愛の力による強化は恐ろしいものである
ヤイバはハンドガンを使って戦う男、トッラを睨んでいた。今、ヤイバは剣を振り回してトッラを攻撃しているが、トッラは攻撃を回避している。
「おやおや、子供のようなチャンバラの動きでは、俺を倒すことはできませんよ」
「へっ、ほざいてろ!」
ヤイバはトッラの腹を蹴り、後ろに飛ばした。転倒したトッラを見て、ヤイバは小さく笑ってこう言った。
「斬撃はかわせるけど、蹴りは避けられなかったな」
「ぐっ……あまり調子に乗らないことをおススメしますよ」
「何言ってんだ雑魚野郎。ハンドガンに頼らないと戦えないヒョロヒョロのガリガリがよぉ?」
と、ヤイバは笑みを浮かべてこう言った。その態度を見たトッラの額には青筋が浮かび、魔力を開放した。
「調子に乗るなよ青二才。少し、痛い目を見ないと分からないみたいだな」
「理解する必要もないね」
「無礼な態度をするもんじゃない! なら、お望み通り痛みを与えてやるぞ!」
トッラは開放した魔力を操り、雷の弾丸を周囲に発してヤイバに向かって放った。ヤイバは飛んでくる弾丸を見て、ため息を吐いた。
「こりゃー俺も本気を出して戦わないとやべーな」
ヤイバは魔力を開放し、周囲に氷を作らせた。トッラが放った雷の弾丸は分厚い氷に激突し、跡形もなく消滅した。
「氷……お前、水の魔力を使うな」
「まーな。お前の雷の魔力とは相性最悪だが、それでもお前に勝てる自信はあるぜ」
「あまり強がるのはよくない。感電死したくないだろう?」
「勝手に人が死ぬってことを決めつけんなよ、キザ野郎」
ヤイバは凍らせた水を操り、トッラに向かって放った。それを見たトッラは笑みを浮かべ、雷を剣のような形にし、氷をへし折った。
「そんな単純な攻撃が俺に通用すると思っているのか?」
「思っているから、こんなことをしたんだろうが」
その言葉を聞いたトッラは、ヤイバがふざけたことを言っていると思って激怒した。だが、すぐに違和感を察した。へし折られてできた小さな氷の粒が、途中で動きを止めたのだ。
氷の粒が止まった? この氷はあいつの水の魔力でできた……なっ!
心の中で、トッラはヤイバが何をするか察した。トッラは急いでバリアを張ったのだが、その前に氷の粒が猛スピードでトッラに向かって飛び、左肩を貫いた。
「ぐわァァァァァ!」
攻撃を受けた左肩を抑えながら、トッラは後ろに下がった。ヤイバは追撃のため、トッラに接近して剣を振るった。
ヤイバとトッラの戦いを見ていたアユは、歓喜の声を上げていた。
「うおっしゃー! このまま変なキザ野郎を真っ二つにしちゃってー!」
「うるさいぞ人魚の女!」
「あまり大きな声を出さないでくれ。近くにいる俺たちのことを考えてくれよ」
アユを人質にしている船員がこう言った。アユは文句を言ったが、船員はアユの声が聞こえないように耳栓をした。
一方、トッラの戦いを見ているハンガーは笑いながらこう思っていた。
やはり強い、賞金稼ぎのヤイバ。だが、トッラはワガハイが信頼する凄腕の狙撃手だ。この程度の傷で倒れる男ではない。さて、そろそろ奴が本気を出す。その時、賞金稼ぎのヤイバは最期を迎えるのだ!
攻撃を受けたトッラは、剣を構えて突っ込んでくるヤイバを見て、小さく笑っていた。
「何笑ってんだ? ここまでやられて頭のネジがぶっ飛んだか?」
ヤイバはそう言ったが、トッラは魔力を開放して床に雷を流した。ヤイバは感電した床を踏んでしまい、そのせいで激しい電流が体内を走った。
「ぐわァァァァァァァァァァ!」
「はっはっは! 無様だなぁ! 確かに今の一撃は俺に大きなダメージを与えたが、あの程度でやられたわけではない! さぁ、もっと苦しめ!」
ヤイバがダメージを負っていることを察し、トッラは流している電流を強くした。
クソッ! このままだと追撃を喰らう!
感電する中、ヤイバはハンドガンをリロードするトッラを見てこう思った。流れる電流のせいで体が自由に動けないことを察し、この状況をどうやって打開するかヤイバは考えた。一つ、危険な方法があるのだが、ダメージを負う可能性があるため使わないようにとヤイバは考えた。だが、トッラがリロードを終えたことを知り、仕方ないと思いつつ、唯一動く左腕を前に出した。
「何をしても無駄だ。このままお前を殺してやる」
と言って、トッラはハンドガンの銃口をヤイバに向けた。その直後、ヤイバの左手から強烈な水が噴射された。
「ブワップ!」
放たれた強烈な水を浴び、トッラは悲鳴を上げた。ヤイバは水の勢いを利用し、電流が流れる床から足をどかした。後ろに吹き飛んで倒れたヤイバだったが、これで感電することがなくなった。
「ふぃ、感電死するとこだった。濡れるから、水のせいで激しく感電すると思ったが、大丈夫でよかった」
そう呟きながら、ヤイバは立ち上がった。水を浴びて吹き飛んだトッラも立ち上がり、ヤイバを睨んでこう言った。
「ふざけたことを! これ以上俺をコケにすると命を落とすぞ!」
「うるせーよキザ野郎。お前みたいな根暗な陰キャ野郎が強い言葉を言うと、もっと下に見えるぜ?」
「俺が下? ふざけるな……ふざけるなふざけるな! 俺はお前より強いんだぞォォォォォ!」
「強い奴は自分が強いって思ってねーよ。強さは誰かが決めることだぜ」
と言って、ヤイバは剣を鞘に納めた。トッラはヤイバを見て、弾丸を撃った。感情に任せて引き金を引いているせいで、飛んでくる弾丸はヤイバに当たることはなかった。
「クソッ! どうして当たらないんだ!」
「そんなにカッカすんなよ。当たるもんも当たらねーぜ。ま、感情に任せて引き金を引きまくる奴に、俺を倒すことはできねーってことだ」
と言って、ヤイバは魔力を開放した。攻撃がくると察したトッラは引き金を何度も引いたが、弾丸は出なかった。
「クソッ! こんな時に弾切れか!」
トッラはハンドガンのマガジンを取り出し、急いで別のマガジンを取り出そうとした。だが、その隙にヤイバはトッラに近付き、素早い居合切りを放った。
「な……あ……そんな……」
居合切りを受けたトッラは、小さく悲鳴を上げながら宙を舞い、しばらくして床の上に倒れた。ヤイバは剣の鞘の先端でトッラの額をつついたが、トッラは動かなかった。
「うっし。俺の勝ちだな」
ヤイバは剣を鞘に納め、こう言った。
キトリは二本のナイフを持つ男を見て、少し動揺していた。男の攻撃は早く、キトリでも反撃の隙を見つけることができなかった。
「どうやら魔王様の娘さんでも、俺を倒すことはできないようだな!」
男はそう言って、二本のナイフを同時に突いた。キトリは男の両腕を掴み、高く飛び上がって男の背後に回った。
「へぇ、運動神経がいいじゃねーか! だが、俺の方が上だ!」
「うるさい」
キトリは魔力を開放して闇を発し、それと同時に男は火の魔力を発し、ナイフの刃に纏わせてキトリに斬りかかった。
「グッ!」
動きは男の方が速かった。ナイフの刃はキトリの右頬をかすっただけだが、キトリの攻撃は当たらなかった。キトリは後ろに下がり、右頬の切り傷から流れる血を拭いた。男はキトリを見て、笑みを浮かべていた。
「へっへっへ。このツリガネの攻撃が、魔王の娘さんに通用するとは思っていなかったぜ。もしかして俺、勝っちゃうんじゃね?」
相手の男、ツリガネは笑いながらこう言った。キトリはため息を吐き、ツリガネの方を見た。
「本気を出したら、相手を殺しかねないから出さないだけ。調子に乗らないでよ」
キトリの言葉を聞いたツリガネは笑みを止め、声を上げた。
「あぁん? 何言ってんだテメー?」
「私の魔力は闇。普通の魔力とは違うのよ」
「だからどうしたって話だ。弱ければ意味ねーじゃん。お前、バカ?」
「バカはあなた。私を本気にさせたら、後悔するわよ」
「後悔するわよ? ギャーハッハ! 強がるのはよした方がいいぜ! それで勝てるんならやれよ、ハンデやるぜぇ?」
と、笑いながらツリガネはこう言った。キトリはため息を吐き、ツリガネを睨んだ。
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