平和になったリゾート地
ハンガー海賊団との大激闘が終わった後、ベーキウたちは宿に戻って休んでいた。ベーキウは水を飲みながら、がつがつと目の前の料理を食べ続けるシアンとクーアを見続けていた。
「そんなに慌てて食べたら、体の中で詰まるんじゃないか?」
「その時はベーキウが助けてよ」
シアンは口の中の食べ物を飲み込んでこう言った。そんな中、突如クーアの動きが止まった。
「あーあ、言わんこっちゃない」
呆れた表情のキトリがクーアに近付き、口の中を開けようとした。だが、クーアは口を開こうとしなかった。
「おばさん、こんな時に何やってるのよ? 死ぬつもり?」
「べ……ベーキウがチューすれば助かると思う」
この言葉を聞いたシアンは、クーアの口にアツアツのスープを流した。
「ゴアッヂャァァァァァ!」
「詰まらせたマネをして、ベーキウとチューしようなんざ千年早いのよ。バカなことを考えないことよ」
シアンは口の中を抑えながら床の上を転がるクーアを見て、こう言った。ベーキウは先に食事を終わらせ、外に出て行った。
「ふぅ……夜の海は静かだな……」
ベーキウはそう言いながら、夜風に当たりながら夜の海を見ていた。昼間は人々のはしゃぐ声が周囲から聞こえてくるが、今は波の音しか聞こえない。
「あんな静かな海で、あれだけ大きな戦いがあったって言ったら、誰も信じないだろうなー」
「おっ、お一人さんかい? ハンサムさん」
後ろから声が聞こえ、振り向いてみるとそこにはヤイバとアユが立っていた。
「ヤイバ、それとアユ。夜のデートか?」
「まーね。いろいろあったけど、ハンガー海賊団の賞金と彼女が手に入るなんて思いもしなかったぜ」
「私もこんなに強くてかっこいい人と会えるなんて思いもしなかったわー」
そう言いながら、ヤイバとアユは笑い始めた。ベーキウは小さく笑った後、アユにこう聞いた。
「なぁ、海のサファイアの話は覚えているか?」
「ええ。そうだ。戦いが終わった後、お父様が明日くるって言ってたわ」
アユの返事を聞き、ベーキウは驚いた。
「あの人たちがここに? 人魚って陸地には上がれないんじゃあ……」
「ちょっとした裏技があるって言ってたわ。私もどんな裏技があるか知らないけど」
と、アユはこう言った。
翌日、ベーキウたちは海の前で立っていた。
「本当にあの人たちがくるの?」
と、キトリは横にいるアユにこう言った。アユはうなり声を上げながら、海を見て答えた。
「そう言ってたんだけど……まだこないみたいね。と言うか、どうやって上がるか分からないわね……」
「あんたと同じ方法で陸に上がるんじゃない?」
シアンの言葉を聞いた後、アユは苦笑いをした。
「それは絶対にありえない。足ができる薬はかなり苦いのよ。あのせいで、少しの間だけのどがイガイガになったから」
「のどがおかしくなるほど、苦い薬があるのか」
ベーキウがこう言った直後、突如大きな波が現れた。水しぶきをバリアで防ぎながらベーキウたちは前を見た。そこには、水を操って移動するサシミがいた。
「お父様! なんて無茶苦茶な!」
「魔力で海を操っているのか。かなり強い魔力を感じるぞ!」
クーアは驚きながら叫んだ。周囲の人々は、サシミを見て驚いていた。
「でかい人魚のおっさんが現れたぞー!」
「あいつはきっと、侵略者だ!」
「すっげー! 胸毛がボーボーだ!」
「うほっ、いい人魚」
驚いた人々を見て、ベーキウはこの状況の説明をしようとした。だがその前に、サシミたちが陸に上がった。
「今回、本当にお世話になった。君たちのおかげで、アユを取り戻すことができ、アユに素敵な彼氏ができた」
「素敵な彼氏って……そんなこと言われると嬉しいですねー」
そう言いながら、ヤイバは照れ笑いをした。そんな中、サンマがヤイバに近付いた。
「すごいことですぜ旦那。サシミ様はアユ様が結婚するとしたら、立派な男じゃないと許せないって言ってたんや。ファー! にしてもすごい男前やなー。あんさん、何やってるんでっか?」
「賞金稼ぎです。悪い奴を倒して捕まえています」
「収入はあるんか?」
「常に強い悪者を狙って戦っています」
「危険な仕事ですなー。大丈夫でっか?」
「大丈夫じゃなかったら、俺はここにいないよ」
「そりゃーそうやな! こんだけ強くて儲けがあるんやら大丈夫やな! ファーッファッファ!」
「はいそこまで」
アユはサンマに近付き、口を塞いだ。サンマは暴れてアユの拘束を解いた。
「何するんやアユ様! まだこのハンサムさんと話したいことがいっぱいあるんや!」
「あんたが話を始めたら日が暮れるわ!」
叱られたサンマは大人しくなり、サシミの横に移動した。サシミは口を開き、話を続けた。
「では、いろいろとお世話になったお礼に、これを受け取ってくれ」
と言って、サシミは手に持っているサファイアをシアンに渡した。そのサファイアは濃い青だが、中に海が入っているのではないかと思うくらい美しい色をしていた。
「きれいなサファイア……まさか、これが海のサファイアですか?」
「その通りだ」
サシミの言葉を聞き、ベーキウたちはガッツポーズをした。
「これで素材三つ目! これまで順調に素材を手にしているわね!」
「ああ、しかも今回はジャオウたちがいなかった……そうだ。ジャオウたちがいなかったな」
ベーキウがこう言うと、シアンたちは確かにと言った。しばらく考えたが、クーアが笑いながらこう言った。
「まぁこんな時もあるじゃろう! 今はとにかく海のサファイアを手にしたんじゃ! 笑うぞ!」
と言って、クーアは笑い始めた。
一方その頃、ベーキウたちによって倒されたハンガーは、近くの大きな牢屋に入れられていた。
「クソッたれ! どうしてワガハイがこんな臭い場所に!」
「悪いことをしたからだろうが。当り前のことを聞くなちょび髭!」
看守はそう言うと、牢屋の鍵を閉めて去って行った。ハンガーは牢屋を掴み、去って行く看守を睨んだ。
「ワガハイを見下しおって! いつか脱獄したら地獄を見せてやる!」
と言って、ハンガーは歯ぎしりをした。そんな中、誰かがハンガーの肩を叩いた。
「誰だ! 今、ワガハイは機嫌が悪いのだ!」
「あんたがハンガー海賊団の船長のハンガーか」
ハンガーは後ろにいた男を見て、周囲を見回した。
「そうか。ここは牢屋だから、先客がいるというわけか」
「そうだ。それより、ある話を聞いたんだ。答えてくれ」
「何の話だ? 武勇伝なら山ほどあるが」
「あんたの犯罪自慢なんてどうでもいい。俺が知りたいのはこれだけだ」
と言って、男はハンガーの尻を叩いた。
「あっだー! 何するんだ! 意味もなく人の尻を叩くな!」
「これが俺の聞きたかった話だ。やはりあの話は本当だったようだな」
「何の話だ? 尻が関係しているのか?」
「その通りだ。あんたは素晴らしいプリケツを持っているってな」
この言葉を聞き、ハンガーの顔は青くなり、額から滝のような冷や汗が流れた。ハンガーは逃げようとしたのだが、後ろにいた男がいつの間にか立ち上がっており、ハンガーの両腕を拘束していた。
「お前にいろいろと教えてやるよ。まず最初に教えてやるのは、ここでのお楽しみのことだ」
「いろいろと最高だぜ。あんたもやれば、すぐに理解できる」
男たちの笑みを見て、ハンガーはこれから何をされるか察した。
「ふざけるな! ワガハイは女好きだ! お前らみたいな男の相手など、してたまるか!」
と言って、ハンガーは無理矢理牢屋を蹴り飛ばし、外に出た。だが、男はタックルでハンガーを転倒させ、牢屋の中に戻した。
「た……た……助けてくれェェェェェェェェェェ!」
その後、ハンガーの悲鳴が牢屋中に響き渡った。
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