モンパ一味のお話
高価なソファーやじゅうたんを直に触れ、動揺しているベーキウたちを見て、カネズキは心の中でこう思っていた。
ワシの裏のことなど、こんなバカなガキが察することがないだろう。さて、本題に入ろう。
その後、カネズキはシアンの名を呼び、近くにいた兵士に資料を渡すように告げた。
「今から渡す資料に目を通してもらいたい」
「これ、何の資料じゃ?」
「今、この国を騒がせている盗賊の一味についてです」
「盗賊?」
キトリはこう言って、資料に目をやった。
「えーっと……窃盗団、モンパについての資料か……」
キトリは資料を見て、モンパ一味について調べた。
モンパ一味は四人組の窃盗団である。盗賊なのだが、貧民から物は奪わず、高取得者ばかりを狙って窃盗を犯す野蛮人である。兵士たちや、兵士たちをまとめるエリート兵士、カネガタ氏でも彼らを捕まえることはできない。何度か捕まえることができたのだが、彼らはそのたびに脱走を繰り返す。
メンバーについて紹介する。
最初はリーダーであるミーネ。エルフの女性、使う魔力は全属性。武器はナイフを使っている。年齢は百を超えているのだが、男を魅了するボディは若い女性と変わらない。長い経験で男をどうやって口説き落とすか理解しており、我が国の兵士も何度も彼女の誘惑に負けた。
次に紹介するのはメンバーの一人、ノレパン。人族の男性であり、使う魔力は水であること以外分からない不思議な男。決まった武器は持っていないが、彼は変装や潜入のプロである。変装は誰も気が付かないほどそっくりで、声色も変えてしまうため、変装した人物と同じ声を出すことができる。そして、彼はいろんな道具を体のどこかに持ち込んでいて、捕まえる寸前にジェットを噴射する靴や、フックショットが隠されているリュックなどを持っている。
次に紹介するのは狙撃手のイジゲン。ドワーフの男性で、魔力は火。武器はリボルバー。射撃武器に関する知識はあるのだが、彼はリボルバーを愛しているのか、ずっとリボルバーを使っている。狙撃の腕は優秀で、遠く離れた獲物でもリボルバーで仕留めてしまう。彼はいつもノレパンと行動し、彼に危険があったら、すかさずにリボルバーを抜く男。
最後に紹介するのは凄腕の剣士、ゴエゲート。人族の男性で、使う魔力は雷。持っている武器は居合刀。彼に関しての過去の記録があるため、ここに書いておく。父親は不明。母親は事故で死去。一人ぼっちになった彼を、ミーネが保護したと言われている。彼は自称見習いと言っているが、剣の腕は我が国の兵士よりも上であり、何度も彼の剣によって兵士たちが倒された。
以上でメンバーの紹介を終える。
資料を見終えたキトリは、資料を手元に置き、カネズキにこう聞いた。
「彼らはいつ行動するんですか?」
「朝昼晩関係なしに動きます。ですが、いつ現れるか分かりません」
「出てくる時間はランダムなのか。いつ出てくるか分かれば、しばきに行けるのにの」
クーアは資料を読み終え、ジュースを飲んでこう言った。話を聞いていたベーキウは、察したような表情でカネズキにこう言った。
「話は分かりました。俺たちにモンパ一味を倒してほしいんですよね」
「その通りです。兵士たちも何度もモンパ一味と戦いましたが、彼らの方が上手なので……ですが、タダでやらせるわけにはいきません。倒してくれたら、報酬も用意します」
カネズキはこう言ったが、シアンはため息を吐いて口を開いた。
「すみません。私たちはある物を探しにここに立ち寄りました。勇者である以上、盗賊騒ぎを解決したいという気持ちはあるのですが、探し物を横取りされたら、大変なことに……」
「あなたたちがどうして動いているのか一応把握しています。金粒の魔石。この大陸にあると言われる素材を探しているんですよね?」
ファントムブレードの素材の一つ、金粒の魔石の名前が出たため、ベーキウたちは目を開いた。驚くベーキウたちの表情を見て、カネズキは笑みを浮かべて話を続けた。
「どうですか? モンパ一味を倒してくれたら、この城にある金粒の魔石を差し上げます。もちろん、好きなだけ持って行ってください。素材で使っても余ってしまったら、売ってしまっても構いません。他の大陸ではない素材です。かなり高値で売れると思いますよ」
この言葉を聞いたクーアは、目の色を変えて立ち上がった。
「分かったのじゃ! そのモンパとか言う窃盗団を半殺しにすれば、大量の金粒の魔石をくれるんじゃな?」
「ええ。約束します」
「その話、乗った!」
クーアの言葉を聞き、シアンは文句を言おうとしたのだが、クーアはウインクをしてシアンにこう言った。
「文句を言うなシアン。楽に金粒の魔石を手に入れるチャンスではないか」
「あんたの場合、余った金粒の魔石を売って金にしそうなんだけどね」
「余ったなら余ったで四等分すればよかろう。とにもかくにも、このチャンスに乗るしかないぞ。この王様も喜んでいるし」
シアンは嬉しそうなカネズキの顔を見て、諦めてため息を吐いた。
「分かったわよ。乗り気じゃないけど、盗賊退治をやりましょう」
話を終えた後、ベーキウたちは城の一室に案内された。
「今日はここでお休みください」
「何か御用があれば、遠慮せずに申し出てください」
案内役のメイドはそう言って頭を下げ、去って行った。クーアはトランポリンのようにベッドの上を跳ねている中、ベーキウがシアンにこう聞いた。
「なぁ、乗り気じゃないって言ってたけど、どうしてなんだ?」
「この国の人々の貧しさを目の当たりにしたでしょ? それと、兵士の乱暴な態度。あいつらのトップがあの王様なのよ。それに、人々は貧しい暮らしをしているのに、この豪華なお城は何? まるであの王様が悪者みたいに見えるわ」
「確かにシアンの言う通りね。あの王様、いいものを食べているのか、血色がいいわ」
キトリは紅茶を作りながらこう言った。シアンとキトリの話を聞いたベーキウは、この話に乗っていいものかと考えた。そんな中、扉からノック音が聞こえた。
「はい、誰ですか?」
「私はこの国の兵士たちのリーダーを務めるカネガタと申します。ぜひ一度、話をしたくて参りました」
カネガタの名前を聞き、ベーキウはカネズキの話を思い出し、扉を開けた。そこには長身の兵士が立っていた。傷があるが、立派な青色の軽鎧を着ており、兜を手にしているから顔がちゃんと見えた。少しぼさぼさの短髪の黒髪だった。
「あなたたちが噂の勇者パーティーですな。では改めてご挨拶を。私は兵士たちのリーダーを務めるカネガタと申します。あなたたちがモンパ一味討伐に加わったことを知り、大変うれしく思います」
頭を下げて挨拶をするカネガタを見て、シアンは慌てて手を振った。
「そんなに堅苦しい挨拶をしなくていいです。もっと気楽にしましょう」
「よく言われます。ですが、生まれてからこんな性格なものでして」
「性格なら仕方ないの」
いつの間にかクーアは椅子の上に座り、キトリが淹れた紅茶を飲んでいた。カネガタは咳払いをし、話を続けた。
「実は今夜、モンパ一味が現れると噂が町の中で広がっています」
「話をしてすぐに登場とは。まるで、わらわたちがくるのを待っていたかのようじゃのう」
「偶然よ、多分」
笑みを浮かべるクーアに対し、シアンがこう言った。ベーキウは少し考え、カネガタにこう聞いた。
「では、俺たちも夜、あなたと一緒に動いた方がいいと?」
「その通りです。今夜、モンパ一味を確実に捕まえたいのです。皆様、どうかお力を貸してください」
と言って、カネガタはもう一度頭を下げた。それを見たシアンはため息を吐き、こう言った。
「何度も頭を下げられたら、断ることもできないわね。いいわ。あなたと一緒に戦います」
この言葉を聞いたカネガタは、すぐに起き上がってありがとうと何度も言いながら、シアンの手を握って上下に動かしていた。
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