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■第1話 考古学者の息子

『炎は滅びず、炎は炎に焼かれない。炎と共に生きるのならば、かの者に認められよ』

“The flame will not perish, and the flame will not be consumed by the flame. If you live with fire, be recognized by him.''

考古学はロマンだって、オヤジは言う。


オレも小さいころは、チベットだか、イスラエルだか、

良く分からない遺跡について回った。

幼心に冒険心ってやつが芽生えたのは間違いなかった。


中学の時、オヤジとケンカして家出した。

誰も登ったことのない岩壁をクライミングして、

自分でも冒険家になれるって思ったんだろうな。


だけど、挫折は直ぐに味わった。

甘く刺さったストックから岩が崩れて…山から落ちた。

生死を彷徨ったらしい。


後で聞いたところによると約2年間、意識が戻らなかったそうだ。

正直ピンと来ない。記憶はしっかりしているし、時間だけが進んでしまったみたい。

コールドスリープみたいな(笑)


意識が戻ると、良く分からないFBIみたいな人達が詰めかけて来た。

なんか「光が見えたか」とか「誰かに会わなかったか」とか、

奇妙な質問を繰り返しされたなぁ…。


ともかく、そんな感じで退院までは数週間を要し、社会復帰、

と行きたいところだが、なんか浦島太郎ってこんな気持ちなんだろうな。

「居場所がない」ってさ。


そして何より…、オヤジも母さんも来てはくれなかった。

オヤジは世紀の大発見をしたとかで、世界中を飛び回っている。

母さんは、行方不明になったということだけ聞かされた…。


両親がいない間、オレの世話をしてくれていたのが、古い友人だという

竜条さん。あの竜条コンツェルンの総裁だってんだからビックリだ。


竜条さんの紹介で、オレは特殊学校「自由徳心学校じゆうとくしんがっこう」へ入学した。


オレの名前は『鳥海拓弥(とりうみ たくや)

この物語は、この後、とんでもないことに巻き込まれて、

逃げようもなくなった一人の高校生の、冒険?


どこまで日記に残せるか分からないけど、最後まで読んでくれると嬉しい。


❖◆❖◆


そんなこんなで、今オレはどうしてるかというと…東京の都立図書館にいる。

入学して半年、学期末レポートってヤツを仕上げなくちゃいけない。

明日までに…ふぅ。


テーマは『神話を書く』…なんだよ、その丸投げは。


自分の発想で書けるわけもなく、

早い話なんかパクれないかなーって期待でやってきたのだが。


幸いにも「宗教・神話」コーナーがあった。

…思ったよりも沢山あるな。


物色をするなか、ふとした一文に目が留まる。


「なんだよ、このヒモみたいな文字は…。あれ、付録本も付いてる。

 なんだ、日本語になってるじゃん」


翻訳者は『生沢 舜太郎』(いくさわ しゅんたろう)か。

…なになに、『炎の書』?


---その『神』とは、もしかすると『人』だったのかもしれない---


気になったので読み進めてみる。


---その存在は「白き壁」から現れたが「黒き地」の助けが必要とされた---


宗教書ってこんな感じなのかね?


「う~ん、何だか面白そうではあるのだが、…さっぱり分からん」


そう言っていると館内放送が。


『本日はあと10分、17時で閉館となります』


しまった。書く時間が! どうしよう!


…その時、本の中から、なにか声が聞こえたような気がした。

助けて? そんな訳ないのだが。


とにかく、この本から何とかパクって形にしないと。

オレはサッと借りて、帰路についた。


オレの通っている都立「自由徳心学校」は全寮制。

一見、普通の高校生に見えるのだが「高校」ではない。


オレは竜条さんの推薦で入ったけど、全く一般公募をしていない学校。

しかも生徒同士の会話の中で、実は奇妙な共通点が見つかっている。

…オレと同じように「死の淵をさまよった経験」をしているということ。

おそらく、全員。


だけど、それ以上は誰も触れない。話したくないと思うしね。


「自由徳心学校」は都立だが、実質国立である。

文部科学省の管轄からは外れていて、なぜか内閣府直属となっている。


理由は分からないが、厳選した生徒を募って、

「強く生きる力」を育てるのが校訓なんだとか。


で、この学校、学費はタダ。何かあれば推薦者に連絡が行くことになっている。

タダだけあって、内容は厳しい。

定期的にレポート提出があるのだが、不合格や未提出が続くと、掃除や外出禁止、

休日返上などのペナルティが課されるのだ。


「このレポート飛ばしちゃうと、次の週、小遣いゼロになっちゃうんだよね…」


小銭入れのチャックを開けると、頼りないジャラジャラ感。


「…う~ん。あと1週間これじゃあ」


はぁ。何としても担当の「エリコ先生」がひっくり返る様なレポート書かないと。


少し本のページを開いてみる。


「なになに…?」


≪訳注:この書は遠い昔のおとぎ話として伝承されていた内容が、実話だったことを示している。

対訳は途中までとなっているが、読者諸君の興味は十分に満たされる内容になっていると思う≫


「へぇ、読んで行けば面白そうじゃんか」


こうして俺は、運命の出会いとなる「炎の書」を借りて、

図書館を後にしたのだった。

<次回予告>

レポートを書く為だけに借りた『炎の書』っていう神話本。

寮に帰る途中に、最初の災いが起きる。まだ運命とは言いたくない。

だが確実に『冒険』は始まろうとしてた。


次回。『本の精霊(?)』

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