今! 明らかになる真実!
なんやかんだあって、勇者パーティー、ジャオウ一行、モンパ一味、そして過去にとんでもないことをやらかし、悪い手段で王の座に座っている黒幕、カネズキが王の前に集まった。キトリが手にしているのは、ドルセン王が書いていた日記。それを見たカネズキは日記の朗読会を止めようとしたのだが、ベーキウとジャオウが邪魔をしていた。
「クソッ! どけ、邪魔だ!」
「悪いが、朗読会の邪魔はさせない」
「どうして邪魔をしようとするんだ? やましいことがなければ、一緒に日記の中身を聞こうぜ」
ベーキウとジャオウは武器を構え、焦るカネズキにこう言った。この時のベーキウとジャオウの表情を見たカネズキは、二人が自分の悪行にうすうす気付いていると察した。何が何でも邪魔をしようとし、周りを見て兵士たちが立っていることに気付いた。
「おい! あいつらを止めろ! これは命令だ!」
「え……はっ……」
兵士たちが返事をしようとしたその直後、イジゲンがリボルバーの銃口を兵士たちに向けた。
「荒いことはしたくねーが、命が欲しかったら俺たちの言うことを優先した方がいいぜ」
「分かりました」
と言って、兵士たちは武器を下ろした。カネズキは文句を言おうとしたのだが、ベーキウとジャオウが武器を動かして音を鳴らし、下手な動きをすれば斬られるとカネズキは察した。
「おーいキトリ、先に進んでくれー」
ベーキウの言葉を聞いたキトリは頷き、適当なページを開いた。
今日、素晴らしい知らせを聞いた。愛しの妻が妊娠したという。あの時、ホテルに行ったのがきっかけだろう。妊娠一カ月目だと聞き、子供が生まれるのはだいぶ先だろう。だが、今から生まれてくる我が子を見るのが楽しみで楽しみでしょうがない。どんな子に育つか楽しみだ。
この文章を読んだキトリは、ツエルの方を振り向いた。
「これ、多分ツエルが生まれる前に書いた日記ね」
「ええ。お父様……ホテルと言う場所でお母様と一体どんなことを……」
ツエルがこう言うと、ノレパンが近付いた。
「それはねー、君のお母さんが君のお父さんと……」
「変なことを言うな猿野郎! この子は森育ちだから、その辺の知識とか知らないのよ!」
クーアはノレパンに近付き、首を絞めた。
「た……助けて……ミーネちゃん……このままだと……マジで死んじゃう」
ノレパンは震える手で、近くにいるミーネに助けを求めたが、ため息を吐いてミーネはこう言った。
「純粋無垢な子にとんでもないことを教えようとした罰よ。お願い、半殺しにしといて」
「了解は得た! このままじっくり苦しめてやる!」
クーアは悪魔のような笑みを浮かべ。ノレパンの首を強く締めた。クーアとノレパンがバカなことをやっている間、キトリは気を取り直して別のページを読んだ。
今日、待望の我が子が生まれた。生まれた瞬間に元気な産声を上げたため、元気な子に育つだろう。生まれた子は女の子。大人になれば、妻のような美人になるに違いない。この美貌につられて、性欲にまみれたスケベな野郎たちが求婚してくるかもしれないが、その時は私がそいつらを見極めるしかない。とにかく今は、娘が生まれた喜びが大きい。名前は決めてある。そのことを知っているのは、知り合いの魔女のリョウセンと一部の大臣だけだ。名前はいつか、メディアを通じて発表しよう。
この文章を聞いたツエルは、笑みを浮かべつつも顔を赤く染めていた。
「大人になったら美人って……お父様ったら、一体どこまで未来を見ていたの?」
「あ、自分が自分で美人って察しているのね、あんた」
シアンは少し呆れた表情でツエルにこう言った。レリルはツエルの顔をまじまじと見て、頷いてこう言った。
「確かに美人ね。でも、私の方がスタイルはいいわね」
「失礼ですねぇ。口が臭い人にスタイルが悪いとか言われたくありません」
ツエルは頬を膨らませてこう言った。レリルは文句を言おうとしたのだが、アルムに止められた。
「怒らないでくださいよ。本当のことを言われただけじゃないですか」
「あんたはどっちの味方なのよ!」
レリルが叫び声をあげる中、キトリはため息を吐いてこう言った。
「もういい? 別の日を読むわよ」
と言って、日記を読み始めた。
妻を失った。いきなりのことだ。大臣のカネズキが妻の様子を見るために部屋へ向かい、そこで妻が息絶えているのを発見したという。なんてことだ……まだ、ツエルの呪いは解けていない。リョウセンが解呪のために動いているのだが、いつ解呪するか分からないと言っていた。妻はツエルの呪いが解け、一緒に生活することを望んでいたのに……しかし、妻は出産後、特に体調が悪いとかそういう類はなかったはずだ。それが急に亡くなるのはおかしい。検死結果は何もなかったというが、少し信じられない。
この文章を聞いたカネズキは、額から汗を流した。この男、ドルセンを暗殺する前に、彼の妻も毒殺したのだ。理由は一つ、ドルセンを亡き者にしても、彼女が王位を継ぐ可能性がある。自分が王になるのは、この女の存在が邪魔だったからである。
「おい、顔色が悪いぞ」
「お前まさか」
ベーキウとジャオウは、武器を向けたまま疑いの目をカネズキに向けた。周りの兵士やカネガタも、ベーキウとジャオウと同じ目をしていた。キトリはカネズキの顔を見て、先のページの文章を開いた。
「日記はここで終わっているわ。それじゃあ読むわね」
と言って、少しの間を開けて最後の日記を読み始めた。
最近、体調が悪い。喉からは風邪を引いたかのような痛みを感じ、頭も重く感じる。そして、数カ月前と比べて確実に体力が落ちた。何時間かけてやっていた作業も何回も休憩をはさむようになったし、腕の力が落ちた気がする。今、この日記を書いている時でも同じ症状だ。ペンを持つことも苦行に感じる。おかしなことと言えば、大臣のカネズキがよく差し入れでコーヒーを持ってきている。そのコーヒーは変な味がし、そのことをカネズキに尋ねたのだが、カネズキはよその大陸のコーヒーだから、味が違うのも当然と言っていた。好きではない味なのだが、誰かが持ってきてくれたものだから、受け取る側の責任としてちゃんと頂かないといけない。
仕事のしすぎだろうか? だが、前と比べても仕事の量は変わらない。民やいつか帰ってくる我が子、ツエルのために必ず生きねば。倒れてはならぬ。王として、親として。
これが、ドルセンの最期の日記だった。キトリは日記を閉じ、カネズキにこう聞いた。
「これでドルセン王の日記は終わりです。最後のページに書かれていた文章を覚えていますよね?」
「な……何のことだ? ワシには全然……」
とぼけようとしたカネズキだったが、ベーキウとジャオウが武器を動かした。
「正直に話せ」
「自分の立場を考えろ」
ベーキウとジャオウの言葉を聞き、カネズキは兵士たちを見回した。兵士たちは疑いの視線をカネズキに向けていた。
自分を味方してくれる者はいない。そう察したカネズキは小さく笑いだした。
「フフフフフ……まさか、あいつが日記を付けていたとは……考えてもいなかったよ」
この言葉を聞いたツエルは、カネズキを睨んだ。
「やはり、あなたがお父様を殺したんですね! そして、お母様も何らかの方法で殺した!」
「そうだ! その通りだよツエル王女! ワシがあいつらを殺したんだ!」
カネズキの叫びを聞き、ベーキウとジャオウが武器を動かそうとした。だが、一部の兵士がベーキウとジャオウに攻撃をした。
「グッ!」
「しまった!」
攻撃を受けたベーキウとジャオウは吹き飛び、床を転がった。シアンとアルムは急いでベーキウとジャオウの元へ向かったが、そんな状況でもカネズキは笑みを浮かべていた。
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