カネズキ王の思惑
カネズキは自室で、政治のことを考えていた。
「うーむ、今後どうやって下民の連中から税を搾り取ろうか……」
そんなことを呟いていると、手元に置いてある電話が鳴り響いた。カネズキはため息を吐きつつ、受話器を手にした。
「もしもし、カネズキ王ですか? 勇者シアンがたった今、入国しました」
門番からの電話を聞き、カネズキは驚いた。
「そうか……一応、勇者シアンの話はワシも聞いている。一応、来客として王の間に案内しろ」
「はっ」
カネズキの返事を聞いた門番は、すぐに電話を切った。シアンたちがいることを知り、カネズキは心の中で考え始めた。
勇者シアンか……ユイーマの愚かなロリコン王……ペデラタンを倒し、レンズ王国の騒動を解決させたと聞いたな。ワシもいろいろと悪いことをしたが……まぁ、黙っていればばれないだろう。奴らは子供だ。察する能力も悪いだろう。
そう思ったカネズキは、服を脱いで来客対応用のスーツに着替え始めた。
ベーキウたちは門番が呼び寄せた兵士の案内で、城下町を歩いていた。
「人がいないわね。城下町だから、人がいっぱいいると思ったんだけど」
「うちの国はこんなもんです。人がいない城下町だって、この世にはありますよ」
と、兵士は笑いながらこう言った。クーアは兵士の笑い声を聞き、呆れてこう言った。
「人口が少なかったら、国として成り立たんじゃろう」
「まぁ、そこは国王であるカネズキ様の腕の見せ所ってところで」
「本当に大丈夫なのかしら? カネズキって王様は」
キトリは、ゴーストタウンと化した城下町を見回しながらこう言った。そんな中、住人が現れて、兵士に近寄った。
「おい、あんた町の兵士だよな? 強欲なバカ王にこう言ってくれ、税金を下げてくれ! 税金が上がってばかりだと、生活が成り立たないって!」
兵士は住人を睨み、腹を蹴った。いきなり暴力的なシーンを目にしたベーキウたちは驚き、急いで倒れた住人を助けた。
「大丈夫ですか?」
「おいお前! 困っている人を蹴り飛ばすなんて人としてどうかと思うぞ!」
クーアは起こりながらこう言ったが、兵士はため息を吐いて言葉を返した。
「俺が蹴ったのは人間じゃないですよ。下民なんて、人として扱ってはいけないって言われているんで」
兵士の言葉を聞き、ベーキウたちの額に青筋が浮かんだ。兵士はまずいことをしたと思い、手を振ってこう言った。
「いやいや、今のは冗談ですよ冗談! 嫌だなー、マジと冗談の見分けがつかないって」
「冗談だったら、あの人に頭を下げて謝りなさいよ」
シアンの言葉を聞き、兵士の顔が引きつった。その様子を見たベーキウは、背中のクレイモアを手に近付けた。
「何だ、嫌なのか?」
「それは……その……」
ベーキウの怒りの表情を見た兵士は、頭を下げてこう言った。
「蹴ってサーセン」
「ちゃんと謝れ」
ベーキウは兵士に近付いてこう言った。その後、兵士は土下座をして住人に謝罪したのだが、その時の表情は怒りの形相になっていた。ベーキウたちは、その時の兵士の顔をしっかりと見ていた。
「ここがお城です。じゃ、私はこれで」
兵士はそう言って、足早にベーキウたちの元から去って行った。ベーキウは去って行く兵士を見て、不審な目をしていた。
「嫌な奴だったな」
「今度あいつと会ったら、確実にとっちめてやるわよ」
と言って、シアンは去って行く兵士に向かって、ヒロインがしてはいけない指の形をしていた。キトリはシアンに近付いて怒りを収めた後、小さくこう言った。
「いざとなったら、闇であの野郎を消すわ。闇なら、証拠一つも残さず消えるから便利よ」
「そうね! キトリ、その時になったら頼むわよ」
「その時になっても頼むな。動くな」
怒りでキャラが崩壊したシアンとキトリに近付き、ベーキウはなだめた。その後、別の兵士が現れた。
「カネズキ王はこちらでお待ちです。私に付いてきてください」
兵士の言葉を聞き、ベーキウはその後を付いて行った。城の廊下を見て歩いていたベーキウは、あることに気付いて嫌な顔になっていた。
「さっきから同じ人の肖像画がずっと壁に掛けられているんだけど」
「このお方が、現在の国王であるカネズキ様です」
兵士の言葉を聞いたクーアは、声を上げた。
「こんなジジイが王様なのか? 悪そうな顔だし、裏で何かやったんじゃないのか?」
クーアの言葉を聞いた兵士は足を止め、クーアにこう言った。
「これでも、前国王が死ぬ間際にカネズキ様を次の王として指名したのです」
「前の国王が? まぁ……指名したんなら、仕方ないけど……」
シアンが口ごもりながらこう言うと、あることに気付いたベーキウが、兵士にこう聞いた。
「前の国王ってどうなったんですか?」
「病気で亡くなりました」
「そうだったんですね……」
キトリが寂しそうにこう言うと、兵士は手を叩いた。
「しんみりする話はこれで終わりにしましょう。いくら過去のことを話しても、過ぎ去ってしまった過去は戻りません。では、再び歩きましょう」
と言って、兵士は無理矢理話を終わらせ、歩き始めた。
数分後、ベーキウたちはカネズキがいる王の間に案内された。
「この扉の奥にいます」
兵士がこう言ったが、扉を見たベーキウたちは口を開けて驚いていた。
「何じゃこの扉?」
「満面に宝石が埋め込まれてる……」
宝石には、ダイヤやエメラルド、ルビーさサファイアなどの高価な宝石が大量に埋められているのだ。ドアノブを見たクーアは、声を上げて驚いた。
「このドアノブ、純金ではないか! 考えることがリッチじゃのう」
「カネズキ様は高価で派手なものが好きなのです。では、少々お待ちください」
兵士は奇麗な白いハンカチを手にし、純金のドアノブを回した。扉の奥には、真っ赤で長い高級なじゅうたん、その周りには踊り子の衣装を身に着け、高価なアクセサリーを身に着けているメイドと思われる美人だち、そして奥には玉座に座っているカネズキの姿があった。
「あちらにいるお方が、カネズキ様です」
兵士はそう言って、ベーキウたちを王の間に入れさせた。真っ赤なじゅうたんの上に足を乗せたクーアは、不思議な感覚を覚えた。
「うおっ! すっげーふわふわじゃ」
「どれどれ……おわっ! 俺、こんな感覚初めてだ!」
ベーキウとクーアは、じゅうたんの柔らかさに驚き、声を上げていた。キトリは柱を見て、目を丸くしていた。
「これ……全部大理石。しかも、宝石が埋められているわ」
驚くベーキウたちを見て、シアンはため息を吐いてこう言った。
「とりあえず王様の元へ向かいましょう。お待ちかねのようだし」
シアンの言葉を聞いたベーキウたちは、急いでシアンの元へ戻った。その後、シアンはカネズキの前に立ち、頭を下げた。
「私の仲間がいろいろとすみませんでした」
「いやいや、珍しい光景を目の当たりにしたんだ。驚くのも分かるよ」
と言って、カネズキは笑った。その様子を見たベーキウたちはほっと胸をなでおろした。その時、カネズキは手を鳴らして何かしらの合図をした。
「お客がきたんだ。飲み物を頼むよ」
「分かりました」
ウェイトレスはそう言うと、ベーキウたちに近付いた。
「お飲み物はどうしますか?」
「お酒以外ならなんでも。私たち、全員未成年なので」
「承知しました」
と言って、ウェイトレスはジュースの用意を始めた。カネズキはベーキウたちを見て、こう言った。
「お客をずっと立ちっぱなしにさせるのはよくない。近くのソファーに腰を掛けたらどうだ?」
「では、お言葉に甘えて……」
クーアは近くのソファに座ると、その別次元的な柔らかさを感じ、頭の中が真っ白になった。ベーキウとキトリも驚き、頭の中が真っ白になった。
「はぁ……驚くのは分かるけど、リアクションがオーバーすぎるわよ」
と、シアンは小さく呟いた。
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