復讐の鬼と化したヒロイン
ベーキウとジャオウが激しく戦っている時、先にモンパ一味と遭遇するために動いていたシアンたちは、城内にいた。
「あいつらはきっとどこかにいるはず。見つけたらギタギタのズタズタのボロボロの捨てられる寸前の雑巾みたいにしてやるわ!」
「あいつらを見つけたら、すぐにわらわかシアンに報告しろ! わらわはすでに魔力を開放しておる。いつでも暴れられるぞ!」
と、魔力と殺意と怒りを開放しているシアンとクーアは、キトリとツエルにこう言った。
「早くベーキウが合流しないかな」
バカ二人を見て、呆れたキトリはこう言った。そんな中、騒動を察して駆けつけた兵士たちが現れた。
「おや、シアン様! どうしてここに?」
「確か、門前払いされたはずじゃあ」
「戦力が欲しいでしょ? あんたらの事情はどうでもいいから、私たちもモンパ一味……もといノレパンの猿野郎を血祭りするわ」
「あの、戦いとかどうでもいいので、捕らえるだけでいいんですが」
「知らんわそんなこと! とにかく変な影を見つけたら、いの一番に連絡しろ!」
シアンとクーアは兵士にそう言って、ノレパンを探しに向かった。
一方その頃、アルムたちはジャオウとノレパンたちより先に城の中に潜入していた。今、アルムたちは薄暗い天井裏にいた。
「ノレパンさん、大丈夫かな?」
アルムが小さく呟くと、イジゲンが周囲を見回しながらこう言った。
「あいつのことは大丈夫さ。きっとあの仮面の剣士さんを連れて戻ってくる」
「そう簡単にジャオウは動きません。多分、あの人と決着がつくまで戦うと思います」
「そうかい。ま、仕事に差し支えがなければいいんだがな」
「しかし、今はノレパンが抜けた状態。奴がいないと、仕事がうまくできぬぞ」
ゴエゲートの言葉を聞き、レリルはため息を吐いてこう言った。
「あいつがいないと何もできないってわけ? その自慢の剣は何のために使うの? 障害物を真っ二つにするためにあるんじゃないの」
「この剣で対処できない場合は、ノレパンのピーキングでどうにかしている。あまり拙者の剣の腕を頼りにされては……うれしいけど、ちょっと緊張する」
ゴエゲートは壁を触りながらこう言った。そんな中、耳を澄ませていたミーネが、アルムたちにこう言った。
「城の中から強い魔力、そして殺意を感じるわ」
「きっと、シアンたちがここにいるんです。あなた方が潜入すると聞いて、この城にきたんでしょう」
「あんたらが派手に予告状なんてばらまくから、大事になったのよ」
レリルの言葉を聞き、イジゲンはタバコに火を点けながらこう言った。
「文句を言うならノレパンの奴に言ってくれ。でもま、予告状を出したメリットってもんがある」
「何よそれ? 相手の守りが固くなるだけじゃない」
「レリル殿の言う通り。だが、どんなに守りを固くしても、隙を突けばあっという間に守りを崩すことができる。それに、警備が多い部屋に宝がある。簡単に値打ちの宝がある場所を教えてくれるようなものだ」
ゴエゲートの話を聞き、レリルは目を丸くして驚いた。
「へー、そこまで考えてたの」
「多分な」
イジゲンの返事を聞き、レリルはずっこけ、アルムは呆れて冷や汗を流した。そんな中、レリルが下の部屋に落ちた。
「ちょっとレリルさん! 何やっているんですか!」
「しょうがないじゃないの! 予想以上に天井が薄かったんだもん!」
レリルは立ち上がって文句を言ったが、強烈な殺意と悪寒を感じた。恐る恐るレリルが後ろを振り向くと、そこには鬼のような形相で不気味な笑みを浮かべているシアンとクーアの姿があった。
「みーつけた」
「おい、ニンニク臭サキュバス。お前、何か事情を知っているな? 包み隠さずすべて白状しろ」
「ピィィィィィギヤァァァァァ! 化け物ォォォォォ!」
あまりの恐ろしさを感じ、レリルは飛び上がって天井に戻った。アルムは急いでレリルを引き上げたが、クーアが魔力を開放して火や水の光線を天井に向けてはなった。
「うわァァァァァ!」
「まずい、俺たちの居場所がばれた!」
「このまま逃げるわよ!」
アルムたちは急いで逃げ出したが、途中でシアンの首だけが現れた。
「うわァァァァァ!」
「逃がすかァァァァァ!」
シアンは天井裏に這い上がり、アルムたちを追い詰めようとした。その時、リボルバーを構えていたイジゲンが、シアンに向かって引き金を引いた。
「うわっ!」
大きな発砲音が響いたため、アルムは驚いて悲鳴を上げた。放たれた弾丸はシアンの前に着弾し、穴をあけた。
「あんた、わざと外したでしょ。舐めプでもしてんの?」
シアンは鬼のような形相でイジゲンにこう言ったが、イジゲンはタバコを吸いながらこう言った。
「こんな狭い場所でチャンチャンバラバラするつもりか? 剣を使えるもんならやってみろ。盾で防御できるもんならやってみろ」
イジゲンの言葉を聞き、イラっとしたシアンは剣と盾を手にした。
「それじゃあお言葉通り、チャンチャンバラバラやってやろうじゃないの! 私を舐めプしたことを後悔するんじゃねーぞォォォォォ!」
叫びながらシアンは襲い掛かった。レリルはイジゲンの後頭部を叩きながら叫んだ。
「バカバカバカバカバカバカ! 何挑発してんのよ! あいつの力、知らないでしょ!」
「理解しているさ。バカはバカにされると熱くなる。熱くなったら、周りのことが見えなくなるってな。ゴエゲート、俺の言っていることに間違いはねぇか?」
「まさに正論」
ゴエゲートがこう言った直後、突如アルムたちの足場が崩れた。シアンは下に落ちたアルムたちを追いかけようとしたのだが、足を引っかけてバランスを崩し、そのまま落ちてしまった。
アルムたちが落ちた場所は、廊下だった。後ろには兵士たちがいたのだが、ミーネが手にしていた煙玉で周囲に煙を発し、兵士たちの目をごまかした。
「いたぞ、モンパ一味だ!」
「うわっ! 煙で前が見えない!」
「ここに何かあるな」
「バカ野郎! 俺のケツを触るな!」
煙の中から、兵士たちの動揺する声が響いた。ガスマスクを装着していたアルムたちは、周囲を見回してある部屋に入った。ガスマスクを外したミーネが部屋を見渡すと、そこはガラクタ置き場だった。
「外れだったようだな」
イジゲンは近くに落ちていたコップを手にしてこう言った。それを見たミーネは、ため息を吐いてこう言った。
「そのコップ、レアな素材で作られているから、時価五百万ネカはするわね」
「ご……ごひゃ……五百!」
値段を聞いて驚いたイジゲンは、慌ててコップを丁寧に扱った。アルムは小さなランプで周囲を照らし、恐る恐るミーネにこう聞いた。
「それじゃあ、ここにある部屋って……」
「あいつらからしたらガラクタだけど、こっちから見たらお宝部屋よ。見てよこのネックレス。安い服屋で売られている奴と同じように見えるけど、素材が違うわ。多分、一千万ネカはするでしょうね」
「それじゃあこれは私が……」
レリルがネックレスを手にしようとしたが、ミーネはそれを袋に入れた。
「これは売るためよ! 皆、とにかく適当にこの部屋の中のお宝をこの袋の中にぶち込んで! なるべく丁寧にね」
「了解」
その後、アルムたちは丁寧に部屋の中のお宝を袋の中に入れた。そんな中、ゴエゲートは部屋の外から気配を察し、剣を手にしてドアノブに近付いた。
「敵だったら頼むわね、ゴエゲート」
「承知」
ゴエゲートはミーネにこう返事をし、ドアノブを回して扉を開けた。そこにいたのは、ツエルだった。
「あ……」
「あ」
ツエルと目が合ったゴエゲートは、時が止まったかのように動きが止まった。
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