔界を抜け出した奴だ!」


「何だって! じゃあ、魔界の混乱に乗じて……」


「かもしれない」


 キトリはレリルを睨み、次に何を言うか気にしていた。


「私はレリル。魔界から抜け出したサキュバスよ。勇者の少女、シアン。エルフのおばさん、クーア。そして魔王の娘、キトリ。あんたらのことはクレナイザメの話から目を付けていたわ」


「クレナイザメ? 私たちが知らない間にこいつが……」


 シアンは悔やんだ。レリルの存在に気付かなかったことを。クーアは怒っていた。おばさんと言われたことを。


「おいこのクソサキュバス! だーれがおばさんじゃ! わらわはオメーより若く見えるわ! 聞こえとるか股臭そうなサキュバス女! お前は若作りしているじゃろ!」


「クーア。これ、保存された映像だから何言っても無駄だって」


 キトリは暴れ始めるクーアの肩を叩き、こう言った。クーアが文句を言いまくる中、映像は流れていた。


「あんたらがいずれ、私の敵になるだろうと予測していたわ。いつかきっと、私の存在を知って、倒しにくるかもしれないって考えたわ。だけど、私はサキュバス。こーんなにカッコよくて、見てたらムラムラしちゃう男を見たら、手を出しちゃうじゃないの。この男にふさわしいのは私。あんたらみたいなちんちくりんのおこちゃまと婚期逃したババアには似合わないわ。だから、この男は諦めてねー」


 と言って、レリルはベーキウの顔に触れ、無理矢理キスをした。ベーキウはレリルから離れようとしたのだが、レリルは離れなかった。しばらくして、ベーキウは苦しそうな声を上げた。その直後にレリルはキスを終え、にやりと笑いながらこう言った。


「この男のファーストキスは私が頂いちゃいました。ついでに舌も入れちゃった。残念でしたー。キャハハハハハ!」


 レリルの笑い声の後、映像が終わった。シアンたちの後ろからこの映像を見ていた警察官の男性は、シアンの肩を叩いてこう言った。


「あれは東の廃墟に住み着いた変なサキュバスだね。捕まっていたのは君たちの仲間かい? 助けに行くなら、早く言ってあげた方がいいよ。何をされるか分からないからさ」


「ええ。分かってます。今すぐにでもベーキウを助けに向かいます」


 シアンは振り返りながらこう答えた。その時のシアンの形相は、まるで怒れる鬼のような顔をしていた。その顔を見た警察官は悲鳴を上げながら後ろに倒れた。




 ベーキウは近くにいるレリルの部下に頼み、何度も水を口の中へ運び、口の中をキレイにしていた。


「ブハァッ! はぁ……はぁ……まだ口の中が気持ち悪い」


「すみませんねぇ、うちの上司はキスがへたくそなんですよ。それに、さっきニンニク料理食べたせいか、口の中が臭いと思うんですよ」


「あの臭いの元はニンニクだったのか。どうしてキスをする前に食べたんだ? 常識的におかしいだろ」


「精力を付けるために食べたんだと思いますよ。それと、覚悟した方がいいですよ。あの人、ヤる気満々ですから」


 この言葉を聞き、ベーキウは嫌な顔になった。ファーストキスを奪われ、さらにあれも奪われるのかと思うと、嫌になったからだ。


「勘弁してくれ! あんな変なサキュバスの相手は嫌だ! 頼む、君から何か言って説得してくれ!」


「すみません。あの人、超ワガママで俺たちが何言っても聞かないんですよ。本当にすみません。覚悟を決めてください」


 と言って、レリルの部下は去ってしまった。ベーキウは戻ってくれと何度も叫んだが、その言葉は届かなかった。その直後、露出度が高い下着を身に着けたレリルが部屋に入ってきた。レリルが部屋に入った瞬間、ベーキウは嫌そうな顔でこう叫んだ。


「ウゲェッ! 臭い!」


「ちょっと、部屋に入った瞬間そんなこと言わないでよ! 私、さっきお風呂に入ったばかりなのに!」


「本当に風呂に入ったのか?」


「入ったわよ! 念入りに石鹸の泡を立てまくって、体中を磨いたわ! おかげで、皮膚が痛いわよ!」


「じゃあどうして臭い?」


「香水かしら? 結構いい値段の高級な香水だけど……」


 レリルはパンツの中にしまってある香水を取り出し、説明文を見た。


「あ……使用期限過ぎてた」


「そんな物使うな!」


「ま、体に害はないから大丈夫でしょ。さぁ、第二ラウンドを始めましょう」


 と言って、レリルは口を大きく開けてベーキウに近付いた。


「オェェェェェ! ニンニクの臭いが! きつい!」


 ベーキウの言葉を聞き、レリルははっとした表情でキスを止めた。


「まずい、歯磨きするの忘れてた」


 と言って、レリルは急いで洗面所へ向かった。一人ぼっちになった後、ベーキウは心の中で呟いた。誰でもいいからあの変なサキュバスから解放させてくれと。




 ニンニク臭いと言われてショックを受けたレリルは、歯磨き粉をたっぷりつけて歯磨きをしていた。念入りに歯を磨いていると、部下がいきなり洗面所に入ってきた。


「レリル様! 大変です!」


「ゴッフェッ! ゲホッゲホッ! 歯磨き中に入ってこないでよ!」


「着替えをしているわけじゃないからいいでしょうが! まぁ、あんたの裸を見ても嬉しくないし」


「おいお前、ぶっ飛ばすぞ!」


「あっと、そんなことより変態です! 違った、大変です! リフトの町を見張っていた奴からの連絡なんですが、あいつらが武装したトラックに乗り、こちらに向かっているようです!」


 部下の報告を聞いたレリルは、笑みを浮かべてこう言った。


「私たちと戦うようね。相手は強かろうが、たかが三人。数の方ではこっちが有利よ。それに、今は私が信頼する四天王がいるわ」


「し……四天王……」


 レリルが信頼する四天王がいると聞き、部下は冷や汗をかいた。部下は四天王の存在を知っており、レリルと同じくらい強いと言われているのだ。


「いい? あいつらがここへきても、落ち着いて対処しなさい。焦ったら負け。こっちが有利な状況にあるってことを頭に入れて起きなさい」


「分かりました」


 部下は返事をした後、洗面所から去って行った。話を終えたレリルは、歯磨きを再開しようとしたのだが、歯磨き粉が入ったチューブを見て呟いた。


「ヤベ、歯磨き粉がない」




 レリルのアジトの前。門番が武器を構えて立っていた。


「連絡が入った。レリルさんが捕まえた男の仲間がこっちに向かっているようだ」


「どんな奴か分かるか?」


「勇者の少女シアン、エルフのババアクーア、魔王の娘のクーアだ」


「勇者とババアと魔王の娘ね。一人イレギュラーなのがいるけど……ま、俺たちの敵じゃないな」


「イレギュラーって誰だ?」


「ババア」


 門番が話をしていると、いきなり武装したトラックが突っ込んだ。武装したトラックは門番をぶっ飛ばし、門を破壊してアジトの中に入った。


「侵入者だ! 侵入者だ!」


「おいおい、こんな侵入の仕方ってありかよ!」


 レリルの部下たちは、突如現れた暴走武装トラックを囲み、武器を構えた。そんな中、部下の一人が何かに気付いた。


「おい……皆、逃げろ! あのトラック、ガトリング砲が付いてるぞォォォォォ!」


 部下の一人が叫んだ後、トラックにあるガトリング砲から無数の弾丸が発射された。


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