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ベーキウはどこへ?


 スリ師の男を捕まえたシアンたちは、宿泊している宿に集合していた。キトリは周囲を見回し、ベーキウの姿を探していたが、ベーキウは見当たらなかった。


「変ね、ベーキウがいない」


「誰かベーキウに連絡した?」


 シアンはスリ師の男の股間を蹴りながらクーアとキトリにこう聞いた。この言葉を聞いたクーアとキトリは首を横に振った。


「してないのね。でも、こいつを捕まえた時にちょっとした騒動があったから、いろいろと察して集合するとは思うんだけど……」


「確かにの。ベーキウは常識人だから、何かあったらすぐにわらわたちの元へ戻る。戻らないのはちょっとおかしいぞ」


 クーアの言葉を聞いたキトリは、はっとした表情でこう言った。


「まさか、変なトラブルに巻き込まれたかも」


「キトリの言う通りね。とりあえず、このクソ野郎は警察に任せて、私たちは急いでベーキウを探しましょう!」


 会話後、シアンたちは三手に別れてベーキウを探すことにした。その隙にスリ師の男は立ち上がって逃げようとしたのだが、そのことを察したシアンは急いでスリ師の男に接近し、股間を蹴った。




 シアンは町の繁華街へきていた。ベーキウはこんな所に行くわけがないのだが、もしかしたら厄介な女に話しかけられて変な騒動になっているかもしれないと思ったからだ。


「ベーキウはどこかな?」


 シアンは走りながら、周囲を見回してベーキウの姿を探した。すると、紫色のスーツを着た変な顔の男が近付いた。


「お嬢ちゃん、何かお探しかい?」


「彼氏を探しているの」


「そうかい。それじゃ、僕も手伝おうか?」


 変な顔の男はシアンの顔に近付いてこう言ったが、シアンは嫌そうな顔をして言葉を返した。


「結構。あんたからは善意を感じない」


「そんな酷いことを言わないでさ。ほら、僕も手伝うから。で、君が探しているのはどんな男だい?」


 変な顔の男は無理矢理シアンに近付いてこう聞いたが、シアンは無視して歩き続けた。それでも、変な顔の男はしつこくシアンに近付いた。


「ねぇ。君のためなら僕は何でもやるよ」


「何でもやるのね。それじゃあ二度と、永遠に、一生私に近付かないで。その一昔前のギャグマンガの変なブサイクなキャラみたいな顔を私に近付けないで!」


 シアンは魔力を解放して怒鳴った。シアンの迫力に負けた変な顔の男は、情けない悲鳴を上げて去って行った。


「ケッ、ブサイク野郎が! ナンパするなら他のビッチにしなさいよね! こっちはベーキウが見つからなくてイライラしてるっつーのに!」


 去って行く変な顔の男を見ながら、シアンは周囲を見回した。すると、二人組の男が路地裏で何かをしている光景を見つけた。何かのトラブルがあり、もしかしたらベーキウが巻き込まれているかもしれないと考えたシアンは、急いで二人組の男に近付いた。


「あんたら、何してるの!」


 シアンの声を聞いた二人組の男は、ぎょっとした表情でシアンの方を振り返った。二人組の男の手には、白い粉があった。


「もしかしてそれ、麻薬じゃないの?」


「麻薬じゃないっすよ。こ……これは……」


 口ごもる男に苛立ったシアンは、剣を手にした。シアンの迫力に負けた男は悲鳴を上げながら叫んだ。


「これは砂糖です! 実は俺、糖尿寸前で甘い食べ物を制限されているんです! だけど、どーしても我慢できなかったから、友人に頼んで砂糖を……」


「ややこしいことをすんなァァァァァァァァァァ!」


 魔力を解放しながら、シアンは怒鳴った。




 クーアは町を歩く人にベーキウのことを聞いていた。だが、誰もベーキウのことを知らないと答えた。


「おかしいのー。あのクソスリ師を探していた時にあちらこちら回っていたはずじゃが……」


「そこの君、ちょっと話があるんだけど」


 と、女性がクーアに声をかけてきた。クーアは何か知っていると思い、急いで女性に近付いた。


「何か知っているのか?」


「今さっき、変な集団が男の人を担いで町の外に出て行ったけど……もしかして、あなたが探している男性かもしれないって」


「そいつらはどこへ向かったのか教えてくれ!」


 クーアは女性に飛びついてこう聞いた。女性は少し戸惑ったが、落ち着いてクーアに答えた。


「町の東門よ。町の人も普段は使わない門に向かったから、何か変だと思ったのよ」


「東じゃな。ありがとう!」


 クーアは急いで東の門へ行こうとした。その直後、クーアはこのことをシアンとキトリに伝えようと思った。だがその時、脳内で悪魔の姿をした自分自身が現れた。


「おいおい、あの二人にベーキウのことを伝えるのか? お前一人で行っちゃいなよ。そうすれば、ベーキウはお前のことを惚れ直す。あの二人より先にベーキウとニャンニャンできるぞ」


 この言葉を聞き、クーアは悪い顔になった。だがその直後、天使の姿をした自分自身が脳内に現れた。


「ダメよ! ここはちゃんとシアンとキトリにこのことを話して、皆でベーキウを助けないと! もしかしたら、激しい戦いになるかもしれないわ! そうなった時、あなた一人で敵に勝てると思う? 仲間がいた方が心強いわよ!」


 この言葉を聞き、クーアは確かにと呟いて急いでシアンとキトリの元へ向かおうとした。だが、再び悪魔の言葉が脳内に響いた。


「あの二人もベーキウのことを狙っているのだぞ? あの青い尻の小娘共にベーキウを取られてもいいのか? 早くお前の(ピーーー!)をベーキウに捧げるのじゃ」


 再び響いた悪魔の言葉を聞き、クーアは悪い顔をして東門へ向かおうとした。だが、また天使の言葉が響いた。


「そんな手を使ってベーキウと結ばれて何が嬉しいの? 勝負の世界に卑怯もクソもないけれど、正々堂々と勝負しなさい! あの二人をコテンパンに打ち負かしてベーキウに(ピーーー!)を捧げるからこそ、勝利の価値があるのよ!」


 天使の言葉を聞き、クーアはシアンとキトリの元へ急ごうとした。だけどまたまた悪魔の言葉が響いた。


「真面目に考えるな! ベーキウはお前が何年も待ち続けたタイプの色男! 小娘二人のどっちかに取られる前に、取っちまえよ!」


「バカの言うことを耳にしてはいけません! 真面目に考えなさい! シアンとキトリ、真正面からぶつかって打ち負かしてからベーキウとニャンニャンしなさい! ニャンニャン中はあなたの本能に任せるわ!」


 悪魔の言葉を打ち消すかのように、天使の言葉が響いた。クーアは悩んだ。シアンとキトリより先にベーキウの元へ行って無双してベーキウを独り占めにするか、シアンとキトリと合流するか。悩んでいると、誰かが肩を叩いた。


「誰じゃ! 今こっちは脳内であれこれ考えてるっつーのに!」


「独り言がでかいのよ、クーア」


 声をかけたのはキトリだった。その後ろにはシアンがいた。二人の姿を見たクーアは急いで立ち上がり、こう言った。


「ベーキウは誰かに連れ去られた! 東門から出て行ったと情報を得た!」


「こっちも情報を手に入れたわ」


 キトリの言葉を聞き、クーアは目が点となった。キトリの手を見ると、その手にはビデオカメラに手足が生えたモンスターのような変な物体がじたばた動いていた。


「何じゃこの気持ち悪いカメラは? モンスターか?」


「魔界に生息するパパラッティって名前のモンスター。ビデオカメラのような姿だけど、ビデオカメラのように映像を写すことができるの」


「なんか変なモンスターじゃのー。で、何で魔界のモンスターがここに?」


「分からないのよ。キトリがこいつを持って私のところにやってきたのよ」


 シアンがこう言う中、キトリはパパラッティの体を調べていた。


「こいつ、何か映像を保存してる」


「分かるのか?」


「うん。何かしらの映像が保存されていると、お腹の所が赤く光るのよ」


「こいつ、本当にモンスターなの?」


 シアンは胡散臭そうな目でパパラッティを見つめた。キトリはパパラッティにある再生ボタンを押し、映像を流した。そこには、牢屋のような場所で上半身裸にされて捕まっているベーキウの姿があった。


「ベーキウ!」


 捕まっているベーキウの姿を見て、シアンは大声で叫んだ。


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