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何回も主人公がピンチになるような展開をやってごめんなさい


 シアンたちの戦いは終わった。だが、ベーキウは危機的な状況に置かれていた。目の前の男、アスタリスクはあっち系の男であり、戦う前からベーキウを狙っているのだ。いろんな意味で。捕まったらとんでもない目に合うと考えたベーキウは、なるべくアスタリスクから逃げ、隙を見て海に突き落とそうと考えた。だが、アスタリスクは異常にしつこい男だった。


「どこだい? 逃げても無駄だぜぇ」


 そう言いながら、アスタリスクはタルや木箱をどかしていた。物陰からこの様子を見ていたベーキウは、心の中であんな場所に隠れるかっつーのとツッコミをしていた。その時、アスタリスクがベーキウの方を振り向いた。気付かれたと思ったベーキウは、すぐに物陰に隠れ、音を立てないように歩いてその場から去って行った。


 クーアの魔力により、船は半壊した。そのおかげで、隠れる場所や意外な逃げ道ができた。それを利用してアスタリスクから逃げようとベーキウは考えた。だが、逃げてばかりではだめだと思い、クレイモアを振り回せる場所を探し、そこへ移動した。


「船の中にはいない。どうやら、外に逃げたようだねぇ、見つけたらパーティーの始まりだぜぇ」


 と言って、嬉しそうな声でアスタリスクは外に出た。半壊になった船を見て驚いたが、広い場所にベーキウがクレイモアを手にして立っていた。


「ふふ……ここでおっぱじめるつもりかい?」


「ああ、お前みたいな変態野郎に付きまとわれるのはもう嫌なもんでね。海にぶっ飛ばしてやるよ」


「激しいことを言うじゃないか。さて、会話をする時間がもったいない。さっさと始めようぜ」


 アスタリスクは高く飛び上がり、ベーキウの近くに着地した。着地と同時に、ベーキウはクレイモアを振るった。アスタリスクは濡れた右腕を前に出し、笑みを浮かべた。


 あいつ、腕を犠牲にするつもりか!


 このままだと、クレイモアの刃がアスタリスクの右腕を切り落としてしまう。そう思ったベーキウだが、戦いである以上容赦はしない。そう思い、そのまま力を込めてクレイモアを握った。だが、アスタリスクの右腕に当たったクレイモアの刃は、右腕を切断することなく上に滑った。


「んなっ!」


「ふっふっふ、驚く顔も実にかわいいねぇ」


「気持ち悪いことを言うなよ!」


「そんなことを言うなよ。それじゃ、隙だらけの体にお邪魔します」


 アスタリスクはベーキウにタックルを仕掛け、押し倒した。その瞬間、ベーキウはアスタリスクの体が異様にヌメヌメしていることを知った。


「な……何だよこのヌメヌメは?」


「使ったことがないのかい? これは水の魔力で作られたローション。本物みたいにヌメヌメだぜ」


「ローション……魔力で変なのを作るなよ!」


 ベーキウはそう言いながら、アスタリスクから放れようとした。だが、ローションがベーキウの足をヌメヌメにしてしまったため、そのせいで足を滑らせてしまった。


「ぐあっ! グッ、た……立てない」


「私のローションを軽く見ないことをおススメするよ。市販のローションよりも、よく滑るんだ」


 笑みを浮かべながら、アスタリスクはそう言った。ベーキウはそれでも立ち上がろうとしたのだが、アスタリスクは再びベーキウにタックルを仕掛け、押し倒した。


「があっ!」


「さて……今、他の船員は壊れた船を補修するか、逃げるために専念している。俺たちを見ているのは誰一人いない」


「気持ち悪いことを言うな!」


「扉を開いたら、そんなことを言ったことを後悔するぜぇ」


 と言って、アスタリスクはベーキウに向かって笑みを見せた。その笑みを見せたベーキウの顔面は青く染まり、全身に鮫肌が走った。


「うわァァァァァァァァァァ! 助けてくれ!」


「逃がさないぜぇ」


 四つん這いで逃げようとしたベーキウだったが、ローションの滑りを利用したアスタリスクが、ベーキウを先回りした。


「逃がさない。そう言ったはずだ」


「ぐっ! 仕方ない!」


 ベーキウは魔力を開放し、水を放った。


「おっ。俺と同じ魔力を使っているのか。これは運命だな」


「勝手に運命を感じるな!」


 ベーキウはそう叫ぶと、放った水を凍らせた。ベーキウが放った水はローションと混じったため、水と同時にローションも凍り出した。


「ほう。そうやるか」


「悪いが、これ以上お前の悪趣味に付き合っている時間はねぇ!」


 ベーキウはそう言ってクレイモアを構え、アスタリスクに斬りかかった。アスタリスクはローションを使って自身を滑らせて後ろに下がり、しばらくして立ち上がった。


「ふぅ。私のローションが対策されるとは思ってもいなかったよ。まさか、あんな方法で危機を脱するとはねぇ」


「潔く降参することをおススメするぜ」


「他人から悪趣味と言われても、私は一人の戦士。戦士して、逃げることはしない」


「そうか。やられたとしても、俺を恨むなよ」


「イケメンを恨むことは一切しないさ」


 会話後、ベーキウはアスタリスクに接近して、クレイモアを振り下ろした。アスタリスクは魔力を開放し、振り下ろされるクレイモアを受け止めた。


 やっぱり、それなりに力があるんだな。


 そう思いながら、ベーキウはアスタリスクを睨んだ。その後、ベーキウは後ろに下がったが、アスタリスクは足元にローションを発し、滑るようにベーキウに接近した。


「さて、もっと楽しもうぜ」


 と言って、アスタリスクはベーキウを転倒し、上に覆い被さった。この時、ベーキウはアスタリスクが全身に力を込めていることを知り、アスタリスクが自分を殺すつもりで技を仕掛けていることを察した。


「本当は! お前さんを捕らえたいが! ここまでされた以上、見逃すわけにはいかないなぁ!」


「ガッ! ガグアッ!」


 苦しそうにベーキウは声を出した。だがその時、ベーキウの下の床がきしんだ。その音を聞いたベーキウはあることを思いつき、残る力を左手に込め、床を叩いた。


「何をするつもりだい?」


 と、アスタリスクはこう聞いたが、ベーキウは答えなかった。すると、ベーキウの下の床が崩れた。


「んなっ!」


「運がなかったな、お前」


 落ちそうになったベーキウはすぐに近くの柱に手を引っかけて落下を阻止し、落ちていくアスタリスクを見た。その後、ベーキウは外に戻ってシアンたちの元に向かおうと思っていた。だが、下からアスタリスクの声が聞こえた。


「な……嘘だろ」


 ベーキウが呟いたその瞬間、下からアスタリスクが現れた。


「ふぅん。私を落とし、倒したかと思ったかね? 残念だったなぁ」


「クソッ! あれだけじゃあ倒れないか!」


「その通り。では、行くぞ!」


 アスタリスクは前にローションを発し、再びローションを使って移動を始めた。ベーキウは慌てて突っ込んでくるアスタリスクをジャンプしてかわした。


「かわしたか。だが、まだまだ私の攻撃は続くぞ!」


 と言って、アスタリスクは向きを変えようとした。だが、向きを変えることができず、アスタリスクはそのままの勢いで、海に向かって突っ込んだ。


「しまった! 勢いが強すぎたァァァァァァァァァァ!」


 アスタリスクは叫び声を上げながら、海に落ちた。その様子を見たベーキウは、あほらしいと思いつつ、シアンたちの元へ向かった。




 ハンガーは有望な船員が次々と倒されたこと、自分の船が半壊したことを知って怒りの形相を見せていた。


「クソッたれがァァァァァ! ワガハイの仲間が! ワガハイの船がこんなことに!」


「悪いことをしたから、きっとその罰が当たったのよ。ちょび髭野郎」


 と、自身を罵倒する声が聞こえた。ハンガーは声のした方を振り返ると、そこには武器を構えたシアンたちが立っていた。


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