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スリ師を捕まえろ!


 ベーキウからスリを行った男は、走りながら手にしている袋を見て、にやりと笑っていた。


 ケケケケケ。あいつら田舎もんか? 楽に仕事ができたぜ。


 スリ師の男は心の中でそう思いながら、走り続けた。この時の彼は知らなかった。それから数分後に、地獄を見ることを。




 スリの被害にあったことを察したベーキウは、すぐに周囲を見回した。だが、スリを行った男の姿はなかった。


「とにかくあの男を探そう。服装は覚えているか?」


「うん。脳裏に焼き付けたよ」


「今すぐ追いかけて血祭じゃ!」


 魔力を解放しながらクーアがこう言った。キトリは暴走するクーアを抑えながら、ベーキウにこう言った。


「皆で探したら時間がかかる。ここは別々に探そう」


「キトリの案に賛成」


 シアンの言葉を聞いたクーアは、珍しそうな目でシアンを見た。だが、シアンは続けてこう言った。


「それじゃあオバハンとクーアは一人で探して、私はベーキウと一緒に探すわ」


「バカ言ってないで。一人ずつで探すのよ。一人だけベーキウと組んで変なことをしようとしないで」


 クーアはシアンの両の頬を強くひねりながらこう言った。その後、ベーキウたちは個別でスリ師を探すことにした。




 シアンはクーアに引っ張られた頬をさすりながらスリ師を探していた。


「いったいなー。クーア、もう少し手加減してもよかったのに」


 そう呟きながら、シアンは周囲を見回していた。さっき言ったように、シアンはスリ師の服装や体系、髪形を覚えている。だが、男は逃げるために変装する可能性があるとシアンは考えていた。そのため、素早く探し出そうと考えていた。


 走って探すのは面倒。ここは上から探す。


 そう思い、シアンは魔力を解放して高く飛び上がった。町の上空からスリ師を探すことにしたのだ。行動してすぐ、シアンはスリ師の男を見つけた。


「みーつけた!」


 見つけた直後、シアンは猛スピードでスリ師の男に近付いた。


 一方、シアンが接近してくることを知らないスリ師の男は、袋の中を見ていた。


「何だこりゃ? 金になりそうな物はなさそうだな。どこかに素材を売る店があったはずだが……」


 袋の中を見てそう呟く中、上空からシアンが接近し、男に向かって飛び蹴りを放った。


「ウオッチャァッ!」


 飛び蹴りを受けた男は壁に激突し、めり込んでしまった。男はすぐに壁から離れようとしたが、シアンは男の頭を掴んだ。


「オイゴラァ! よくも私たちの持ち物をパクろうなんて考えたわね。半殺し以上の目に合うことを覚悟して歯を食いしばれ!」


「ヒッ! ヒェェェェェ!」


 男はシアンを突き倒し、袋をシアンに投げて返して逃げた。


「あっ! 待てコラ!」


 シアンは袋を手にし、男を追いかけようとしたのだが、騒動を聞きつけた野次馬がシアンの周囲に集まってしまった。


「どうかしましたか?」


「かなり感情的になってますが」


 心配している野次馬に大丈夫だと伝え、シアンは立ち上がって周囲を見回したが、男はいなかった。




 シアンから逃げたスリ師の男は安堵の息を吐き、人がいない場所で身を潜めていた。


 人混みに紛れて逃げよう。それまで、ここで待機だ。


 男は人混みができるまで、安全な場所で待機することを選択した。それからしばらくし、人混みができた。それを見た男は人混みの中に入り、安全な場所へ行こうとした。


 だが、男の予想は大きく外れることになる。人混みの中から手が伸び、男の肩を掴んだ。触感に気付いた男は後ろを振り返り、不気味な笑みを浮かべるクーアを見て悲鳴を上げた。


「みーつけた! 人混みの中に混じって逃げようだなんて思わない方がいいぞ!」


 クーアは男の肩を掴んだまま、魔力を解放して高く飛び上がった。


「オワァァァァァ! こ……ここから落ちたら……」


「間違いなくお前はペッチャンコになるなぁ」


 そう言いながら、クーアは魔力を解放したまま自由に空を飛び回った。


「ほーれほれほれ。まるでジェットコースターだろ?」


「イギャァァァァァ! た……助けてくれェェェェェ!」


「スリ師のようなバカの言うことをわらわが耳にすると思っているのか? 大バカ者が! お前は自らの罪を悔いながら空の旅を楽しむがよい!」


 スリ師の男の悲鳴を聞きながら、クーアはスピードを上げて空を飛び回った。


「アッハッハ! 楽しいじゃろ? 空の旅は! まだまだ旅は続くぞ、もっと楽しむがよい!」


 怒りで変なテンションになっているクーアだったが、途中で男の悲鳴が止んだことを察した。


「あり? 声が聞こえない。気を失ったか?」


 クーアは男の肩を掴んでいる左手を見たが、そこに男の姿はなかった。


「あ……ヤベ」


 どこかで男を落としたと察したクーアは、急いで下に戻った。




「アアアアアアアアアア!」


 空から落ちる男は、悲鳴を上げることしかできなかった。そんな中、空から落ちる男を見た少年が、近くにいる大柄な男性にこう言った。


「親方! 空から変なおっさんが!」


「なーにー? そんな変なもん見ている暇があるなら手を動かせ!」


「あれ、助けなくていいの?」


「ほっとけ! ギャグ作品の人間が高所から落下して死ぬわけがないだろ!」


「そうだね」


 会話の直後、落下中の男は地面に激突した。周囲に煙が舞う中、男はめり込んだ地面から這い上がった。


「この作品がコメディじゃなかったら、俺は死んでたぞ……」


 そう呟きながら、男は立ち上がった。服の汚れを手で払い、周囲を見回して安全な場所を探した。だが、落下した時の騒動で人が集まっている。ベーキウたちがこの騒動を知って集まるだろうと察した男は急いで逃げた。だが、突如足元から黒い檻が現れた。


「な……何だ!」


「やっと見つけたわ」


 そう言いながら、キトリが空から現れた。男は急いで檻を壊そうとしたのだが、檻に手を触れた瞬間に高熱を感じた。


「おあっちゃァァァァァァァァァァ!」


「この檻はとても熱いよ。素手で触れたら、火傷するわよ」


「そんな物騒な檻を作るな!」


「うるさい。それより、私たちから盗んだ物を返して」


「それならお前の仲間に返したわ! まさか、お前らがバケモン並みに強いなんて……」


 男は観念して、その場で項垂れた。これ以上男は何もできないと考えたキトリは檻を解除し、項垂れている男に近付いた。


「観念したわね」


「はい」


「それじゃあ、じっとしてて」


 キトリはそう言って、闇の魔力で男の手足を封じた。




 ベーキウは裏道を中心にスリ師の男を探していた。人通りが少なく、隠れる場所がある通りにいるだろうとベーキウは考えていた。だが、男はいなかった。


 もしかして、誰かが捕まえたのか?


 シアンたちの誰かが男を捕まえたと思い、ベーキウはシアンたちと合流しようと考えた。しかし、途中で女性の悲鳴が聞こえた。


「どうした!」


 悲鳴を聞いたベーキウは、急いで声がした方へ向かった。しばらくすると、ベーキウは黒い服装の何者かに囲まれた女性を見つけた。


「おいお前ら! そこで何をしているんだ!」


 ベーキウは背中に担いであるクレイモアを手にしながら黒い服装の何者かに近付いた。その時、女性はにやりと笑って手にしていた袋を開けた。その袋の中から、桃色の霧が発した。


「な……何だ!」


 突如発生した桃の霧を振り払おうとしたベーキウだったが、遅かった。桃色の霧はベーキウの鼻や口からベーキウの体内に入ってしまったのだ。


「お……お前たちは……一体……」


 薄れゆく意識の中、ベーキウは女性たちを見てこう言ったが、しばらくしてベーキウは意識を失い、倒れてしまった。倒れたベーキウを見た女性はにやりと笑い、立ち上がってこう言った。


「作戦成功。この男の正義感が強くてよかったわー。それでイケメン。ウフフッ、もろ私のタイプ。これでこの男は私だけのもの」


 女性はそう言って、服を投げ捨てた。女性の腹の下には、サキュバスだけにしかない紋章が描かれていた。


「では、アジトに戻りましょう。レリル様」


「ええ。それじゃ、あんたらはこの男を任せたわ」


 この言葉を聞いたレリルの部下は、一斉に文句を言った。


「レリル様も手伝ってくださいよー」


「俺たちに重い荷物を任せないでください。あんたも手伝ってよ」


「男のケツを持っても嬉しくありませんよ」


 文句を言う部下に対し、レリルは恐ろしい形相で睨んだ。


「女の子の私に重い男を持たせるつもりなの? 力仕事は男の出番でしょうが」


「あんたは女の子って歳じゃないでしょうが。皆知ってますよ、あんたは自分で十八歳とか言っているけど、本当は二十歳越えてるって」


「今度そのことを言ったら股間を蹴るわよ! いいから早くアジトに戻るわよ!」


 レリルが怒鳴りだしたため、部下たちは慌ててベーキウを担いでアジトへ戻って行った。


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