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■第6話『2冊目』のラストバード

『邂逅、それは新しい旅路への幕開け。だが、道標を間違うな。墓標はいつでも目の前に現れる』

“An encounter is the beginning of a new journey. But don't mistake the signpost. The grave marker will always appear before your eyes.''

こうして、俺は香澄かすみたちに救出されたのだった。

ヘリに乗り込むとすぐに身体検査され、スマホはバキバキに破壊された…。

例の本も見られたはずなんだが…、特に何も言ってこないな。

まだ、ドキドキが止まらない中、ヘリで1時間くらい飛んだだろうか。

そろそろ着陸するという時に、目隠しと耳栓をされた。


「わりいな、商売がらアジトを知られるとまずいんでね」

「ごめんね」


抵抗はあったが、助けてもらったこともあり、大人しく従うことにした。

あと、この2人、年齢も近い同年代だ。17~18歳くらいだろう。


10分くらいだろうか…。連れられた先で目隠しを解かれた。


「うっ!!」


強い照明に照らされた密室。どこだここ。なんだか軍の秘密基地みたいな…

けったいなマシンやモニターが部屋一面に並んでいる。


「よーこそ、カスミ様の秘密基地へ!」

「ちょっと、あたしもでしょ!」

「るせーな、俺が金出してんだから、俺んだろうが」

「掃除だったりメンテはあたしがやってるでしょ!」


ぽかんとして、そのやり取りを見ていると…あっ。

いつの間にか、シーランが表に出て来ちまってる!


「ぼくシーラン、あなたは、カスミ?」


「おっ、そうだぜチビ介」

「思ってたより小さいわね」


…なんだ、こいつら? 全然驚いていないぞ。

それどころか、シーランが何者か知っている様な口ぶりだ。


「こっちも紹介しないとな…おい、出て来いよ」


そういうと香澄は指を鳴らす。


辺りが一気にひんやりしてきた。何だ、クーラーでも入ったのか。

すると、目の前に真っ白いカラス(?)が現れた。


でかい! なんだこいつは!!


「お前んとことおチビさんと、おんなじさ」


「我は、ラストバードの一羽いっぱ、ヒュリザ様の使徒、クロカである」


…俺は思わず身構えて、戦闘態勢かと思ったのだが…?


シーランは何事もなく、ゆったり毛づくろいしている。…ってことは大丈夫なのか?


「驚かせてわりい。でも、見せるのが一番手っ取り早いと思ってな」


すると、彼はリュックを開けて、中から一冊の本を持ち出してくる。


「!…これは!」


「お前も、そこのカバンの中に入ってんだろ? これの色違いの本」


そう言って、俺の前に本を差し出す。

…確かに、色彩こそ違えど、『炎の書』と瓜二つだ。


「…説明してくれ」


まだ混乱が大きく、それしか言えなかった。


「まずは、自己紹介からだな。さっきも名乗ったが俺は真堂香澄しんどうかすみ

 こっちは助手の立華亜衣たちばなあい。世界を股にかけたトレジャーハントをやってる」


「トレジャー…ハント?」


「まあ平たく言えば“宝探し屋”さ。ある南国で部族につかまって命が危ないところを、

 航大さんに助けてもらった恩があってね。今回は航大さんからの緊急のオーダーなんだ。

 礼金は既にたんまりもらってる」


「なにカスミ、またお金の話?」

「うるせーな。とにかく、恩もあるし、礼金分はキッチリやらせてもらうぜ」


「…俺をどうするつもりだ」


「端的に言うぜ。俺と一緒に東ヨーロッパのある国に行ってもらう」

「ある国?」

「悪りぃが全部は話せねえ。着いたら教えてやるぜ。

 一つ言えるのは、そこは聖地って呼ばれてる場所だ」


…聖地。西園寺さいおんじ先輩が言っていたところか。

シーランからも本を渡して欲しい人がいるっていうし、何か関係があるのかもしれない。

今はヤバい連中にも追われているし、オヤジにも会えないとなると…。


「分かった。ただし条件がある」


「条件?何だよ」


「道中、ラストバードについて可能な限り全て教えてくれ。

おれも、もう当事者だ。この本やシーランとの関係もハッキリさせておきたい」


「いいぜ。俺も航大さんに教わったしな。その点は全て教えてやるよ」


そういって、屈託くったくのない笑顔。意外と子供っぽい奴だな。


「亜衣、一晩寝て、明日出立だ。ヘリのメンテ頼んだぜ」

「人使い粗いわねぇ。報酬はずんでよね!…すぐにやるわ」


香澄は、またキリッとした表情になり、


「じゃ、しっかり寝ておけよ。航大さんに恩があるとはいえ、

 まだお前さんを正式に仲間と認めたわけじゃねえ。足を引っ張る様なら置いていくからな」


そういって、香澄はクロカを連れて部屋を出て行った。

俺は亜衣さんに部屋を案内され、とにかく、ベッドに横になる。


や、やっと…休める。


怒涛の一日だった。というか、まだ思考が追い付いていない。

この場所にも驚きだったが、何より、香澄も本を持っていたことが驚きだった。

…青白い本だ。さっき出て来たクロカって奴から察するに「水」か「氷」といった属性なのだろう。

シーランに言わせれば、俺と同じ「ゲーム参加者」か。


とにかくオヤジとの接点が見つかった。

今は一人になるより、香澄たちと行動を共にした方が得策だ。


こうして俺は、奇妙な本に導かれて、一路、見知らぬ土地を目指すことになった。

<次回予告>

こうして、俺は香澄たちと、東ヨーロッパを目指すことになった。

ただ、俺は既に「自由得心学校」を敵に回してる。ひいては内閣府、政府をだ。

まっとうな手段では国外に出られない。

香澄のアイディアで、ある島にヘリで向かう。


次回『地図に無い孤島』へつづく。

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