ライバルだからこそ、それなりに互いを信頼している
ゴエゲートはマウネを倒し、ツエルの元へ向かっていた。だが、マウネは完全に倒されておらず、ゴエゲートに気付かれないように顔を上げ、奇襲を仕掛けようとしていたのだ。
バーカ! 隙だらけだぜ、剣士さんよォ!
マウネは少しだけ魔力を開放し、ゴエゲートに向かって小さな弾丸を放った。ゴエゲートは攻撃に気付き、弾丸を防御しようとした。だが、弾丸は軌道を変えてツエルに向かった。
「なっ!」
ツエルが狙いだと察したゴエゲートは、急いでツエルの前に立ち、盾となった。
「あなた……」
弾丸を受けたゴエゲートは、片膝をついてツエルの方を振り向いた。
「大丈夫……ですか?」
「はい……でも、あなたは! 血を流しているではありませんか!」
ツエルは慌てながら、ゴエゲートに近付いた。マウネは歯ぎしりしながら、その場に倒れた。
「クソッ……狙いを……外した……」
マウネは悔しそうに呟き、その場に倒れた。
ツエルは周囲を見回し、誰か助けてくれるか考えた。だが、戦いを終えたクーアたちはカネズキを追いに行ったためこの場におらず、シアンたちはまだ戦っていた。
「そんな……私だけじゃあ……」
「大丈夫です……気合でどうにかします」
「気合とかそんな問題じゃありません! ああ……血が止まらない……どうしよう」
ゴエゲートはゆっくりと右腕を上げ、ツエルの涙を拭いた。
「こう見えて、拙者の体は頑丈です。弾丸も急所から外れました。泣かないでください……涙は美人なあなたには似合いません」
美人と言われ、ツエルは照れた。ゴエゲートも自分で何を言っているんだと思い、顔を赤くした。
「あのその、今言ったことはあの……」
「美人って言われたの、初めてです」
「初めて? 拙者が一目惚れするくらいの美人なのに」
「え? 一目惚れ?」
一目惚れと口にしたことを、ゴエゲートは自分で驚いた。
「あ……そのあの……一目惚れは……」
「もしかして、私のことを……」
「は……はい」
ゴエゲートはゆっくりと頷いた。その直後、ツエルの髪が光り出した。
「うわっ! 何?」
「うわわわわわ! 拙者、何かした?」
ゴエゲートやツエル、シアンたちは戦いを止めて様子を見た。しばらくして光は収まり、シアンたちは再び敵と戦い始めた。ゴエゲートは恐る恐るツエルの方を向き、こう聞いた。
「何か異変は?」
「えーと……あ」
ツエルは髪を触り、手に髪が付着していることを察した。その後、ツエルの長い髪は下に落ち、ツエルはショートヘアーになった。
「あ……呪いが解けたんだ」
「それが、あなたの本当の姿なんですね。その髪でも、美人ですよ」
ゴエゲートは少し微笑んでこう言った。その言葉を聞いたツエルは嬉しさのあまり、ゴエゲートに抱き着いた。
ノレパンとカネガタは目の前の大男の相手をしながら、ゴエゲートとツエルの方を見た。
「あーの二人、戦ってる最中だーってのにイチャイチャしちゃってまぁ」
「戦いが終わったんだからいいだろうが。とにかく、私たちはあのデカブツを何とかするぞ」
「そうだねとっつあん」
話をしていると、大男の攻撃がノレパンとカネガタに襲い掛かった。
「うわーお。派手な攻撃だねぇ」
「力任せに攻撃してくるのか。単調な動きだが、当たれば痛いな」
「そうだねぇ……とっつあん。あいつをどうにかできる技ってない?」
ノレパンはこう言うと、カネガタは少し間をおいてこう言った。
「柔道と言う技を私は取得している。投げを主体とする業だ」
「投げ技ねぇ。それ、役に立つ?」
「相手の力を利用して、投げることができる」
「なーるほどぉ。力の反動を使って、ぶん投げるってわけね。でも、あのデカブツを投げられる?」
「魔力を使えばどうにかなる。ノレパン、援護をしてくれ」
「了解」
ノレパンは笑みを浮かべてこう言った。そして、ジャンプして大男の目に接近し、小さなボールを投げた。ノレパンの笑みを見た大男は、怒りの形相で叫んだ。
「ふざけるなよコソ泥風情が! この私、インコットを侮辱するつもりかァァァァァ!」
大男、インコットは剣を手にし、火の魔力を発してノレパンに攻撃を仕掛けた。火を纏った斬撃はノレパンが投げたボールに命中したその瞬間、強い光がインコットの目の前で起きた。
「おわァァァァァ! 目が!」
「隙ありぃ」
ノレパンはしゃがんでインコットの足元に移動し、小さなジェットをインコットの左足に取り付けた。
「何をした、お前!」
「まぁ見てなさいよ」
ノレパンはウインクをしてこう言った。そして、小さなジェットのスイッチを入れた。小さなジェットは大きな音を鳴らしながら、発射した。取り付けられている状態のため、インコットは無理矢理ジェットによって移動させられた。
「おわおわおわおわ! おわァァァァァァァァァァ!」
猛スピードで飛んでいるインコットは、悲鳴を上げていた。しばらくして、大理石にぶつかりそうになった。避けようとしたインコットだったが、できずに大理石に激突した。
「あぐあ……うう……こんなふざけたことを」
体に付着した大理石の破片を払いながら、インコットは前を見た。そこには、投げの構えをするカネガタの姿があった。
「カネガタ! お前!」
「まさか、悪の道に入った奴が紛れ込んでいたとは……人を見る目がないな……私は」
そう呟いた後、カネガタはインコットの左足を手にし、一本背負いを放った。
「わーお。奇麗な円」
宙を舞うインコットを見て、ノレパンはこう言った。その直後、インコットは背中から床に激突し、周囲に大きな音を放った。その衝撃で、ジェットは静かになった。
「あぐあ……ぐう……」
背中から感じる強烈な痛みをこらえながら、インコットは立ち上がった。カネガタは十手を構え、ノレパンは小さな銃を手にして近付いた。
「とっつあん、やーっぱりこいつかなりタフネスだよ」
「だが、大きなダメージを与えたはずだ。見ろ、背中を抑えて苦しんでいる」
「確かにね。背中に攻撃を受けたか、少しは動きが鈍くなるかな」
「だといいんだが……」
カネガタがこう言うと、インコットは魔力を開放し、手にしている剣を構えた。
「ふざけたことを! お前らはこの私が切り刻んで殺してやる!」
インコットの怒りの叫びを聞き、ノレパンはため息を吐いた。
「ありゃまぁ、立派な兵士さんが言う言葉じゃないねぇ。とっつあん、こいつにどんな教育をしたのよ?」
「私一人で兵士全員を育てたわけじゃない。一部は別の班で訓練していたが」
「何をごちゃごちゃと話をしている! 私の方から仕掛けてやるぞ!」
インコットは叫び声を発し、ノレパンとカネガタに向かって走り出した。ノレパンはインコットの足元に銃口を向け、引き金を引いた。放たれた弾丸はインコットの左足のすねに命中したのだが、それでもインコットの走る勢いは落ちなかった。
「おいおい、足の一本撃たれたら鈍くなると思うんだけど」
「そんな攻撃が私に通用するか! お前から殺してやる、怪盗ノレパン!」
この言葉を聞き、カネガタは急いでノレパンの前に立ち、インコットの攻撃を十手で受け止めた。
「とっつあん!」
「ノレパン! 次の攻撃の準備をしてくれ! 今のうちに逃げろ!」
「あいよ! ありがとさん!」
ノレパンは急いで逃げ出した。インコットは剣を振り上げて構え直そうとしたのだが、カネガタが十手を動かしているため、剣は動くことがなかった。
「なっ……剣が……動かない……」
「もうしばらく私と戦ってもらうぞ!」
カネガタはそう言って、インコットを睨んだ。その目を見たインコットは、動揺して後ろに下がった。
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