エピローグ
とある森の奥。
小さく開けた空き地にその丸太小屋は佇んでいた。
「鎧は壊されてしまったし、君にはその代わりになって貰おうかな」
「……」
「いや、でも戦闘は期待できないし、そうだなぁ……秘書とか侍女的な?」
「……」
「ものすごく不満そうだね。感情摩滅したんじゃなかったの?」
「……それだけ不満だということです」
「えー」
「血の繋がりのため私に否やはあり得ません。が、私は本来むしろ秘書や侍女を使う立場だったのですが」
「うーん、そこは頑張って!」
森の中の小屋。ヴェスパと呼ばれた男が粗末なテーブルに頬杖を突きながら、ペルペトゥアにウインクする。
「彼女の心の傷として永遠に、とか贅沢なことを考えるからだよ」
「……!」
その反応を見て微笑を浮かべたヴェスパが手を振ると、控えていた老執事がペルペトゥアを促して共に下がる。
部屋に一人きりとなるとテーブル上の白紙の本を手に取り、その紙面に視線を落として独り言ちる。
「自らの物語の閉幕を自分で決めるなんて、そんな贅沢は人には許されないんだよ。特に不死者には」
その目が、紙面を通してどこか遠くを見るように細められる。
「君には三千年ほど早いかな」




