怪奇! リゾート地に現れた謎の美女!
足ができる薬を強引に奪ったアユは、薬を飲んで足を作ってリゾート地へ向かった。だが、薬を作った副作用で声が風邪を引いたかのようにガラガラになっていた。
クソ! こんな声じゃあ周りがドン引く!
アユは心の中でそう思ったが、とにかくベーキウを探そうと考えた。アユは近くの男性に近付き、肩を掴んだ。
「あなた」
「ギャァァァァァァァァァァ!」
男性は悲鳴を上げながら、アユを突き倒して逃げてしまった。アユは怒りながら起き上がり、再び周囲を見回した。他の人々も、アユの姿を見て逃げて行った。だが、逃げる途中で転倒する男性を見つけ、近付いた。
「一つ聞きたいことがあるの。答えてくださらない?」
「ヒッ……ヒィィィィィ……殺さないで」
アユに迫られた男性は、鳴き声を上げながらこう言った。アユはにやりと笑って質問した。
「このリゾート地にかなりのイケメンが宿泊しているはずです。そのことを詳しく教えてくださいな」
「し……知りません知りません! 僕は何も分かりませェェェェェん!」
男性は悲鳴を上げながら逃げて行った。
リゾート地の警備事務所。中にいる警備員たちがアイスティーを飲んでリラックスしていた。
「いやー、暇ですねぇ」
「暇が一番。なにも騒動が起きないことが一番いいんだよ」
「ずーっと暇だったら俺たちは何もしないで給料が手に入るし」
「そうっすねー」
そんな感じの話をして、警備員たちは笑っていた。そんな中、急に電話が鳴り響いた。
「んだよ。せっかくアイスティーを飲んでいるのに」
警備員はぼやきつつ、受話器を手にした。
「はい。何か問題でもありましたか?」
「大変です! 変な声の痴女が現れました!」
「変な声の痴女? どういう感じですか?」
「風邪を引いたかのようなガラガラ声なんです。で、上は貝殻ビキニ。下は何も履いてないんですよ! とびっきりの美女なんですけどねぇ、気味が悪いんですよ!」
「分かりました。今、行きます」
そう言うと、警備員は受話器を置いて仲間にこう言った。
「大変だ。美人の痴女が辺りを徘徊しているようだ」
「そりゃー大変。せっかくだから見に行こ……いやいや、話を聞きに行こう」
その後、男性警備員たちは急いで事務所から出て行った。女性警備員たちは、いそいそと出て行った野郎たちを見て、ため息を吐いてこう言った。
「男って本当にスケベ」
アユはリゾート地を動き回りながらベーキウを探していた。時折アユを見たら、悲鳴を上げる人がいたのだが、それに構わずアユはベーキウを探していた。
「おーい! イケメンさーん! 海にいた私ですよー! 私を見つけてくださーい!」
と、汚い声でこう叫んでいた。
「キャー! 変な美女がいるー!」
「見た目は美女でスレンダーなのに、頭の中はどうなっているんだ!」
「ねぇママー。どうしてあの人、おしり丸出しなのー?」
「シッ! 見ちゃダメよマー君!」
人々はアユを見て、悲鳴を上げていた。アユは頭をかきながら、小さく呟いた。
「どうして上の人たちは、私を見て悲鳴を上げているんでしょうか? しかも、変人を見るような目です。本当にわけが分かりません」
そう呟くと、アユの存在を察した警備員たちが現れ、アユを取り囲んだ。
「そこの君! 話を聞きたいから我々の言うことを聞きなさい!」
警備員の言葉を聞き、アユは耳の穴をほじって答えた。
「その前に、あなたたちは誰なんですか? 自己紹介をしないのに上から目線であれこれ言わないでください」
「あ……すんません」
「すんませんじゃねーよ! 変態の言うことを真に受けるな!」
変態。その言葉を聞いたアユは激怒し、警備員に向かって走り出した。
「おわァァァァァ! 痴女がくるゥゥゥゥゥ!」
「だァァァァァれが変態じゃァァァァァ!」
アユは叫び声を上げながら、目の前の警備員にラリアットを仕掛けた。警備員は悲鳴を上げながら攻撃をかわし、転倒したアユを見た。
「いたた……あー、まだうまく動けませんねぇ」
アユはこう呟いたが、声のガラガラが少しだけ治ったことを察した。
「あら。声が少しずつ元に戻ってる」
アユがそう呟くと、二人の警備員がアユを捕まえようとした。だが、アユは足を広げて抵抗した。
「キャァァァァァ! 私に触らないで、変態! スケベ! 色欲者!」
「変態なのはあんただ! 下を履かず周囲をウロチョロ歩くな!」
「それと、その貝殻ビキニはなんだ! 昔のグラビアアイドルか!」
「むっきー! 誰が昔のグラビアアイドルよ! このスタイルは由緒正しき海の国でのスタイルなのよ!」
「海の国? 何を言っているんだお前は!」
「あ、やべ。今言った言葉は忘れてください! ですが、あなたたちが今言った言葉を確実に忘れるため、強硬手段を取ります。歯ぁ食いしばれ!」
アユは警備員の拘束を無理矢理解き、力を込めて近くの警備員の頭に拳を放った。
「意外と……いいパンチ」
そう呟いた警備員は、後ろに倒れた。仲間が倒されたことを察し、他の警備員は悲鳴を上げた。
「おわぁっ! こいつ、マジでやりやがった!」
「逮捕しろ! 俺たち、警察じゃないけど」
その後、警備員たちはアユに襲い掛かった。アユは笑みを浮かべ、迫る警備員たちにこう言った。
「恋の障害は私が取り除く!」
同時刻、ベーキウたちは浜辺を歩いていた。
「どうやって海の国に行こうかねぇ」
「そうだね。魔力を使って潜るのも、魔力にも限りはある」
「何か道具があれば楽なんじゃがのう」
ベーキウたちはぼやきながら海を見ていた。そんな中、人々が悲鳴を上げていることを察した。
「なんだかやかましいね」
「何かあったのか?」
ベーキウとキトリは逃げる人に近付き、声をかけた。
「もしもし、何かあったんですか?」
「大変だよ! 美人の痴女が警備員を相手に喧嘩を売ったんだよ!」
「美人の痴女?」
変態が現れたなとベーキウは思ったが、話を聞いていたシアンが近付き、こう聞いた。
「で、どこで喧嘩騒ぎが起きているの?」
「あっちの方だよ。美人の痴女って聞いてスケベな野郎が集まっているから、すぐに場所は分かるよ。でも、そんなことを聞いてどうするんだい?」
「私は勇者シアン。騒動があったら、止めに行かないとね」
シアンはそう答えると、騒動の場所へ向かった。ベーキウたちもその後に続き、歩き始めた。
数分後、ベーキウたちは喧嘩の現場に到着した。周りには人盛りができており、そのほとんどが男だった。
「すいません。ちょっと通してください」
ベーキウはそう言ったが、スケベ男たちにこの言葉は聞こえなかった。ベーキウはもう一度声を上げたのだが、その声は届かなかった。
「うーむ。声が届いてない」
「仕方ないわね。こうなったら無理矢理」
と言って、シアンは魔力を開放してスケベ男たちを吹き飛ばした。その光景を見たキトリは、ため息を吐いてこう言った。
「勇者がやることじゃないわよ」
「話を聞かないスケベたちが悪い。さ、喧嘩を止めるわよ」
シアンは呆れる表情のキトリを見て、こう言った。そして、喧嘩の現場を見て驚いた。
「げェェェェェ! あいつは海の中にいた人魚の一人!」
クーアは警備員を相手に喧嘩をしているアユを見て叫んだ。その言葉を聞いて驚いたアユは、ベーキウを見てうれしそうな顔をした。
「キャァァァァァ! あのイケメンじゃない! やっぱりここにいたんだ、すぐに会えるのはやっぱり運命? あーでも、船の上にいたもう一人のイケメンはいないけど……ま、イケメンが一人でもいたらそれはそれで万々歳!」
と言って、アユはベーキウに飛びつこうとした。下半身丸出しのアユを見て、ベーキウは驚いて悲鳴を上げた。
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