騒動の幕が上がる予感
海の国。キュバンから電話連絡を受けた海の王、サシミは部下を呼び、声を上げていた。
「ワシの娘、アユは足ができる薬を持って、上の世界へ行ってしまった!」
この言葉を聞き、サシミの部下たちはざわつき始めた。
「アユ様が上の世界に?」
「上の世界には魑魅魍魎がうろついていると話を聞いたが……」
「俺が耳にした話だと、上の連中は俺たち魚を捕まえて、生で食べるようだぜ」
「ゲェェェェェ! あんな連中が住んでいるのかよ! 上の世界、野蛮人しかいないのか?」
「アユ様が無事であればいいんだけど」
部下たちがざわつく中、サシミは手にしている杖を床の上に叩き、部下たちを黙らせ、背筋をピンと張らせた。
「今から、上の世界に行ってアユを探すのだ! 何かが起きる前に、何が何でも見つけ出せ!」
「しかし王様、どうやって上の世界を動けばいいんですか?」
「我々は海の中でしか生きられない生き物です。上の世界に上がったら、干からびます!」
「そうだな……うーむ……」
「王様ー! キュバンの姉さんがやってきましたでー!」
ここで声を上げたのはサンマであった。サンマは急いでキュバンと一緒にサシミの元へ泳いできた。
「王様、今回の騒動は私の不手際のせいです。今、私は足ができる薬を持っています。兵士たちにこれを飲ませれば、アユ様を探すことができます」
「そうか! 確かあの薬は、今は作られていないはずだ。そんな貴重な薬を用意してもらってありがとう!」
「少しでも、事件解決の役に立ちたいんです」
キュバンはそう言って、足が生える薬を持ってきた。兵士の一人はそれを手にし、飲もうとした。だが、キュバンは急いで止めた。
「ここで足を作ったら溺れ死ぬわよ。飲むとしたら、上の世界に言って飲んでね。あーあと、滅茶苦茶苦いから覚悟してね」
キュバンの言葉を聞き、兵士たちの顔が嫌な顔になった。その後、兵士たちは何かを思い出したかのような仕草をした。
「あー、今日俺、夜から用事があったんだっけー! 忘れてたー!」
「今日は息子の誕生日会なので……」
「今月の残業時間がオーバーしましたので、今日は定時で帰ります」
などとこじつけを言って、兵士たちは去って行った。兵士たちが去った後、サシミは大きなため息を吐いてこう言った。
「そうだよなぁ……やっぱりまずい薬を飲んで助けに行く度胸をあいつらは持ってないもんなぁ……」
「自分のことが大事なんですわ。しかし、アユ様が大ピンチだってのに、あいつらはどーして動かないんでしょうかねぇ? 確かにアユ様は身勝手な部分があり、ワシや兵士たちを困らせます。ですが、ワシから見たら可愛い娘みたいなもんですわ。本当はワシが行きたいんやけど、戦闘能力がないワシが行っても邪魔になるだけやしなー。王様、何かいい案がないでっか? ワシはあれこれ考えたけど、なーんも浮かばへんのや。これほんまどーしましょ」
「サンマさん、しゃべりすぎー」
キュバンはため息を吐きながら、こう言った。
海の上。ハンガー海賊団の船の上では、ハンガーが不気味な笑みを浮かべていた。その手には、望遠鏡が握られていた。
「見てしまったぞ。徹底的なものを」
部下の一人がハンガーに近付き、手にしている望遠鏡を見てこう言った。
「船長、見損ないましたよ。その望遠鏡で覗きをしてたんですか?」
「そうそう。この望遠鏡、結構遠くまで見えるのよ。だから着替え中のカワイ子ちゃんの着替えもこの目でばっちりと……そんなわけあるかァァァァァ!」
ハンガーは飛び蹴りをしながら、バカなことを言った部下に飛び蹴りをした。飛び蹴りを喰らった部下は立ち上がり、改めてハンガーにこう聞いた。
「で、何を見たんですか?」
「海から下半身丸出しの女が出てきたのだ!」
「痴女を見たんですね。いいなー」
「ただの痴女じゃない! ワガハイは見た! あの痴女は人魚だ! 何を使ったか知らんが、尾びれが光って足の形になったのだ!」
「へー。マンガやアニメのようですね」
「だがこれは現実だ! あの痴女をとっ捕まえて、海のサファイアのことを聞き出すぞ!」
その後、ハンガーは別の部下を呼んだ。号令を受けた部下は、急いでハンガーの元へ集まった。
「今からリゾート地へ向かって、海の国からきたと思われる痴女を探す!」
「痴女だって!」
「ああ。下半身が丸見えだった」
この言葉を聞き、部下たちはスケベそうな笑みを浮かべて話を始めた。
「下半身丸出しか。尻丸見えなんだろうな」
「美女だったらいいなー」
「プリケツだといいんだけど」
「早く見つけけてーよなぁ」
「美女のケツより、俺は船長のケツが見たいぜぇ」
「黙れ! くだらないことでくだらない雑談をするんじゃない! あと、ワガハイのケツを狙っている奴は今すぐ海へ突き落すぞ!」
「船長と一緒にびしょぬれになるんですか? そりゃぁいい。船長、一緒に濡れましょうぜ」
「濡れるのはお前だけじゃァァァァァ!」
ハンガーは一人の部下を飛び蹴りした後、別の部下に指示をした。
「今からあのリゾート地へ向かうぞ! たが、戦う準備は怠るな! 先の一件でワガハイたちとドンパチやった連中がいる可能性が高いからな!」
「分かりました、船長!」
ハンガーの命令を受けた部下たちは、急いで海賊船を動かした。
アユはベーキウに飛びかかり、無理矢理足を捕まえた。
「やべぇ! 足が!」
「グッヒッヒー! これで海に戻れば私の勝ちじゃー!」
アユは笑いながらベーキウを連れて行こうとしたのだが、キトリがアユの前に立ちはだかった。
「何よあんた?」
「ベーキウから手を放しなさい」
キトリは怒りの形相でこう言った。その手には、闇の魔力があった。それを見たアユは小さく笑い、キトリに向かって人を馬鹿にしているような表情をした。
「だーれがあんたみたいなちんちくりんのつるぺったんの言うことなんか聞くかよブァーカ! あんたは巨乳になれるようにエクササイズでもしてなさーい! でも、あんたの年齢だとエクササイズしても無駄だけどねー! ギャハハハハハ!」
そう挑発しながら、アユは猛スピードで海に向かって走って行った。そんな中、アユに倒されたはずの警備員が現れた。
「お前みたいな変態女を逃してたまるか!」
「いい加減お縄に付け!」
警備員はアユに向かって突進を仕掛けたが、アユは突進をかわして海に向かって走っていた。
「クソッ! これでも喰らえ!」
警備員の一人は縄を投げてアユを捕らえようとしたのだが、アユは目から水の光線を出して縄をズタズタにした。
「ゲェッ! あの痴女、目から水を出した!」
「ば……化け物だァァァァァ!」
警備員たちはアユの異常さを察し、逃げて行った。だが、アユの前にシアンとクーアが立っていた。
「どきなさい、ちんちくりんコンビ。早くどかないと、あんたらのない胸のど真ん中に風穴が開くことになるわよ」
「それはこっちのセリフじゃ淫乱人魚……いや、珍魚! お前の暴走もここまでじゃ! 貴様はわらわが焼き魚にして、そのまま近くの屋台の兄ちゃんに売り飛ばしてやる!」
「クーア、ここは私に任せて」
シアンはそう言って前に出た。クーアはシアンが発する殺気を感じ、ため息を吐いてこう言った。
「分かったのじゃ。今回はお前に譲る」
「ありがとう。私がみんなの代わりに、あの珍魚をズタズタにしてやるからね」
シアンはそう言って剣を手にした。アユはベーキウから手を放し、水の魔力を使ってベーキウの体を封じた。
「かかってきなさいちんちくりん。私の力を見せてやるわ!」
その時だった。突如アユの下半身が光り出し、尾びれに戻ってしまった。
「ゲェッ! ヤベェ!」
アユが元に戻った。それを察したシアンは笑みを浮かべて剣を構え、アユに向かって走り出した。
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