思惑が入り混じった城の中
ゴルマネー国の城の中、いつモンパ一味がくるか分からないため、カネズキはそわそわしていた。
私の隠し財産があいつらの狙いだったら……クソ! あいつらはどこで私の隠し財産のことを知ったのだ? もしや、城内にあいつらのスパイが? いやいや、城内にいる兵士たちは皆私を信頼している。だからこそ、兵士にしたのではないか。あいつら……ではないよな。
などと、カネズキはいろいろと考えていた。そんな中、カネガタが王の間に入ってきた。
「カネズキ王。今、兵士たちが持ち場に付きました」
「そうか。で、今のところ様子はどうだ?」
「変わったところはありません。常に部下からの連絡が耳に入るように、イヤホンをしています。連絡がないので、まだ奴らはこの城にはいませんね」
と、カネガタは耳に付けてあるイヤホンを見せながらこう言った。
「そうか。では守りを任せたぞ」
「お任せあれ」
カネガタは丁寧に頭を下げ、王の間から出ようとした。だが扉前で立ち止まり、カネズキの方を振り返ってこう言った。
「そういえば部下が言っていたんですが、勇者パーティーが戻ってきたようです」
「私も耳にした。それがどうした?」
「どうして彼らをこの城の護衛に誘わなかったんですか?」
カネガタの質問を聞き、カネズキは動揺しつつもこう言った。
「一度、モンパ一味に騙されたんだ。また、騙されるに決まっているじゃないか」
「では、私は幸せ者です」
「どうしてだ?」
「何度もモンパ一味と戦い、敗北しています。なのに、ずっとこの城で働いています。勇者パーティーは一度の敗北で信頼しないのに、どうして私は信頼するんですか? 戦闘力で言えば、彼らの方が上だろうに」
この言葉を聞き、カネズキは少し間をおいてこう答えた。
「や……奴らは……その……まだ若い。それに、モンパ一味との戦いも経験が浅い。何度も戦ったお前の方が、信頼度が高い」
「嬉しいお言葉ですね。あ、そうだ。部下が言っていましたよ。十七歳ぐらいの女の子が同行していたって」
「それがどうかしたか?」
「確か、前の王のドルセン王の娘も、生きていればそのくらいの歳ですよね。今は解呪のために、森のどこかにある魔女の塔で暮らしていると聞いていますが……」
カネガタが話を続ける途中で、カネズキは持っている杖で床を強く叩いた。
「下らん話はあとにしてくれ! 今、どんな状況かは君が一番把握しているはずだ!」
「申し訳ございません。では、戻ります」
カネガタはそう言って、王の間から去って行った。扉の外で話を聞いていたカネガタの部下は、不安な顔でカネガタに近付いた。
「話を聞いていました。カネガタさん、どうして変なことを聞くんですか?」
カネガタは周囲を見回し、部下にこう言った。
「もし、君が王の立場だったら、一度敗北したとしても勇者パーティーに助けを求めるか?」
「そりゃー求めます。だって強いんですよ」
「だが、あの人は助けを求めなかった。会えない状況と言って嘘を言ってな」
「嘘を言って? どうしてですかね?」
「それは分からん、あの人しか知らない。ここだけの話だ。私はあの人に忠誠を誓っていない」
カネガタの言葉を聞き、部下は思わず声が出かかったが、何とか抑えた。
「私は前国王、ドルセン王に忠誠を誓っていた。だが、あの人は死んだ」
「ええ……急でしたよね」
「ああ。本当に急だった。人は簡単に死ぬと聞くが、あれは簡単すぎる。何か、裏があると思ってあれからずっと考えていた」
「じゃあ……ドルセン王は……」
「推測だが、カネズキが殺した可能性がある。ここだけの話だ。勇者パーティーと一緒にいた少女が、鍵だと思う」
「そうですか……」
カネガタは時計を見て、部下にこう言った。
「おっと、時間を使ってしまった。私たちも持ち場に付こう」
「了解しました」
カネガタは部下と一緒に、持ち場へ向かって走り始めた。
ノレパンは城が見える建物の屋根の上にいた。背負っていたリュックを下ろし、中を探り始めた。
「あの、何を出すんですか?」
「俺ちゃんお手製の煙玉よ」
ノレパンはウインクをしながらアルムに答えた。そして、それを城に向かって投げた。
「おい、煙玉が城の中までに届くのか?」
不安な声を発したジャオウだったが、ノレパンは笑いながらこう答えた。
「だーいじょーぶよ。城の中に入れる隙を作るだけ」
こう答えた直後、ノレパンが投げた煙玉が破裂した音が響いた。それからすぐ、城からサイレンが響いた。
「うっし。行くぞ皆!」
ノレパンの声を聞き、ジャオウたちは急いで城に向かって飛んだ。
一方その頃、ベーキウたちはどうやって城に入ろうか考えていた。
「うーん。やっぱり守りは固いわね」
「壁をぶっ壊したら、サイレンが鳴りそうじゃの」
クーアは壁を触りながらこう言った。物騒な言葉を聞いたベーキウは小さな声でそんなことをするなと言ったが、突如サイレンが響いた。
「ちょっと! 壁を触ったからサイレンが鳴ったんじゃないの?」
「何やっているのよおばさん!」
シアンとキトリから罵倒されたが、クーアは慌てながらこう言った。
「わらわじゃない! わらわじゃない! わらわは悪くねぇ、わらわは悪くねぇ! サイレンが鳴った時は、壁から手を放していたのじゃ!」
「では、このサイレンって……」
ツエルが周囲を見回すと、城の門の前で煙が発している光景を目にした。
「あー! あれって火事じゃないですか?」
「火事? おわっ! 何だあの煙!」
「もしかして、ノレパンがやったんじゃないの?」
シアンはそう言って、剣を手にした。ノレパンと言葉を聞いたクーアは魔力を開放し、笑い声を発した。
「見つけたぞノレパン! 今日こそお前の息の根を止めてやるのじゃ!」
「悪人のようなセリフを言うの、やめてよね」
キトリはクーアにこう言ったが、この言葉はクーアに届かなかった。その後、シアンとクーアは怒声を発しながら煙が発した場所へ向かった。
「ああもう、滅茶苦茶だよ」
「でも、この騒動に紛れて城の中に入れるではありませんか。少しはポジティブに考えないと」
ツエルはそう言って、シアンとクーアを追いかけた。ベーキウとキトリは顔を見合わせ、ため息を吐いて走り始めた。
門の前では兵士たちの声が飛び交っていた。
「何だ急に!」
「誰がこんなことをしたんだ!」
「ノレパンか? あいつの仕業か?」
「煙を吸い込むな! ゲホッ! ゲホッ! 毒があるかもしれないぞ!」
「毒があったとしたら、俺たちもうお陀仏だね」
「うわーん! 死にたくないよー!」
兵士たちの声が飛び交う中、モンパ一味とジャオウたちは隙を見て城内に潜入した。
「ぬっふっふ。大成功大成功」
「間抜けは一日じゃ治らないな」
「鍛錬が足りぬ証拠」
「まともに鍛えてないから、いざって時に役に立たないのよね」
モンパ一味は動揺する兵士を見て、こう会話をしていた。ジャオウは周囲を見回し、ノレパンにこう聞いた。
「で、俺たちは何を盗むんだ?」
「ま、とりあえず適当に目に入ったお宝をがっつり頂くだけよ。高そうな宝石やアクセサリーがあったら、手あたり次第手にしてちょーだい」
「じゃあ、私も何か貰っていいのね?」
目を輝かせたレリルがこう言ったが、ミーネはため息を吐いて答えた。
「私たちの目的はそれらを売り飛ばして、恵まれない人に金銭を与えること。宝石なんて身に着けても、おしゃれとは言えないわ」
「えー」
「えー、じゃないの。それに、高価な服や宝石を身に着けてもおしゃれとは言えないわよ。高価なものを身に着けておしゃれって言っている奴は、ただの見栄っ張りよ。身に着ける衣服があるだけで幸せだって思わないと」
ミーネがこう言った後、突如足を止めた。ジャオウは何かしらの気配を察し、背中の大剣を手にした。
「あいつらがいる」
その言葉を聞いたアルムは、ベーキウたちがここにいることを察した。
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