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ようやく目的が果たせると思ったその矢先


 魔界に入るために必要なお守りの素材、アオクーサ、イエロースライム、クレナイザメの目を手に入れたベーキウ一行は、ヒデッキーに別れを告げてラフトの町へ向かうことにした。


「これでようやく魔界に行ける」


「ええ。お守りがあれば、ベーキウも自由に魔界で動けるね」


「ああ」


 リフトの町へ向かうバスの中、ベーキウとキトリがこんな話をしていた。シアンとクーアは、不機嫌な表情で話をしているベーキウとキトリを見ていた。


「ねぇ、何で私がオバハンの隣の席なのよ」


「それはわらわのセリフじゃ。どうしてキトリがベーキウの隣なんじゃ?」


 と、シアンとクーアは文句を言っていた。それもそのはず。ベーキウはシアンかクーアのどちらかが隣に座れば、何かやるかもしれないから、キトリが隣に座ってくれと言い、キトリはその言葉に従ったのだ。楽しくおしゃべりをするベーキウとキトリを見ていたシアンとクーアは、しばらくして怒りが爆発しそうになった。


「キトリ……うーらーやーまーしィィィィィ」


「わらわにその場所を変わってくれェェェェェ」


 そう言いながら、キトリを睨んでいた。そんな中、酒を飲んでいた厄介そうな男がシアンとクーアに近付いた。


「おいオメーら! ヒック、さっきからうるせーんだよ! うるさくてじっくりとたっぷりとねっぷりと酒の味を楽しめねーだろうが! ヒック」


 男の声を聞いたシアンとクーアは、ついに怒りが爆発した。


「うるせーんだよ酔いどれオヤジがァァァァァ! バスの中で酒を飲むなってママから教わんなかったのかァァァァァ!」


「うるせーのはお前じゃクソオヤジ! わらわの手でお前の残りの毛根を死滅させてやろうか!」


 シアンは男の腹に向かって強烈なパンチを放ち、クーアは魔力を解放して男の残り少ない髪を燃やしていた。


「ギャァァァァァァァァァァ! 助けて! 厄介そうな女の子に絡んじゃったァァァァァァァァァァ!」


 怒れるシアンとクーアに攻撃されている男は助けを叫んだが、酔って臭い息を周りに発している男を誰も助けなかった。数分後、バスの窓が開き、そこからボッコボコにされた男が投げ捨てられた。


「おーいシアン、クーア。あまり周りに迷惑をかけるなよー」


 ベーキウがシアンとクーアの名を呼んだためか、シアンとクーアは精一杯の可愛らしい顔をし、猫なで声で返事をした。この光景を見ていたバスの乗客や運転手は、めんどくさいから誰もツッコミをしなかった。




 ちょっとした騒動はあったものの、ベーキウ一行は無事にラフトの町に到着した。


「さて、動くのは明日にしようか。もう夕方だ」


「そうね、結構バス移動で時間使っちゃったわね。宿があればいいんだけど」


「寝られる場所があれば、わらわは安宿でも構わんがなー」


 クーアは周囲を見回しながらこう言った。すると、クーアは何かを見つけた。


「いい宿を見つけたぞ! ベーキウ、今夜は二人であの宿に泊まろう!」


 クーアはベーキウの服の裾を掴んでこう言った。ベーキウはクーアが見つけた宿を見て、目を丸くして驚いた。その宿の看板や宿の建物の外装には、一目でここは大人用の宿と分かる装飾があった。


「おい、あそこは大人向けの宿じゃないか。あんな所で休めるか」


「安いからいいじゃないか。それに、半日使っただけで一人二千ネカじゃぞ。二人で四千ネカ。お得じゃないか」


「お前が何かするから休めないじゃないか」


「それよりも、私とシアンを数に入れてない」


 キトリは頬を膨らませながらクーアの前に立った。キトリが少し怒っていると察したクーアは、少し戸惑ったがベーキウとラブホでチョメチョメする計画を断念した。そんな中、シアンが呆れたようにため息を吐いた。


「クーア、あんたがバカやってる間に私が近くの宿を手配したわよ。あのラブホよりも値は張るけど、ちゃんと休めるから」


「はいはい。ありがとーごぜーました、勇者様ー」


 と、クーアはシアンの方を見て礼を言ったが、シアンはベーキウの腕に抱き着いてこう言った。


「部屋の振り分けは私とベーキウ。後は二人って分けたから」


 この言葉の直後、クーアの飛び蹴りと、キトリのラリアットがシアンを襲った。


「このクソ勇者ァァァァァァァァァァ! 結局お前もベーキウとチョメろうとして裏でいろいろと手回ししてんじゃねーかァァァァァ!」


「うるさい! あんたらが何もしないから、私が先に手を出そうって考えて実行しただけだよ!」


「シアンずるい。一人だけベーキウとあれこれしようとして……私だって……」


「年齢的にキトリはまずいじゃろうが! やはり、ベーキウの嫁になるのはわらわじゃ!」


「あんたも年齢的にまずいでしょうが! どれだけ歳の差離れてるか理解しているの?」


 などと、シアンたちは口喧嘩を始めてしまった。その後、ベーキウは慌ててシアンが予約した宿へ向かい、部屋割りを変えた。




 翌朝。ベーキウ一行はお守りの素材を持って宿の外にいた。


「さて、お守りを作ってくれる人を探そう。キトリ、お守りを作ってくれる人は分かるか?」


「情報によると、昔から伝わるお守りらしいから、誰でもできるみたい。だけど、作る人によって効果が違う可能性があるって書いてあったわ」


「できるとしたら、腕のいい職人に頼むしかないわね」


「そうじゃの。若造より、頑固者のジジイが信頼できる」


「うし、それじゃあ腕のいい職人の情報を集めよう」


 会話を終え、ベーキウ一行は腕のいい職人の情報を集めた。


「腕のいい職人? じゃああの人がいいぜ、テッコウさんって職人だ」


「お守りを作るなら、テッコウさんの右に出る人はいないな」


「質のいいお守りを作りたいってーなら、やっぱりテッコウさんに任せた方がいいな」


 などと、町の人や職人たちはテッコウと言う名の職人を推していた。話を聞いたベーキウは、テッコウと言う名の職人の元へ向かおうと考えた。


「簡単に腕のいい職人の名を聞けるなんて思ってもいなかった。すぐに会いに行こう」


「え? テッコウさんは凄腕の職人だけど、結構頑固者だぜ」


 と、話をしていた若い職人はこう言った。話が気になったシアンは、若い職人に近付いた。


「頑固者? それって、気に入った仕事しかしないような人なの?」


「そうなんだよな。あの人、金儲けや名誉のためなんかじゃなくて、興味のある仕事しかしないんだよ。凄腕なんだけど、あの性格のせいであの人の店に客はこないんだよねー」


 若い職人はため息を吐いてこう言った。この話を聞き、キトリは恐怖を覚えた。


「頑固者のじーさん……気に入った仕事しかしないって……下手したら怒鳴られそう」


「大丈夫よ。勇者の私がいるから。何かあったらぶっ飛ばして無理矢理仕事をさせるわ」


 シアンは笑顔でこう言ったが、クーアは少し引いてこう言った。


「勇者の言う言葉じゃないぞ」


「シアン、気持ちは分かるが町の人をぶっ飛ばしたらまずいって」


 ベーキウがこう言いながらシアンに近付こうとしたが、突如男が現れ、ベーキウに突進した。


「おわっと!」


 突進を受けたベーキウは後ろに倒れ、突進した男はすぐに立ち上がってどこかに走って去って行った。


「あの野郎! ベーキウを倒して詫びの言葉もないの? すぐに追いかけてぶっ飛ばしてやるわ!」


「止めんかシアン! さっき言った言葉を忘れたか? お前は勇者だから物騒なことを言うな」


 クーアはシアンに向かってこう言う中、ベーキウの驚く声が聞こえた。シアンたちはベーキウの声を聞き、すぐに集まった。


「どうかしたの?」


「素材がない……あの男、スリ師だ!」


 ベーキウの言葉を聞いたシアンたちは、すぐに怒りを爆発させた。


「あのクソ野郎がァァァァァァァァァァ! 今すぐ捕まえて斬り刻んでクレナイザメの餌にしてやろうかァァァァァァァァァァ!」


「それだけじゃすまない! ぶっ飛ばして、半殺しにして、全裸にさせて、近所のあれな男たちの集まる場所に放置してやるわ!」


「ベーキウを倒し、物を盗み、逃げるような男は許せない……許せない許せない許せない許せない許せない……」


 殺意と怒りを爆発させるシアンたちを見て、ベーキウと若い職人は恐怖を覚えて引いていた。


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