新たなる国の始まり
独裁王、カネズキの命運は尽きた。城でのドタバタ騒ぎに紛れ、城下町の人たちが革命を起こし、大成功したのだ。その後、カネズキはドルセン全王、そしてその妻を毒殺したこと、それ以外の罪も全部認めた。
革命の翌日、カネズキや彼に関わり、甘い汁を味わっていた悪い奴らは全員パンツ一丁の情けない姿となり、城下町の中央に集められていた。そこには、自転車があった。
「何だ、これは?」
カネズキが上から目線でこう言うと、鞭を持った怖そうな衣装のお兄さんがカネズキの汚い尻に向かって鞭を振るった。
「偉そうに言うな豚野郎が! 人に何か尋ねる場合は敬語で話せとママから教わらなかったのか!」
「すみません! あの……あなた」
「この豚野郎! 俺のことは女王様と呼べ!」
「ヒィィィィィ! 女王様! これは一体何でしょうか?」
「いい質問だ豚野郎。これはただの自転車ではない。自家発電の自転車だ。前の王様がいざって時に用意してあった物だが……あまり使う機会がなかった。だが、今その時がきたのだ」
説明を聞いたカネズキたちは、悲鳴を上げた。
「これから何をするか理解したようだな、豚野郎」
「すみません……ワシは歳で、激しく動くと体に悪い……」
「口答えするな豚野郎!」
女王様と自称するお兄さんは、再び鞭を振るった。カネズキたちはため息を吐きつつ、自転車にまたがり、ペダルをこいだ。ゆっくりペダルをこいでいたのだが、お兄さんは鞭を振るった。
「遅い! もっと早く!」
「ヒィィィィィ!」
カネズキたちは、悲鳴を上げながら足を速く動かした。だが、それでもお兄さんは満足しておらず、何度も鞭を振るっていた。
モンパ一味のアジトにいたジャオウたちは、旅立ちの支度を終えて外に出ていた。
「では、世話になった」
ジャオウはノレパンたちに頭を下げてこう言った。ノレパンはため息を吐き、ジャオウにこう言った。
「ホントに行っちゃうの? あんたもあの王を倒した英雄の一人なんだから、勝利パレードぐらい出たらどうなのよ?」
「俺にその気はない。それと、あまり目立ちたくないんだ」
「すみません。僕たちは勇者パーティーから追われる立場なんです。何度も協力したんですが、本来はそういう立場なんです」
アルムの言葉を聞き、ノレパンは頷いた。
「まぁ、立場ってもんがあるってことで納得するよ。それと、俺たちの方からも礼を言わせてくれ。お前たちがいなかったら、この国は破綻していた」
「何か事情があるらしいが、全部終わってからでもいい、また遊びにこいよ」
イジゲンは笑みを浮かべてこう言った。ミーネはジャオウたちと握手をし、笑みを浮かべた。
「また会いましょう。その時はこの国も変わっていると思うから」
「そうね。いい方向に変わっているわ」
レリルは遠くから聞こえるカネズキたちの悲鳴を聞き、こう言った。そんな中、ジャオウはゴエゲートに近付いてこう言った。
「ツエルと言う少女のこと、俺もノレパンから聞いた」
この言葉を聞いたゴエゲートは、顔を赤く染めた。ジャオウは慌てながら、再び口を開いた。
「俺は茶化しているわけではない! とりあえず……とりあえずおめでとう。守る者ができたんだ。君はまた強くなれる」
「ありがとう。いつか、あなたと手合わせしたい」
「考えておくよ」
と言って、ジャオウは右手を出した。ゴエゲートは慌てて右手を出し、ジャオウと握手した。
その一方、ベーキウたちは宿屋で眠っていた。だが、カネズキたちの悲鳴がうるさいため、寝ることができなかった。
「あの人たち、朝から激しいな……」
ベーキウは窓を除き、悲鳴を上げながらペダルをこいでいるカネズキたちと、罵声をしながら鞭を振るっているお兄さんを見た。その後、ベーキウはあくびをしてもう一度寝ようと思ったのだが、そこにシアンがベーキウの寝室に入ってきた。
「眠れないのベーキウ。一緒に寝て」
「一人で寝ろよ」
ベーキウは扉を閉め、ベッドの上に座った。その時、勢い良く扉が開き、外にいたシアンがベーキウに抱き着いた。
「ちょっとは一緒に寝てもいいじゃない! 主人公とヒロインのベッドシーンは、誰だって見たがるものなのよ!」
「こんな状況でベッドシーンがあっても、嬉しいと思うか?」
ベーキウは窓を指差してこう言った。外からは、鞭を叩く音とお兄さんの罵声の声と、カネズキたちの悲鳴が聞こえていた。
「うーん……確かにムードが台無しね」
「それより、俺はお前を抱くつもりはない。そんな余裕があるわけないだろうが」
と言って、ベーキウは立ち上がった。だが、天井裏からクーアが現れ、無理矢理ベーキウを押し倒した。
「だったらわらわとベッドシーンじゃ!」
「何でそうなるんだよ!」
「主人公の思惑とかそんなんどうでもいい! とにかくわらわに抱かれるのじゃ!」
そう言いながら、クーアは服を脱いだ。だが、シアンが後ろから延髄蹴りを放ち、クーアを止めた。
「何をするんじゃ!」
「誰がババアの脱衣シーンを望むと思っているのよ!」
「わらわの見た目は美少女じゃ! 美少女がエロく服を脱いでおるんじゃ! 誰だって美少女が服を脱いで下着やおっぱいが見えるシーンを見たら興奮するじゃろうが!」
「自分で自分のことを美少女って言うなババア! 年齢を考えなさい! 八十五って聞いたら野郎たちのあそこが萎えるわよ!」
「じゃあお前は自分の体に自信があるのか? 服を脱いですっぽんぽんになった時、野郎たちのあそこをカッチカチにすることができるのか? そんな貧相な体で野郎を興奮させることをできるのか?」
「貧相な体って言うな! あんただって似たような体じゃないの!」
「んにゃにー! わらわはお前より乳は大きいって思っているわ!」
その後、バカ二人は喧嘩を始めた。ベーキウはバカ二人の喧嘩を止めることはせず、部屋から出て行った。
宿のキッチンでは、キトリが朝食を食べていた。
「おはよう……ベーキウ」
「おはよう……キトリ。キトリもあの声で眠れなかったのか?」
「うん……」
そう答えて、キトリはあくびをした。ベーキウは店主から朝食を貰い、机の上に置いて食べ始めた。ニュースを見ると、前日の革命のことが取り扱われていた。
「昨日の革命が、もうニュースで流れてる」
「メディアの連中が、あの事件に食いついたみたい。どのチャンネルもこのニュースで持ち切り」
「そうか……今、外に出たらマスコミの連中がたくさんいるだろうな」
ベーキウはそう言ってコーヒーを飲んだ。そんな中、マスコミの集団が宿に入ってきた。
「すみません! 革命を手伝ったと言われる勇者パーティーがいるって聞いたのですが!」
「是非、インタビューさせてください!」
マスコミたちは騒ぎながら宿に入ると、キッチンで食事をしているベーキウとキトリを見つけた。
「あなたたちは勇者パーティーのメンバー! やはりあの情報は間違っていなかった!」
「あの! 話を聞かせてください!」
マスコミたちはベーキウとキトリに近付いたが、キトリは冷ややかな目でこう言った。
「今は食事中です。そして、何か言うことはありません。静かに去ってください」
「そこを何とか!」
「今、誰もがこの事件のことを知りたがっているんです! 知っていることを話してもらってもいいでしょうか?」
キトリの視線を浴びても、動揺しないマスコミを見て、ベーキウは哀れだと思った。そんな中、宿の主人がマスコミたちの前に立ち、こう言った。
「何も連絡をしないであれこれ話を聞くなんて、マナーがなっちゃいないな。仕事の邪魔だから早く消え去れ」
店の主人から圧倒的な殺意と威圧のオーラを感じたマスコミたちは、悲鳴を上げて去って行った。店の主人はベーキウとキトリの方を見て、にやりと笑った。それに対し、ベーキウとキトリはありがとうございますと言って、頭を下げた。
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