海の国への向かい方
シアンとアユの戦いは終わりに近付こうとしていた。シアンは殺気を出してアユを攻撃し、アユを睨んだ。アユは察した。このまま戦うと、本当に殺されてしまうと。
「さぁ、遺言はできたかしら?」
「タンマタンマ! 人を殺すのはさすがにやばくない?」
「大丈夫。あんたは人じゃない。あんたはモンスターまがいのバケモンだからねぇ!」
「鬼畜!」
アユが悲鳴を上げる中、ベーキウがこう叫んだ。
「降参だ! 俺を海の国に連れて行ってくれ!」
この言葉を聞いたアユは驚き、シアンは叫び声をあげた。
「ちょっとォォォォォ! 何言ってんのよベーキウ! この状況分からないの? 誰がどう見たって私が圧倒してるじゃない! もうちょっと待ってて、あの珍魚をぶつ切りにして助けてあげるから!」
シアンはベーキウに近付いてこう言ったが、キトリがシアンの耳元でこう言った。
「これは作戦。あの珍魚もこのままベーキウを海の底へ連れて行くとは思わない」
「確かにねぇ。あ、察した。海で自由に動ける方法をあいつから奪って、海の底に行くつもりね」
「半分正解。今からあの人と交渉するから、私に任せて」
キトリはベーキウの前に立ち、近付いてきたアユにこう言った。
「ベーキウを連れて行きたかったら、条件があるわ」
「何それ?」
「私たちも海の国に連れて行きなさい」
「あんたたちも? 余計なお邪魔虫は連れて行きたくないんだけど」
「海のサファイア。私たちはそれを求めにここにきたの」
海のサファイアのことを聞き、アユは口を開けて驚いた。
「あんなのが欲しいの? 一応私の国の宝ってなっているけど。でもどうして?」
「ファントムブレード。その剣を作るための素材なのよ」
「素材ねぇ。でも、イケメンが手に入るならいいかな。その条件、飲むわ」
アユの返事を聞き、キトリはシアンたちの方を振り返った。
その後、ベーキウたちは海辺にいた。アユは下の水着を身に着けていたのだが、嫌そうな顔をしていた。
「何これー? なんか締め付けが気持ち悪いわねー」
「しょうがないでしょうが。下半身丸出しでこの辺り歩き回るよりましよ。それに、丸出しで外を歩くのは禁止されているのよ」
「そーなのね。めんどいルールねぇ。まぁとりあえず、海の国に行くわよ」
と言って、アユは魔力を開放し、大きな泡を作った。それを見たヤイバは驚き、叫んだ。
「おわっ! まるででかいシャボン玉だな。これ、割れたりしない?」
「海の国に住む人は、水の魔力を自由に使えるのよ。どんな衝撃があっても、このシャボンは割れないわ。これで、海の中を自由に動けるわ。それじゃ、行くわよ」
話を終え、アユは海の中に潜った。ベーキウたちはその後を追い、海の中へ入った。
「これでようやく海の国に行けるのう」
「そうだね。まぁ、この調子で海のサファイアを手に入れられたらいいんだけど」
シアンとクーアが話す中、アユはベーキウの横に移動してこう言った。
「悪いけど、あんたたちを連れて行くのはこのイケメンのためよ。目的を果たしたらこのイケメンを置いて帰ってね」
この言葉を聞き、シアンとクーアの額に青筋が浮かんだ。だが、ヤイバが前に出てこう言った。
「俺じゃダメか?」
この言葉を聞き、シアンとクーアはずっこけた。アユはヤイバに近付き、顔を見回した。
「んー。顔もいいわね。それにそこそこマッチョマン。考えてあげるわ」
この言葉を聞いたヤイバは、こっそりとガッツポーズをした。それを見たキトリは、小声でこう言った。
「男の方も、恋に落ちたら少しアホになるのね」
一方その頃、ハンガーは奇声を上げながらカトラスを振り上げ、目の前にいる巨大タコに攻撃をしていた。攻撃を受けた巨大タコは大きな涙を流し、海に戻って行った。
「はぁ……はぁ……何とかなった」
「だけど船長、船がボロボロですよー」
部下の一人がこう言った。巨大タコの攻撃によって海賊船はボロボロになり、他の部下は傷だらけだった。惨状を見たハンガーは、ため息を吐いてこう言った。
「仕方ない、一度戻って船を直すぞ」
その後、ボロボロになった海賊船は近くの港に移動した。裏の世界の船大工に頼み、海賊船を直すことになったのだが、見積もりを見てハンガーは驚いた。
「修理代二十万ネカだと! 相場はもっと安いはずだ!」
「そりゃーそうだろう。一日で直せって言われたらそのくらいの値段になる。いくら安物の素材を使って直したとはいえ、休みなしのぶっ通しで働いたらさすがに過労でぶっ倒れるだろうが」
「人の問題か……クッ! 後で払う!」
「一週間は待つ。それ以上過ぎたら修理代は十倍になるからな」
「分かった分かった! 早く作業をしろ!」
ハンガーはそう言った後、海賊船が治るまで外で待機することになった。今、ハンガーは変装している。賞金稼ぎに狙われているからである。ハンガーは付けなれないグラサンを何度も直しながら、周囲を見回した。
時間を潰す何かいい方法がないか? この辺にカジノはないし、風俗街もない。うーむ、どうしようかな。
そう思っていると、男の悲鳴が聞こえた。何が起きたかと思い見てみると、そこにはまだ泳ぎの練習をしているジャオウの姿があった。
何だあいつ? 泳ぐときくらい仮面を外せばいいのに。
そう思いながら、溺れるジャオウを見ていた。そんな中、横にいる薄手のパーカーを着ているアルムを見て、ハンガーは動きが止まった。
「カワイ子ちゃんじゃん」
アルムを一目見たハンガーは、アルムに一目惚れしてしまった。男であると知らずに。ハンガーは急いでアルムに近付き、カッコつけながらこう言った。
「へい、そこのお嬢ちゃん。ワガハイと一緒に遊ばないかい?」
突如現れたハンガーを見て、アルムは驚きのあまり固まってしまった。しばらくして、アルムはこう言った。
「すみません、そういうのはちょっと……」
「断るつもりかい? こんなダンディーなワガハイを拒絶したら、後悔するのは君の方だぜぇい?」
ハンガーは腰を振りながらこう言ったが、それでもアルムは拒絶していた。読者の人たちは知っていると思うが、アルムは男である。ハンガーはそのことを知らないのである。そんな状況を察したレリルは、笑みを浮かべながらアルムの後ろに忍び寄った。
「そこのおっさん。いいものを見せてあげるわよ」
と言って、レリルはアルムのズボンをずり下した。最初、ハンガーは期待をしていたのだが、予想外でとんでもないものを見てしまったハンガーは、悲鳴を上げた。
「イッギャァァァァァァァァァァ! なんでワガハイより立派なものが付いてるのォォォォォ! まさか……まさかまさか、ワガハイは男の娘をナンパしちまったのかァァァァァ!」
ハンガーは叫び声を上げながら、陸の上の生きている魚のように跳ね回った。そんな中、ハンガーの悲鳴を聞いた部下の一人がやってきた。
「船長、あんたもそっちの世界の人間だったんですね」
「お前はワガハイのケツを狙っている奴! そんなわけねーだろうが! 女の子だと思ってナンパしたら、男の娘だったんだ!」
「言い訳ですよ、そんなの。そんなに抱かれたければ俺がいるじゃないですか」
と言って、部下はハンガーの肩に腕を回し、笑みを浮かべた。その笑みを見たハンガーの背筋には悪寒が走った。
「勘弁してくれ! ワガハイは女の子が好きだ! どちらかと言えば、あのエッチな人がワガハイの好みだ!」
ハンガーはレリルの方を見てこう言った。レリルは好みと言われ、嬉しそうな顔でハンガーに近付いた。
「あら。嬉しいことを言ってくれるじゃないの。それじゃあ、私とお楽しみをする?」
「するする! よろしくお願いしまーす!」
と言って、ハンガーはレリルにキスをしようとしたのだが、レリルの口から臭う強烈なニンニク臭を嗅ぎ、嗚咽しながらその場に倒れた。怒ったレリルは、下に落ちていた木の棒でハンガーを叩いたが、ハンガーは気絶しているので動かなかった。
「気絶しちゃった……」
「それじゃ、俺は船長を連れて行くぜ」
ハンガーの部下は嬉しそうにこう言うと、ハンガーを担いで去って行った。そんな中、溺れているジャオウがこう言った。
「早く助けてくれ」
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