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ロマンの一つ、誰でも持っている


 ウーホは苛立っていた。怒りの矛先は目の前で魔力を使って戦うクーアではなく、途中で戦いに乱入したアルムでもない。その相手は、イジゲンであった。ウーホの中では、銃は弱い戦士が使う武器として認識されている。どうしてそんな風に認識しているのかと言うと、弱い奴は離れて戦うからという理由だ。


 クソッたれ! 弱い奴がオイラのことをバカにするなんて! 絶対にあいつだけは許せないぞ!


 そう思ったウーホは、魔力を開放して持っていたヌンチャクを上に上げ、振り回し始めた。すると、ヌンチャクから巨大な風が発生した。


「うわっ! すごい風!」


「うわー、あほかと思ったが……やはり見た目と言動通り、お前はあほじゃったのう!」


 と言って、クーアは魔力を開放し、ウーホと同じように巨大な風を発生させた。


「んなっ! オイラと同じ風!」


「敵が自分と同じ魔力を使ってビビったか? ビビったなら、お前はまだ未熟な証拠じゃ! 自分の力のなさをその身で思い知るがよい!」


 クーアは大声を発し、巨大な風を動かした。ウーホはクーアが放った風を見て、自身が作った巨大な風を放った。


「オイラが作った風が、お前のようなちっこい奴に負けるはずがない! ないんだァァァァァ!」


 叫び声を上げながら、ウーホは自分の風がクーアの作った風にぶつかるまで見届けた。二つの風はぶつかり合い、激しい音を発した。だが、すぐにウーホが放った風がかき消され、クーアが放った風がウーホに迫った。


「そんな……」


「ただでかいだけの風じゃ。質が悪い風なら、簡単にかき消すことができるぞ」


 驚いた表情のウーホに向かって、クーアはこう言った。その後、クーアが放った風はウーホを飲み込んだ。




 戦いを終えたキトリは、レリルとミーネから栄養ドリンクを貰って飲んでいた。


「ほら、これ飲んで」


「ふぅ……ちょっと苦いわね、このドリンク」


「夜のハッスルのために取っておいたスタミナドリンクだけど、疲れにも効くから」


「分かったわ……」


 キトリはまずそうな表情でスタミナドリンクを飲んだ。そんな中、ミーネはクーアが放った風を見ていた。


「やはり強いわね、エルフの賢者、クーア」


「え? クーアが一応賢者ってことを知っているの? 作者もこの設定忘れかけているのに」


 ドリンクを飲み終えたキトリは尋ねた。ミーネは余計な一言が付け加えられた質問に対し、小さく笑みを浮かべてこう言った。


「まぁね。一応世界中の情報を得るため、いろいろと調べているのよ」


「私たちが動いているってのも、知ってたみたい」


 と、レリルはこう言った。だが、ミーネは首を振った。


「あなたたちが動いてたってのは知っているけど、理由はまだ知らないわ。あなた、何か知らないの?」


「うーん……誰かを殺したいとかそんな感じ聞いた記憶があるような……まぁ、いずれにしろ分かるからいいわ」


 レリルの言葉を聞き、キトリは少し呆れた。


「重要な情報なのに……まぁ、今はそれどころじゃないわね」


 キトリはそう言って、吹き飛んだウーホの様子を見た。




 クーアの風によって吹き飛ばされたウーホは、悲鳴を上げながら床の上に激突した。高度から落ちるため、ウーホは魔力を使って自身の体を鉄のように固くしていた。そのおかげで落下時のダメージを抑えることができたのだが、それでもダメージを受けてしまった。


「あぐあ……うう……」


 魔力を抑えてウーホは立ち上がろうとした。だが、そのタイミングに合わせるかのようにナイフを持ったアルムが現れ、ウーホに攻撃を仕掛けた。


「うォォォォォ!」


 攻撃を受けたウーホは、ナイフによる斬撃を耐えた後、近くにいたアルムの頭を掴んだ。


「あっ! しまった!」


 アルムはウーホの手を頭からどかそうとしたのだが、ウーホの握力は予想通り、かなり強かった。ウーホは勝ち誇った笑みを浮かべ、クーアにこう言った。


「おいお前! こいつがどうなってもいいのか?」


「人質か。外道なことをする奴じゃ」


「勝つためには手段を選ばない。さぁどうする? こいつを返してほしければ、魔力を抑えてオイラの元に近寄れ! そこのお前もだ!」


 ウーホは壁の後ろに隠れているイジゲンを見て叫んだ。イジゲンは舌打ちをし、リボルバーを近くの台座の上に置き、手を上に上げてウーホに近付いた。


「これでいいか?」


「分かる男だな」


 俯くイジゲンを見て、ウーホは笑みを浮かべた。それからすぐに魔力を抑えたクーアも近寄ったことを知り、ウーホは笑い始めた。


「アーッハッハッハ! これでオイラの勝ちだ! 誰だろうね、オイラのことをバカって言ったのは? そのバカに負けたのは、どこのどいつかなぁ?」


 と、煽るような感じでウーホはこう言った。この言葉を聞いたクーアは、苛立ってウーホの顔面を殴ろうとしたのだが、イジゲンがクーアを止めた。


「ここは俺に任せておきな」


「はぁん? こんな状況を打開するって言うのか? 無理だね! 無理無理無理無理無理! お前たちはオイラに負けたんだよ! これ以上ふざけたことを言うと、こいつの頭をトマトみたいに握りつぶすぞ!」


 そう言って、ウーホは右手でアルムの頭を掴む様子をイジゲンに見せた。それに対し、イジゲンはタバコに火を付けた。


「おいバカ野郎。酒は好きか?」


 いきなり酒が好きかどうかと聞かれ、ウーホは目を丸くして驚き、クーアも捕まっているアルムも目を丸くして驚いた。イジゲンは煙を吐いて、再び口を開いた。


「おい、質問に答えろ。酒は好きか?」


「あ……当り前だ! こう見えても、オイラはアルコールに強いんだ! 生ビール十本飲んでも酔わないんだぜ!」


「そりゃーとんでもねぇバケモンだ。酒好きなお前に一つ言っておく。勝利と言う名の美酒を飲んで酔っちまったら、大変なことになるぜ」


「あぁん?」


 ウーホが不審そうに声を上げたその直後だった。イジゲンは左手の小指を動かした。すると、遠くに置かれていたはずのリボルバーが動き、目で追えないほどの速さでイジゲンの左手に飛んできた。そのことにウーホは気付いたのだが、その前にイジゲンはリボルバーの銃口をウーホの頭に向けていた。


「細工をしていたのか?」


「まぁな。目で見えないほどの細く、強度な糸をこいつのグリップ部分に括り付けてあった。左手の小指を動かせば、スパッと俺の手元にくるように細工してたんだよ。ま、いざと言う時の手段だけどな」


 ウーホはイジゲンの話を聞き、怒りの形相を見せた。だが、まだアルムを人質にしていることを思い出し、こう言った。


「バカなのはお前だ! オイラがこいつを人質にしているってことを忘れたのか!」


「すでに僕は助けられています」


 と言って、アルムはウーホの首筋にナイフの刃を当てた。


「な……何で? お前はオイラが人質にしたはずなのに!」


「くだらん質問の最中に助けたのじゃ。隙を晒しすぎじゃ」


 クーアはウーホの背後に回り、雷の刃を当てた。どんな風に動いても、次の瞬間に攻撃を受ける。三人は致命傷を与えやすい位置にいる。どう動いても、助かる選択をウーホは見つけることをできなかった。


「クソッたれ……オイラは負けたのか?」


「まーな。大人しく負けを認めてくれや。認めてくれるんだったら、無駄な弾を使わずに済む」


「グッ……最後まで嫌な奴! リボルバーなんて昔の銃を使った奴に負けるなんて……」


 ウーホの言葉を聞いたイジゲンは、タバコの火を吐いてこう言った。


「戦いが終わるまで、中身のない嫌味を言う上、ロマンもプライドもない奴だったな。昔の銃に負けた気分はさぞかし、最悪だろうな」


 イジゲンはそう言った後、リボルバーを回して胸元にあるガンホルダーにリボルバーをしまった。


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