海賊たちの逆襲
ハンガーが起こした強風により、キトリが吹き飛ばされ、海に落ちようとしていた。そのことを察したベーキウは急いでキトリの元へ向かった。
「ベーキウ! 私も行くわ!」
シアンは急いで態勢を整えてベーキウにこう言ったが、ベーキウは走ったまま叫んだ。
「俺が何とかする! シアンはハンガーの相手を集中してくれ!」
ベーキウの焦った声音を聞き、シアンは頷いた。その後、ベーキウは気鳥が落ちたと思われる場所へ向かい、海に飛び込んだ。
「これで二人脱落だな」
ハンガーは笑みを浮かべながらこう言った。その笑みを見たシアンは、ハンガーを睨んで言葉を返した。
「勝手にあの二人を脱落扱いしないでよね。戻ってくるに決まってるわ」
「そーかいそーかい。それじゃあ、この状況を見たらどう思う?」
この言葉を聞いたシアンは、周りを見回した。そこには、倒したはずの船員たちが立ち上がっていたのだ。
「あんたら、いつの間に治療してたの?」
「時間がたっぷりあったんだ。治療する余裕はある」
「まぁ、ダメージが大きすぎて治療できなかった奴もいたがな」
「でもこれで、形勢逆転ってわけだな」
船員たちは笑いながらこう言ったが、シアンはため息を吐いてこう言った。
「あんたら雑魚が復活しても、どうせまたすぐにやられるわよ。治療で使った魔力が無駄になったわね」
「その言葉を言っていられるのも今のうちだ」
「よくも船長を痛めつけたな! やり返してやるぜェェェェェ!」
船員たちは武器を構え、シアンに襲い掛かった。だが、突如発生した竜巻により、船員たちは吹き飛んだ。
「雑魚が復活しても、雑魚は雑魚。倒れていた方がよかったかもしれぬのに」
クーアはそう言いながら姿を現した。クーアの姿を見ても、船員たちはひるむことなくシアンに迫った。
「おいおい、人の話を聞けよ。倒れていた方がよかったって言ってるじゃないか」
続いて現れたのはヤイバだった。ヤイバは目の前の船員を斬り、ハンガーの方を見た。
「ハンガー、この状況を打開するにはちーっと難しいんじゃないか?」
「大人しく捕まったら? 無駄な怪我をしないで済むわよ」
「猿山の大将みたいなことをするのはおススメせんぞー」
シアンたちの言葉を聞き、ハンガーは魔力を開放した。
「貴様らのような小童の言うことなど誰が耳にするか! 貴様ら全員、サメのエサにしてやる!」
「無理だって言ってるのに」
「人の話を聞かぬ奴じゃのー」
「そういう奴は、お仕置きだな」
シアンたちは会話をした後、ハンガーに向かって走り出した。
海に落下したキトリは、波に逆らいながらも船に向かって泳いでいた。しかし、波は強く、なかなか前に進まなかった。
このままじゃあ、溺れる!
危機を察したキトリは、この状況をどうするか考えた。だが、慌てている上、波に飲まれる状況では考えごとをまとめるのはできなかった。その時、大きな木の破片を持ったベーキウが泳いできた。ベーキウはキトリの手を掴み、木の破片に当てた。キトリは手に力を込めて体を上げさせ、木の上に座った。
「はぁ……はぁ……ありがとう、ベーキウ」
「無事でよかった。結構波が荒れているな。溺れる前に助けられてよかった」
ベーキウはそう言った後、木の破片の上に上がった。ベーキウは魔力を使って弱い衝撃波を放ち、木の破片を船に向かって移動させていた。そんな中、キトリはベーキウにこう言った。
「ねぇ、こんなに大きな木の破片はどこにあったの?」
「泳いでいる時に浮いてたのを見つけたんだ。浮き輪代わりにちょうどいいって思ってな」
「私たち、運がいいね」
「ああ」
そんな話をしていると、突如大きな波がベーキウとキトリの前に現れた。
「運がいいのはさっきまでみたいね……」
「ああ……そうだな」
ベーキウとキトリがそう言った直後、大きな波はベーキウとキトリを飲み込んだ。
シアンたちはハンガーと激しい戦いを繰り広げていた。シアンは剣を使ってハンガーを攻撃するが、ハンガーはカトラスを使ってシアンの攻撃を対処し、反撃で風の魔力を放った。
「うあっ!」
吹き飛ばされたシアンは折れたマストに激突し、下に落ちた。その後、シアンが落下するのを待っていた船員が笑みを浮かべていた。
「さっきはよくもやってくれたな」
「ガキだからって容赦はしねーぞ」
船員は一斉にシアンに襲い掛かったが、攻撃される寸前にシアンは魔力を開放し、周囲にいた船員を吹き飛ばした。
クーアは風の魔力を発し、風の刃を使ってハンガーに攻撃を仕掛けていた。
「ワガハイと同じ風の魔力か! 青臭いガキが放つ風の刃の強さなど、たかが知れている!」
ハンガーは大きな風の刃を放ってクーアに攻撃を仕掛けたが、それを見たクーアは笑みを浮かべた。
「青臭いガキか。こう見えても、わらわは貴様以上に経験を積んでいるんじゃがのう!」
と言って、クーアはハンガーが放った風の刃よりも、もっと大きな風の刃を放った。それを見たハンガーは目を丸くして驚いた。
「何じゃそりゃァァァァァ! ワガハイより強い!」
「わらわの年齢はピッチピチの八十五歳! あまり偉そうに言いたくないが、貴様より経験を積んでいるのじゃ!」
クーアがこう言った後、巨大な風の刃はハンガーに激突し、破裂した。
「グワァァァァァ!」
攻撃を受けたハンガーは吹き飛び、海に落ちそうになった。だが、ハンガーは風を操り、自身を吹き飛ばして船の上に戻った。
「そう簡単に海に落ちてたまるか」
「じゃあ俺が落としてやるよ」
と言って、ヤイバがハンガーに攻撃を仕掛けた。最初、ハンガーはヤイバの攻撃に驚いたが、しばらくしてハンガーはヤイバの攻撃を対処し始めた。
「グッ……さっきは俺が優勢だったのに……」
「やはりお前も青臭いガキだ! ワガハイのことをなめてかかるからこうなるのだ!」
ハンガーはヤイバの右足のすねに蹴りを入れ、後ろに下がった。痛いところを蹴られたハンガーは思わずその場にうずくまり、右足のすねをさすった。
「ヤイバ!」
クーアは急いでヤイバの元に向かおうとするが、下にいた船員が一斉にクーアに向かってハンドガンを発砲した。
「クソッ! 隠れていたのか!」
「あのババアを撃ち落とせ!」
「これ以上奴らの自由にさせるな!」
船員たちは声を上げながら、ひたすらハンドガンの引き金を引いた。そんな中、ハンガーは笑みを浮かべてヤイバに近付いた。
「賞金稼ぎのヤイバ、貴様の人生はこれにて閉幕だ!」
と言って、カトラスを振り下ろそうとした。
アユはヤイバが危険なのを知り、急いで魔力を開放し、歌を歌った。突如響き渡る美しい声を聞き、誰もがその場に止まった。
「何だこの声?」
「美しい声だな」
「誰だ? 音楽をかけているのは?」
「これ、音楽じゃないぜ。誰かが歌ってるんだ」
船員たちは驚きつつも、歌声を聞いて立ち尽くしていた。攻撃をしようとしていたハンガーも、あまりの美しさに攻撃を止め、思わず聞き入った。
「いい声ではないか……イメージできるぞ。白くて大きくて、美しい屋敷のベランダで、一人の少女が白い小鳥と遊んでいる……」
「隙ありィィィィィ!」
ぼーっとしていたハンガーに向かって、ヤイバは剣を振り下ろした。ハンガーは間一髪攻撃をかわしたが、目の前にはシアンがいた。
「喰らえェェェェェ!」
シアンは叫び声を上げながら、盾でハンガーの顔を殴った。攻撃を受けたハンガーは奇声を上げながら後ろに吹き飛び、壁に激突した。
「いってェェェェェ! 何するんじゃボケェ! 貴様らにはさっきの声が聞こえなかったのか!」
「聞こえてたわよ!」
「さっきの歌声はアユの声だ! お前たちの動きを止めるために歌ったんだよ!」
シアンとヤイバの言葉を聞き、ハンガーは一番厄介な存在が誰なのか把握した。
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