ジャオウとの戦いはもう何度もやってるね
どさくさに紛れて城の中に入ったベーキウたち。目的としては、カネズキと会って過去のことを聞き出す。そして、ノレパンを血祭りにあげること。
「どこじゃノレパァァァァァン! 男なら潔く姿を見せろ!」
「けちょんけちょんのぐっちょぐちょにしてやるから覚悟を決めろォォォォォ!」
ヒロインが言ってはいけない言葉を放ちながら、シアンとクーアは走り回っていた。それを見たベーキウは、小さく呟いた。
「これじゃあ潜入した意味がないじゃないか」
そう呟くと、ベーキウはある気配を感じて立ち止まった。一緒に走っていたキトリとツエルは、立ち止まったベーキウを見て口を開いた。
「どうかしましたか?」
「あいつらがいるのね」
キトリの言葉を聞き、ベーキウは頷き、ツエルは意味が分からないと言いたそうに首をかしげた。
「私たちが追っている人たちがここにいるのよ。どうしてここにいるのか分からないけど……」
「キトリ、シアンとクーアを任せる。俺はジャオウと戦う」
「うん。分かった。気を付けてね」
「やばくなったら負けを認めて逃げるよ」
ベーキウの返事を聞いたキトリは、ツエルと一緒に走り出した。走る中、ツエルはキトリにこう聞いた。
「あの、ジャオウって一体誰ですか?」
「私たちが追っている敵……のような人。何の目的で動いているか分からないけど」
「強いのですか?」
「うん。だけど、私たちもこの旅で経験を積んで強くなった。今なら、ベーキウだけでも大丈夫だと思う」
キトリの返事を聞き、ツエルは不安そうな目で後ろを振り向いた。
ベーキウは目を閉じ、集中して周囲の魔力を感じていた。兵士たちが慌てるせいか、周囲から感じる魔力はかなりぶれていた。だが、この中で一つだけ、感じたことがあり、強い魔力を探知した。
「奴がいる!」
ベーキウは目を開き、急いでその魔力の元へ向かった。
一方、ジャオウは大剣を手にし、その場に立ち止まった。
「ちょちょちょ、なーにやってんのよジャオウちゃん! 城に潜入するぞ!」
ノレパンは立ち止まったジャオウを動かそうとしたのだが、アルムとレリルが前に立った。
「強い敵がいます。ここはジャオウに任せてください!」
「敵のことはジャオウに任せるのよ!」
「そんなこと言ったって……」
「あーだこーだ言ってる場合じゃねーぜ、ノレパン! 敵さんが気付きやがった!」
イジゲンが慌てながらこう言った。ノレパンは周囲を見回すと、自分たちの潜入を察した兵士たちが、走って追いかけてきているのだ。
「あーりゃま。こりゃ大変! ジャオウちゃん! 後で迎えにくるからー!」
ノレパンは大声でジャオウにそう言った。その言葉を聞いたジャオウは、静かに頷いた。
それから数分後、ジャオウの前にクレイモアを持ったベーキウが現れた。
「奇襲をしないんだな」
「構えている相手に奇襲しても、無駄だろ」
「ふっ、それはそうだな」
ベーキウとジャオウは短い会話を交わした後、互いの武器を構えた。
「ガラス王国で決着がつかなかったんだ。ここでお前との決着をつける」
「同感だ。いろいろと事情がある。最初から本気でやらせてもらうぞ!」
ジャオウはそう言うと、魔力を開放してベーキウに接近した。ベーキウはクレイモアを下から振り上げ、ジャオウの攻撃を受け止めた。
「うぐっ!」
ジャオウは大剣から強い衝撃を感じつつ、後ろに下がった。ベーキウは大きく踏み込み、勢いを付けてクレイモアを振り下ろした。強い攻撃がくると察したジャオウは、魔力のバリアを張ってベーキウの攻撃を受け止めた。
「ぐうっ!」
防御されたと察したベーキウは、後ろにジャンプして下がった。だが、後ろに下がると予測したジャオウは左手を上に振り上げ、地面から闇の衝撃波を放った。
「なっ!」
下から魔力の攻撃がくると予想していなかったベーキウは、身構えることなくこの攻撃を受けて吹き飛んだ。地面に着地したベーキウはすぐにクレイモアを構え、魔力を開放した。
「魔力を使っていいんなら、こっちも使うからな」
「好きにしろ」
ジャオウはそう言って、周囲に闇を発した。ベーキウは走り出し、一気にジャオウに近付いて攻撃を仕掛けようとした。だが、ベーキウに向かって周囲の闇から弾丸が放たれた。
「喰らうかよ!」
ベーキウは走る勢いを落とさず、飛んでくる弾丸をかわした。その動きを見たジャオウは驚き、体が固まってしまった。
何! 無数に飛んでくる弾丸をかわし、近付いてくるだと! 俺が放つ弾丸は隙がないように放っているはずなのに!
と、ジャオウは心の中でベーキウの身体能力を評価していた。そんな中、ジャオウに接近したベーキウは力を込めてクレイモアを振り下ろした。クレイモアの刃はジャオウの仮面に当たり、ヒビを付けた。
「あぐあっ! ぐうっ!」
攻撃を受けたジャオウは後ろに下がり、割れた仮面を手で押さえた。
「まさか……ここまで強くなっていたとは」
「まーな。次の攻撃で、ヘンテコな仮面をぶっ壊してやるぜ」
ベーキウはそう言って、クレイモアを構えた。ジャオウは仮面を左手で押さえたまま、魔力を開放した。
「もう少し本気を出さないと、お前に倒されるだろう。俺を本気にさせたお前が悪いのだからな!」
と言って、ジャオウは右手で大剣を手にし、ベーキウに斬りかかった。威力が高い攻撃だが、右手だけで重たい大剣を振るのは無理があった。攻撃時の態勢のバランスに無理があることを察したベーキウは、この攻撃をかわして隙だらけのジャオウに攻撃を仕掛けていたのだ。
「グウッ!」
「右手だけでそんな重たい剣を……振り回せるはずがないだろうが」
ベーキウはそう言いながら、ジャオウの仮面に向かってクレイモアを振るっていた。だがそんな中、突如何かが上から落ちてきて破裂した。
「うおっ!」
「何だ!」
予想外の展開に驚き、ベーキウとジャオウは後ろに下がった。その直後、周囲に煙が発生した。
「うげっ! ごほっ、ごほっ!」
「これは……まさか、ノレパンか!」
「そのとーりでごぜーます」
上からノレパンが現れ、ジャオウの手を握った。握られた感触を感じたジャオウは、ノレパンの方を向いて叫んだ。
「おいコラ! 戦いの邪魔をするな!」
「後でいろいろと考えたんだけど、やっぱり個人で勝手に動くのは止めろってミーネちゃんが言ってたんだよ。悪いけど、戦いはお預け」
「何? そんなことを……」
「戦いはあとで好きなだけやりゃーいいじゃん。ほいじゃ、またね、ハンサムさん」
ノレパンはそう言って、ジャオウを連れて去って行った。ベーキウは煙玉を払い、すでにジャオウとノレパンが姿を消したことを察し、ため息を吐いた。
一方その頃、ノレパンに連れられたジャオウは、暴れていた。
「戦いの邪魔をするな! 俺はまだ負けてない!」
「そんなこと今はどーでもいいの。今はお宝探しの途中でしょーが」
「あいつを倒さねば、邪魔をされるぞ!」
「邪魔されたら俺がどうにかするから安心してちょーだい」
「安心できるか! ふんぬっ!」
ジャオウは無理矢理ノレパンの拘束を解き、ベーキウの元へ向かって移動を始めた。ノレパンは勝手に動いたジャオウを見て、驚いて声を上げた。
「あああああ! あの子ったら、勝手に動いちゃってもう!」
ノレパンは仕方ないと思いつつ、ため息を吐いてジャオウの後を追いかけた。
ベーキウは仕方ないからシアンたちの元に戻ろうかと考えた。だが、ジャオウの魔力を感じ、まだ戦う意思があることを察し、その場に残った。
まだやるつもりか。それならとことん、どちらかが倒れるまで戦ってやる!
ベーキウはそう思い、背中のクレイモアを手にした。
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