独裁国家の終わり
この小説が半分コメディだったおかげで、高所から落ちたカネズキは多少のダメージで済むことができた。しかし、後ろからツエルたちが追いかけてきた。
「逃げても無駄です!」
「悪運尽きたと思って、大人しく捕まりな!」
「悪あがきは醜いぞ!」
ツエルたちの叫び声を聞き、カネズキは唾をペッと吐いてこう言った。
「バーカ! 最後に笑うのはこのワシじゃ!」
ツエルたちに向かってカネズキは悪態を晒し、逃げ始めた。だが、戦いを終えたベーキウたちが現れた。
「あ! あいつ、あんなところにいたわ!」
「よし、捕まえよう!」
ベーキウはそう言って、カネズキに向かって走り出した。カネズキは何とかベーキウの突進をかわし、横に逃げようとした。だが、そこにはジャオウがいた。
「逃がさん!」
「どけぇ! どかないと撃つぞ!」
目の前に立ったジャオウを見て、カネズキは隠し持っていたハンドガンを手にした。だが、ハンドガンは高所から落ちた時の衝撃で、壊れていた。
「嘘! ワシの体は無事だったのに、どうしてこれだけ壊れるの!」
「運が尽きたようだな、愚かなる王よ!」
ジャオウは闇の魔力を操り、カネズキを捕らえようとした。だが、カネズキは気合で走り、ジャオウに突進を仕掛けて倒した。
「グッ! まだ戦いの疲れが残っていたのか!」
「やーいやーい! 疲れた体でワシに歯向かうからだバーカ!」
カネズキはあっかんべーをしながら走って去って行った。ベーキウはジャオウに近付き、手を貸して起き上がらせた。
「あの野郎、逃げやがった」
「太っているのに、逃げ足だけは速い奴」
半ば呆れたベーキウとジャオウは、逃げていくカネズキを見てこう言った。そんな中、ツエルたちが合流した。
「あいつはどこへ?」
「あそこへ逃げて行った」
「すまん。もう少し、疲れが癒えていたら捕まえられたのに……」
「大きな戦いの後だ。そう自分を責めんな」
イジゲンはうつむくジャオウに対し、こう言った。そんな中、クーアたちが外に出てきた。
「あいつはどこへ行ったのじゃ?」
「落ちたけど……無事だったみたいね」
「クーア、皆。まぁ、とりあえず俺の話を聞いてくれ」
ベーキウは合流したクーアたちに、今起きたことを話した。ノレパンは少し考え、こう言った。
「あいつ、城下町に逃げたな」
「城下町には、カネズキの手のかかった富豪層がいる。そいつらが、カネズキを助ける可能性があるな」
カネガタの言葉を聞き、ベーキウはこう言った。
「とにかく探そう。皆で探せば、すぐに見つかるはずだ」
「ベーキウの言う通りね。早く見つけましょう! そして、その後はあの野郎を丸焼きにして公衆の面前で晒してやるわ!」
シアンの言葉を聞いたクーアたちは、気合の入った声を発した。そんな中、ジャオウとアルムは呆れて冷や汗をかき、ベーキウは顔を抑えながらため息を吐いた。
「物騒なことを言うのは止めてくれよ……一応ヒロインなんだから……」
城下町に逃げたカネズキは、近くにあったタルの中に避難していた。
クソがッ! 王のワシが再びこんな臭い場所に隠れるなんて!
と、心の中で思いながらベーキウたちがこないことを祈っていた。そんな中、突如外から悲鳴が聞こえた。
む? 何かあったのか?
外の様子が気になったカネズキは、こっそりタルのふたを開けて外を見て、目に映った光景を見て絶句した。城下町に住む人々たちは家具を改造して作った武器を手にし、富豪層に突撃していたからだ。
「もう我慢できねぇ! 革命だ!」
「今、城の方でドンパチ騒ぎが起きているんだ! どさくさに紛れて革命を起こしてやるぜ!」
「クソッたれな国は、今日で終わりだー!」
今までの怒りを晴らすかのように、城下町の人々は富豪層の住人を攻撃していた。
「そ……そんな……今、革命を起こさなくてもいいじゃないの」
革命を起こす町の人々を見て、カネズキは鼻水を垂らしながらこう言った。そんな中、攻撃を受けたせいで丸裸にされた富豪層のおっさんが、タルから顔を出しているカネズキを見つけた。
「カネズキ王! あんた、どうしてここに? それよりも早く助けギャァァァァァァァァァァ!」
富豪層のおっさんは、カネズキに助けを求める途中で城下町の人に襲われた。その城下町の人はカネズキの姿を見て、悪魔のような笑みを浮かべた。
「あの愚かな王様、あーんな場所に隠れていたのかぁ。ケッケッケ。年貢の納め時のようだなぁ」
この言葉を聞いた他の城下町の人が集まり、ゆっくりと歩きながらカネズキに近付いた。カネズキは殺されると思い、タルから出ようとした。だが、太った体のせいでタルから出ることができなかった。
「ああクソ! 出れない!」
カネズキがわめいていると、住人の一人がカネズキに攻撃を仕掛けた。
「死ねェェェェェェェェェェ!」
「キャァァァァァァァァァァ!」
自身に向かって振り下ろされるハンマーを見て、カネズキは女のような悲鳴を上げた。だがその時、タルが倒れた。その時、カネズキにある名案が浮かんだ。
そうだ。このまま転がれば逃げられる!
そう思った直後、カネズキは体を動かした。すると、タルはカネズキの想像通りに動き、転がり始めた。
「あの野郎! ふざけたことをしやがる!」
「タルを転がして逃げるなんて、なんて奴だ!」
住人たちは転がりながら逃げるカネズキを見て、叫んだ。
「フハハハハハ! ワシは素晴らしい名案を閃いたな! ただ、これ……やっぱり酔うな」
転がりながら逃げるカネズキは、勝ったと思い笑っていた。だが、上空からノレパンが現れた。
「悪党の思い通りにこの世は動きませんよっと」
そう言って、ノレパンはハンドガンでタルを撃った。弾丸がタルに命中すると、タルは衝撃で大きく上に跳ね上がった。
「おわァァァァァァァァァァ!」
いきなり宙に舞ったことで、カネズキは驚いて叫び声をあげた。その後、剣を持ったゴエゲートがカネズキに近付き、剣を振るってタルを切り裂いた。そのついでに、カネズキの服も切り裂いた。
「ああっ! イヤーン!」
下着姿になったことを察したカネズキは、見ても嬉しくないのに乳首と下着を手で隠しながら落下した。
「あででで……クソ、失敗したが……周りには誰もいない」
カネズキは頭をさすりながら、周囲を見回した。誰もいないことを察したカネズキは、急いで逃げようとしたのだが、目の前に闇の刺が現れた。
「うわっ!」
「逃げられると思う?」
後ろから、キトリの声が聞こえた。カネズキは後ろを振り向いてキトリの姿を確認し、うなり声をあげて叫んだ。
「このクソガキ! ワシの逃げる道を奪うな!」
「あんたのような悪人の逃げ道を奪って何が悪いの? こうなったのも、全部あなたの自業自得だと思うけど」
「はっ! 生意気なクソガキめ! お前一人ならワシの腕力でどうにかできるわ! その小さい体に、大人を舐めたらこうなるってことをたっぷりと教えてやるわ!」
「ほう。私の仲間に手を出そうっての?」
「お前、ロリコンか。気持ち悪い性癖を持ってるのー」
暗闇の中から、シアンとクーアの声が聞こえた。それからすぐ、武器を持ったベーキウとジャオウが現れ、カネズキの前に武器を向けた。
「年貢の納め時だな」
「お前に逃げる選択はない。自分が犯した罪や愚行を反省しろ」
ベーキウとジャオウがこう言った直後、ノレパンたちがやってきた。もう助からないことを察したカネズキは、涙を流しながら土下座した。
「すみませんでした! 何でもしますので、どうか許してください!」
「ん? 今、何でもするって言ったわね、こいつ」
「うむ。確かに言った。この耳で聞いた。なぁ皆?」
黒い笑顔のクーアはベーキウたちの方を振り向いた。この問いに対し、ベーキウたちも笑顔を作って頷いた。その笑顔を見たカネズキは、気を落としてその場に崩れた。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




