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第47話 狼狩り

 しばらくの間、体調不良で執筆作業ができておりませんでした。

 徐々に体調が回復してきたので、これから投稿していきます。


 ご心配おかけしました。

 目が覚めた。


 一日程度は眠っていただろうことは理解できた。

 記憶はある。

 ガーベラに<奪取(スティール)>を使い、とてつもない頭痛に襲われ、意識を手放した。

 結局、今に至る。


 戦士長にも使おうと思っていたが、それは止めようと決意もした。

 こんなところで眠っていては魔獣に襲われるかもしれない。

 その上、あの痛みを味わうのも嫌だ。


 というわけで、早速魔族領域に向かうことにした。

 魔法の使い方は──なんとなく体に馴染んでいる気がする。


 <奪取(スティール)>の効果は、スキルを獲得するというより、対象の経験を自分にインプットするようなものだと思う。

 ガーベラが今まで培ってきた魔法のアレコレの一部を、俺にインストールしたのだ。

 だから、スキルを獲得しただけでも、魔法を使えるという実感が湧く。


 俺の予想なので真偽は不明だが、筋は通っている。


「よし」


 そんなことを考えながらも、魔法の袋(仮称)から剣を取り出し、腰に付けておく。

 これで準備は万端だ。

 他にできることは何もない。


 スクロールや魔道具は桃原愛美(モモハラアミ)の暗殺前に装備していた。


 ここで、装備のおさらいをしよう。



 腰に帯びる剣は、ドワーフの名工ガルデの作った剣らしい。効果は不明だが、見た目に反してとにかく軽い。

 指輪は3つだけ付けている。

 赤、青、紫の宝石がそれぞれ埋め込まれた指輪は、各種ステータスのアップに役立っている。だが、固定値上昇ではなく、割合上昇らしく、効果はあまり感じられていない。

 銀の鎖でできた細い首輪も付けている。これは、徐々に体力が回復するという効果があるらしい。

 腰には2本の短剣を挿しており、これらは傷をつけた対象のDEXを低下させる効果を持っている。



 どれも綺麗な状態だ。

 と、点検も終わったところで、俺は魔族領域への一歩を踏み出す。

 どの方向に進めば良いのかも分からないまま、魔族領域へと入っていった。


 その様子を、影で観察する者が居ることも知らずに──。





・     ・     ・





 森は薄暗く、”死の森”とは異なった雰囲気を醸し出していた。

 太く、生い茂るような暗い緑の葉を持った木がまばらに生えているが、それでも太陽光はなかなか差し込まない。それゆえに、森は全体としては暗く見えていた。


 少し歩くと、3匹の狼のような魔獣と出くわした。


 極力、魔獣がいないような場所を通ろうと意識したのだが、DEXが低いゆえ、索敵能力は低い。避けようと思って避けられるものではなかったのだ。


 狼は、こちらを睨んでいる。


 その眼には殺意が篭もっており、俺を殺す気だということは容易に理解できた。


 魔王城までの道のりはまだまだ序盤だろう。ここで貴重なスクロールは消費したくない。


 かつて、『魔獣辞典』という本を読んだことがある。

 数多の魔獣──主にBランク以下のものだ──について詳細が図付きで書かれており、目の前の獣についての知識も有していた。


 ローウルフという魔獣だ。体長は1メートルほどで、紫の毛を持つ。特徴はなく、”紫色の狼”としか表現のしようがない。


 弱点は炎らしい。普通の獣だ。


 じりじりと、俺を囲うように距離を詰めるローウルフたち。


 このまま動かず、奴らの射程に入るのはまずい。

 自分の能力で、ローウルフの攻撃を防ぎつつ、カウンターを入れれる自信はない。


 先手を打とう。


 そう思ってからの行動は早い。


 右手を正面のローウルフに向け、魔法を唱えた。


「<火球(ファイアボール)>!」


 掌に赤い魔法陣が現れ、そこから拳大の火の球が出現する。


 それが1匹のローウルフ目掛け、飛んでいく。

 だが、大した速度はなく、ローウルフは軽く身を捩ることでそれを避けた。


───想像よりも小さく、速い。


 そんな感想が頭に浮かぶ。

 だが、それもすぐに振払われた。


 いつの間に移動したのか、両脇から、ローウルフが迫っていたからだ。


 間に合わない。

 後ろに飛ぶよりも、ローウルフの方が速いだろうし、2匹同時に相手にはできない。それどころか、1匹でも有効な攻撃手段は見いだせない。


 となれば、仕方ない。


 俺は右手を右にいるローウルフへと向け、左腕は噛みつかれてもいいように突き出した。


「<火球(ファイアボール)>…ッ!」


 近付いた右のローウルフに火の球を放つ。

 この距離であれば避けられないだろう。


 数瞬後、右のローウルフは火の球と衝突し、後ろへと吹き飛んだ。

 引火もしている。

 上手くいったのだ。


 しかし──


 グルゥッ!!


「くっ……!」


 左腕に、牙が立てられていた。


 ガーベラの拷問ほどではないが、激痛が左腕に走る。


 幸いにも、かつてこれ以上の痛みを味わったことがあるという事実が、俺を冷静に保っていた。


 <火球(ファイアボール)>2回だけで、かなり削られた魔力に脱力感を覚えながらも、俺は左腕に噛み付くローウルフを睨みつける。


 ローウルフも同様、こちらを睨みつけている。

 このまま絶対、骨まで噛み砕いてやるぞ、と言わんばかりに。


 ただ、そうはさせない。


 右手をそのローウルフの頭に向ける。

 些細な抵抗だが、ローウルフが牙を抜けぬよう、左腕には力を入れつつ、だ。


「<火球(ファイアボール)>ッ!!!」


 そして、満身創痍ながらも、魔法を撃ち込んだ。


 <火球(ファイアボール)>は至近距離でローウルフとぶつかり、それの反動で俺も少し後ろに押し出される。

 ただ、左腕に噛み付いていたローウルフは俺から離れ、グダッとした様子で地面に倒れていた。


───まずは…1匹。


 グルゥッ!!!


 そんなことを思っていると、先程<火球(ファイアボール)>を避けた正面のローウルフが俺に飛びついてきていた。


 反射的にしゃがみ込むことでそれを避ける。


 しかし、反対から、<火球(ファイアボール)>を受けていた右のローウルフが迫っていた。


「<火炎(ファイア)>ッ!!」


 魔法の威力はともかく、発動速度は早い。

 ガーベラの経験の継承のおかげなのか、咄嗟に魔法で反応する。


 右から迫るローウルフの体に火が宿り、全身を包むように広がっていく。


 奴らの弱点が炎であることも相まって、右のローウルフはそれだけで動きを止めた。

 鬼気迫る表情で俺に向かってきていたにしては、呆気ない。


 そっちは直に死ぬと予想し、俺に飛びかかってきた、前の──今は後ろにいるローウルフに振り返った。


 グルルルルゥゥ………


 仲間を殺したことを怒っているとでも言うのか、先程よりも強く威嚇しながら、ジリジリと詰め寄ってきていた。


 魔法は、使えてあと<火球(ファイアボール)>1度だ。


「来い、ローウルフ」


 グルアァ!!


 そして、勢いよくこちらへと飛びかかった。


「<(ファイア)──(ボール)>ッ!!」


 それに対して俺は、タイミングを合わせるように、最後の魔力を振り絞って魔法を使う。


 掌に魔法陣が描かれ、今までよりも大きな<火球(ファイアボール)>が現れた。


 全身を使い、勢いよくこちらへと飛んでくるローウルフ。

 そして、それを焼き尽くさんと放たれる<火球(ファイアボール)>。


 ローウルフは空中で身体を捻ることで、避けようとはしたらしいが、最後、ありったけの魔力を使った<火球(ファイアボール)>は大きく、避けることができなかった。


 <火球(ファイアボール)>にぶつかったローウルフは、そのまま後ろへと吹き飛ばされていく。


 グルァッという、鳴き声を残しながら、火の玉になって飛んでいく姿は、俺の勝利を確信させていた。


「はぁ……はぁ………」


 もちろん、3匹のローウルフはみな死んだ。

 勝ったのだ。

 単純な勝負だったが、自分の力で、<支配(ドミネイト)>を使わずに勝ったのだ。


 正直、炎が弱点ということに気を取られすぎて、<支配(ドミネイト)>を使えばいいということに気づかなかった。もっと簡単に倒せただろう。


 損傷は、左腕くらいか。

 牙を立てられたことで、かなりの出血になっている。


 ガサッ


「ん?」


 そんな時、ふと俺の後ろ側から音が聞こえた。


 反射的に、俺は振り返る。


 そこには、2人の男が居た。


 紫髪で、色白の。背の高い方は紫の槍を持っている。


 こんなところに人がいるわけがない。

 つまり。


 訝しげな表情で俺を見つめる彼らは────魔族だ。

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