迷って森の中
モンパ一味を追いかけていたベーキウたちだったが、逆にモンパ一味が仕掛けた罠に引っかかり、いろいろとアクシデントが発生した。今、ベーキウたちは何故か森の中にいた。ベーキウは周囲を見回し、ため息を吐いた。
「俺たち、いつの間にか森の中に入っていたんだ。にしても、どうして……」
「あの猿顔、ふざけたことをするわね。これ、見てよ」
シアンは服についていたガムのようなものを手にし、ベーキウたちに見せた。キトリはそれを見て、不審そうにこう聞いた。
「もしかしてこれ、煙玉の発生元なの?」
「ええそうよ。よく見て、ガムみたいな物体の上に、紙があるでしょ?」
「理解した。煙が発生する道具をシアンにくっつけた。そのせいで、わらわたちの周りで煙が充満したんじゃろ?」
「そうか。煙玉だから、その場に残るってイメージがあるから……」
「あいつらの姑息な手に引っかかったわね。あー、むかつく!」
シアンは怒りの声を発した。その時、木の上から巨大な蛇が現れた。
「おわっ! いきなり蛇が襲ってきた!」
「あいつはデカグチアナコンダ。いろいろ飲み込むわ、歯には毒があるわでかなり厄介な蛇のモンスターよ!」
「やられる前にやってやるわ!」
クーアは魔力を開放し、炎の刃を発してデカグチアナコンダを攻撃した。攻撃を受けたデカグチアナコンダは急いで期の上に戻ったが、攻撃の時に発生した音を聞き、周囲にいろんなモンスターが現れた。
「餌がきたって勘違いしているのかしら?」
「違うじゃろう。眠っていたのを邪魔したから怒っているのじゃ」
「話をしている暇はないわよ。どちらにしろ、あいつらは私たちを倒すつもりよ!」
キトリが叫んだ直後、モンスターたちはベーキウたちに襲い掛かった。ベーキウはクレイモアを手にし、目の前に迫ったムカデのモンスターを斬り倒した。
「ムカデのモンスターなぁ……ヒャクアーシを思い出す」
「今倒したのはヒャクアーシの仲間よ。でも、毒の強さはヒャクアーシの方が上よ」
シアンは巨大な蛾を相手にしながらこう言った。キトリは闇で作った槍を振り回し、周囲のモンスターを攻撃していた。闇の槍は威力が高いのだが、モンスターの数が多すぎるせいで、キトリは徐々に疲れを感じた。
「敵の数が多すぎる」
「こうなったら、わらわの魔力で一掃してやるのじゃ!」
と言って、クーアは魔力を開放した。強すぎるクーアの魔力を感じ、慌ててベーキウは叫んだ。
「おい! これだけ大きな魔力だと、火事になる可能性があるぞ!」
「大丈夫じゃベーキウ! 火や雷を使って戦わん! わらわが使うのはこれじゃァァァァァ!」
クーアは叫びながら、両手から氷柱を発した。固く、鋭い氷柱はモンスターに向かって落下し、次々と倒していった。大量にモンスターを倒すクーアを見て、シアンは心の中でこう思った。
このままだと、おばさんが目立ってしまう。私も勇者として、頑張らないと!
そう思ったシアンは、剣と盾を構えて巨大な紫色の毛虫に向かって走り出した。巨大な紫色の毛虫を見たキトリは、驚いて叫んだ。
「あれはポイズンワーム! あいつは大人しいけど、危機を感じたら全身の毛を飛ばすわ! その毛には、毒が入っているわ!」
「知ってるから大丈夫! 何度も戦ったから、対策は知っているわ!」
シアンは大声で返事をした。その直後、ポイズンワームは全身の毛を飛ばした。ポイズンワームの毛が刺さった蛾のモンスターは、地面に落ちて体を震えさせた。それからしばらくして、一生動かなくなった。それを見たベーキウは、ポイズンワームの毒が一瞬で死に至ることを知った。
「こりゃまずい……シアン、気を付けろ!」
ベーキウはシアンの方を見てこう言ったが、シアンは盾を使って飛んでくる針を防御していた。そして、ポイズンワームに近付いたシアンは、ポイズンワームの額に向かって剣を突き刺した。
「悪いけど、こっちも死にたくないからね」
シアンがこう言うと、ポイズンワームは奇声を発し、紫色の血を流しながらその場に倒れた。
その後、ベーキウたちは無事にモンスターの群れを倒すことに成功した。だが、モンパ一味との激闘の後のため、余計な魔力と体力を使ってしまい、かなり疲れてしまった。
「こりゃ……やばい」
「早くこの森から出ないと危険じゃのう」
「このままだと、またモンスターに襲われるわ」
「どこかに道があればいいんだけど……ん?」
シアンは何かを見つけ、目をこすった。ベーキウはシアンの様子を見て、何かを見つけたと察した。
「何か見つけたのか?」
「一瞬だけ光が……あ、あそこ」
シアンは手を動かし、遠くに見える光景をベーキウたちに見せた。
「んー? これは……光か?」
「どこかに建物があるのかな?」
金色の光を見たクーアとキトリは、心の中で安堵した。
「誰かがいるんだ。助けてもらいましょう」
「そうだな。このままだと、全滅する可能性が高いからな」
シアンの提案を聞き、ベーキウたちは頷いた。その後、ベーキウたちは光を辿って歩き始めた。
「でも、こんな森で誰が住んでいるんだろう?」
「とにかく歩こう。歩き続けたら分かるはずだ」
ベーキウたちは話をしながら歩き続けた。モンスターに襲われることもあったが、残る力を振り絞って戦った。数分後、ベーキウたちは大きな塔の前に到着した。
「こりゃまた立派な塔」
「誰がいるか分からないが……とにかく助けてもらおう」
シアンとベーキウがこう言った後、クーアが扉の前の扉を叩いた。
「夜分遅くにすみません。実は迷ってしまいまして、できたら一晩休ませてくださーい」
クーアはこう言ったのだが、返事はなかった。
「夜中だから、寝ているのかしら?」
「キトリ、ベーキウが言ってたあれを見なさい。まだ起きているわよ」
シアンは窓から照らされている光を見て、キトリにこう言った。ベーキウは少し考え、シアンたちにこう言った。
「起きているのに返事はない。外に出れない事情があるのか?」
「にしても、迷って困っているわらわたちを放置するのは人としてどうかしておる。ちょっと乱暴じゃが……」
クーアはドアノブを回し、扉を動かした。すると、扉はゆっくりと動いた。
「鍵がかかってないのか。不用心じゃのう」
「おいおい、勝手に入ったらまずいぞ。いくら勇者パーティーでも叱られるよ」
ベーキウがクーアにこう言うと、突如中から矢のようなものが飛んできた。クーアはそれを手で受け止め、何が飛んできたのか見た。
「魔力で作られた矢か。それなりに魔力を使える奴が住んでいるというわけか」
「あんたらが誰なのか分からないけど、逃がさないよ」
と、中から女性の声が聞こえた。その直後、無数の矢がベーキウたちに襲い掛かった。
「荒い人だなー。人の話を聞く前に攻撃を仕掛けるなんて」
シアンはベーキウたちの前に立ち、バリアを張った。魔力の矢はバリアに命中し、次々と折れ、消滅した。
「グッ……強い奴だね……だけど、私には守りたいものがあるんだよ!」
そう言いながら、中にいた女性がシアンに襲い掛かった。シアンは攻撃をかわし、女性を睨んだ。
「守りたいものとかどうでもいいけど、休ませてくれない? さっきの話、聞いてなかったの?」
「あんな嘘話、誰が信じるものか」
女性はそう言って、魔力を開放した。その魔力を感じたクーアは、急いでシアンに近付いた。
「おいシアン、こいつ結構強いぞ。一人で戦える相手ではない」
「で、手を貸してくれるの?」
「強敵が相手じゃ。一緒に戦うしかあるまい」
シアンとクーアは女性を睨み、戦いの構えを取った。
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