事態は急に一変する
モンパ一味を探すため、城内をうろついていたシアンたち。だが、ベーキウとジャオウのマジバトルによって発生した衝撃波により、近くの部屋に吹き飛ばされた。その部屋は王の間であり、中にいたカネズキと遭遇することになった。
「お……お前……いやいや、あなたは勇者シアン! どうして城内に?」
「ノレパンの奴がくるって聞いたのよ。それよりも、どうして私たちを戦力から外したか教えてもらいたいわね!」
シアンはそう言いながらカネズキに迫った。そんな中、ツエルがカネズキに近付いた。
「あなたがカネズキ王ですね」
「ああそうだ。何だこの少女は? 王を前にして頭を下げぬとは常識がないな」
カネズキはツエルを見下すようにこう言った。シアンはカネズキの態度を見て、イラっとして近付いた。
「王様! その態度は何ですか!」
「うるさい! 私は王だ!」
カネズキは鼻息を鳴らし、偉そうにこう言った。シアンはその態度を見て、一度こいつを殴ってやろかと考えた。そんな中、バトル中のベーキウとジャオウが武器を振り回しながら王の前に入ってきた。
「うォォォォォ!」
「はァァァァァ!」
ベーキウとジャオウは叫び声を上げながら、相手に向かって攻撃をしていた。かなり集中していたため、周りのことを一切気にしてなかった。
「おわっ! 何だこいつらは!」
「ベーキウ! それとジャオウ! やっぱりいたのね!」
キトリの言葉を聞き、ベーキウとジャオウは我に戻って周囲を見回した。
「どこだここは?」
「俺たち、いつの間にか変なところに……」
「ここは私の部屋だ! 変なところとか言うな!」
苛立ったカネズキは、隠し持っていたハンドガンをジャオウに向けてこう言ったが、ジャオウは闇の魔力を発してハンドガンを破壊した。それを見たカネズキは驚き、目を開けた。
「そ……それは一体……」
「お前のような奴に話すことはない」
ジャオウはそう言って、ベーキウの方を見た。ベーキウはクレイモアを構え、ジャオウも大剣を構えた。
「ではいくぞ!」
「ああ!」
その後、ベーキウとジャオウは再び戦い始めた。それを見たカネズキは苛立ち、叫んだ。
「だから人の部屋で戦うなァァァァァ!」
戦いで熱くなっているベーキウとジャオウを無視し、シアンたちは王の間を調べていた。
「いい? どこかにあいつがドルセン前王を殺した証拠があるかもしれない」
「ベーキウとジャオウが戦っている今、ここを調べられるチャンスじゃ!」
「簡単に証拠があればいいんだけど」
シアンたちはこう言いながら、周囲を歩いていた。すると、ツエルは少し離れた所にある扉を見て、無意識にそっちに向かって歩き始めた。キトリはツエルが歩き出したことを知り、急いで近付いた。
「どうかしたの?」
「あの部屋が気になるんです」
「あの部屋ね。行ってみましょう」
その後、シアンたちはツエルが気になるという部屋に向かった。鍵は開いており、簡単に部屋の中に入ることができた。
「うげぇ、物置? ほこりまみれじゃぁ」
クーアは咳き込みながら、手を払ってこう言った。そんな中、ツエルは机の上を目にし、髪を使って机を調べた。すると、髪は机の中から日記を持ってきた。
「日記? 誰のかしら?」
「カネズキじゃないわね。あいつの性格上、日記をつけるような奴じゃないわ」
「確かにそうじゃのー」
そう言った後、シアンとクーアは笑い始めた。そんな二人を無視し、キトリとツエルは日記を広げた。すると、後ろから音が響いた。
「いったー。何よこの部屋? 天井がボロボロじゃない」
「不覚。こんな情けないことになるとは……」
聞き覚えのある声を耳にし、シアンとクーアは笑うのを止めた。落ちてきたのは、シアンたちから逃げていたアルムたちだったからだ。
「見つけたわ」
「年貢の納め時じゃ、覚悟しろ!」
シアンとクーアは魔力を開放してこう言ったが、ツエルは髪を使ってシアンとクーアを止めた。
「ちょっと静かにしてください。これ……お父様の日記です」
と言って、ツエルは日記を広げてシアンたちに見せた。その様子を見たレリルは、ため息を吐いてこう言った。
「あーあ、なんだか厄介な場面に遭遇しちゃったみたいねー」
ベーキウとジャオウが王の間で戦っているころ、ジャオウに追いついたノレパンはカネガタにばれないように王の間に忍び込んだ。
「さーてと、ここはカネズキのお部屋か。お宝が山のようにあるんだろうねぇ」
「そりゃーこの国の王だからな。一応な」
と、後ろからカネガタの声が聞こえた。ノレパンは恐る恐る後ろを振り向くと、そこには満面の笑みのカネガタが十手を持って立っていた。
「おわァァァァァ! カネガタのとっつあん! どうしてここに?」
「いずれお前はここにくるだろうと予測していたのだ! 逮捕だノレパン!」
カネガタはそう言って、手錠をノレパンにはめようとした。そんな中、カネズキは叫んだ。
「お前らいい加減にしろ! 人の部屋で勝手に暴れるなァァァァァ!」
カネズキの叫びを聞いたベーキウたちは、一瞬だけ動きを止めたが、またすぐに各々のやりたいことを始めた。カネズキは苛立ちながら、ベーキウたちを見て呟いた。
「この野郎……私は王なんだけどなぁ……言うことを聞けよ」
そう呟いた直後、部屋からシアンたちが現れた。シアンたちを見たノレパンは、カネガタを盾にするように前に出した。
「おいノレパン! 私を前に出すな!」
「助けてよとっつあん! 俺、勇者に命を狙われてるんだよー!」
「変なことをしたんだろ? 自業自得だ!」
「そんなことを言わないでよ、俺たちライバルじゃん」
ノレパンはそう言って、何度もカネガタに命乞いをした。ベーキウとジャオウは戦いの手を止め、シアンたちに近付いた。
「なぁ、何かあったのか?」
「ん? それは本か?」
「これはドルセン王の日記よ! 昔のことが鮮明に書かれていたわ!」
この言葉を聞き、カネズキは表情の色を変え、シアンに近付いた。だが、ベーキウとジャオウが武器をカネズキに向けた。
「何かやましいことでもあるのか?」
「大人しくしていれば、手荒なことはしない」
ベーキウとジャオウの言葉を聞き、カネズキは歯を食いしばりながら、後ろに下がった。様子が変わったと察したノレパンとカネガタは互いの顔を見て頷いて、シアンたちに近付いた。シアンはベーキウたちが近付いたことを察し、ページを開いた。
「えーっと……まずはどこから……」
「ここからにしましょう。私が読むわ」
と言って、レリルは日記を手にして口に出して読んだ。
「今日は愛しの妻と一緒にデートへ向かった。いつもはどこか出かけるたびに兵士たちが付いてくるのだが、今回は皆に内緒でデートだ。嬉しい。ようやく妻と二人きりになれた。本当に楽しく、気が楽だった。おかげで食べたいものも食べられ、見たいものも見ることができた。そして、町に住む人たちの生活をこの目で見ることができた。資料などで町人たちの生活の様子は語られるのだが、実際に自分の目で見ることが一番いい」
レリルの言葉を聞き、ジャオウは小さく呟いた。
「今の国王とはずいぶん違うな」
その後、レリルは笑みを浮かべながら話を続けた。
「デートの終わりはやはり大人なホテルで終わらせないといけない。毎日毎日仕事をしていたから、いろいろと溜まる。それは妻も同じであり、大人なホテルに入ったと同時に妻は私の予想を超えた派手な下着で私をベッドの上に押し倒し、そのまま」
「あー、あー! そこまで言わんくていい。余計だから」
このままだととんでもない展開になると察したシアンは、レリルの口を押えた。
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