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第24話 王都近郊地下洞窟ダンジョン(2)

 第4層。

 ここに来てようやく、迷宮のような雰囲気を感じられてきた。


 先頭は変わらずアビー。

 入った瞬間から、3方向の分岐点に悩まされていた。


 何故悩まされるのか。

 アビーが居れば迷うことは無いはずだ。


 今回、真っ直ぐ進む道と左に進む道、どちらも先があるというのだ。


 何かの(トラップ)かと思うも、確証はない。

 右には行かないとして、光輝たちは選択を迫られていた。


「光輝様、どうされますか?」

「こういう時は左だ。俺の故郷ではそう相場が決まっている」

「そうなのですね!流石は光輝様です!」


 ルーナの過大評価に気を良くしつつ、光輝たちは左の道を冷静に進んでいく。


「ちょっと先…スケルトンが3体」

「私がやりましょう。<聖光(ホーリー)>」


 曲がった先にてスケルトンが待ち構えていたようだが、アビーの索敵によって事前に倒してしまう。


「また曲がり道……次は右」


 アビーのスキルは便利だった。


 どうやら盗賊なら使える者が多いらしいが、ここまでスムーズに進めているのを考えるとアビーの能力は非常に高い。


 3つに分かれた分岐点を右に進む。

 次は魔獣は居ないようで、アビーからの警告も無かった。


 そしてまたすぐ、分岐点は訪れる。


「次は左。そしたら後は道なりだけど……先に怨死霊(レイス)2体とスケルトン3体がいる」

「俺が行きましょう」

怨死霊(レイス)は私がやるわ」


 光輝とアーニャは武器を構え、左へと曲がる。


 アビーの言う通り、そこにはスケルトン3体と怨死霊(レイス)2体が待ち構えていた。


 光輝はスケルトンに向かい、一直線に走っていく。


「<火炎(ファイア)>!」


 怨死霊(レイス)の方は問題なく処理してくれるだろう。

 スケルトンだけに集中できる。


 スケルトンたちは手に持つ剣を振り回しながら近付いてくる。


 ただその速度は遅く、簡単に避けることが出来てしまう。


 1体目のスケルトンめがけ、剣を振り下ろす。


 ズッという謎の音と共にスケルトンは崩れ落ちる。そんなことは気にもせず、振り下ろされた剣を切り返し、2体目のスケルトンも処理した。


 ちょうど3体目が剣を振り回すが、体勢を整えている光輝には何の問題もない。

 華麗な動きでそれを避け、仕上げと言わんばかりに剣を横薙ぎする。


 3体目のスケルトンも崩れ、全ての処理が完了した。


「お疲れ様です。足を止めず、進みましょう」


 戦闘は幾度か行っているが、ダンジョンに入ってからの経過時間は少ない。

 順調なペースは崩したくない為、進んでいくことにする。

 スケルトンの持ち物は大したことがないし、怨死霊(レイス)に至っては何も持っていない。

 ドロップアイテムのような物も無いので、淡々と進めるわけだ。


 光輝たちは再び歩き始める。


 索敵範囲を広げるため、道なりであったとしても先頭はアビーだ。


「この先…リッチが1体」

「リッチですか?どうします、皆さん」


 リッチはアンデッドの魔法使い…魔法を使うスケルトンのようなものだ。

 スケルトン・ウィザードという魔法使いも居るのだが、それと明らかに違うのは、第2階級までの魔法を使ってくるという点だ。スケルトン・ウィザードは第1階級までしか使用しない。


 相手にするにはかなり厄介だ。


 索敵範囲も広く、範囲外から倒すという先程までの手段も通用しない。

 弱点は、脆いこと。<聖光(ホーリー)>一撃で倒せる程度には弱い。


「私が受け止め、ルーナさんに倒してもらう方針でどうでしょうか?」


 提案したのはカイルだ。


「分かりました。お願いします」



 アビーの言う通り、一本道の道中にリッチは待ち構えていた。


「それでは…行きましょう!」


 カイルは盾を持ち、そのままリッチに向かって走っていく。


 カイルに気が付いたリッチは魔法を使おうと、右手を前に出した。


 炎系統の魔法だろう。赤い魔法陣が右手の前に描かれ──


「<盾突撃(シールドバッシュ)>ッ!」


 ──スキルによって加速したカイルには対応できず、魔法の発動はキャンセルされた。


「今です!」

「<聖光(ホーリー)>ッ!!」


 よろめくリッチの足元には聖なる魔法陣。

 驚いたような仕草をするリッチは逃げようとするが、目の前にいる男がそれを許さない。


 光を増した魔法陣──それが収まった時、リッチの姿は無かった。


───なるほど。死者にのみダメージを与える<聖光(ホーリー)>だからこそ相性が良いのか。アーニャだと駄目だったわけだ。


「見事でした。流石です」

「いえいえ」

「ありがとうございます、光輝様」


 2人が倒したリッチの方を見ると、道は下向きに傾いている。

 次階層へと続く道だろう。


 ボス部屋を守る存在だからこそ、先程よりも強力な魔獣が居たというのだ。


 光輝はパーティーメンバーの優秀さを感じながらも、道を歩き出した。





・     ・     ・





 第5層は洞窟のようではなく、進んだ先に1つの扉があるだけだった。


 RPGであればボス部屋とでも言われるのだろう。

 あからさまに禍々しい雰囲気を醸し出しているが、ここで引き返すわけにはいかない。


 先頭を行っていたアビーも今では陣の中央に居る。

 代わりに先頭に居るのはカイルだ。


 光輝の固有スキル<群雄割拠>の1つの効果である<英雄道(ブレイブロード)>は、時間制限のある強化スキルだ。

 ピンチの時以外は極力使いたくない。

 ゆえに、部屋に入る前に事前に使うことはしない。


「扉を開けます。良いですね?」

「はい、行きましょう」


 カイルが確認をし、そのまま扉を開く。


 扉の大きさに対し、軽かったのだろう。というか、自動だったのかもしれない。

 カイルが軽く触った程度で扉は開いて行き、薄暗い部屋の中が見え始める。


「行きましょう、ボスはこの先です」

「はい!」


 そうして、ボス部屋へと足を踏み入れた。





・     ・     ・





 ボス部屋は謁見の間を彷彿とさせる見た目だった。

 とは言え、そこまで広さはない。


 ボロボロの赤いカーペットが敷かれ、その先には階段、階段の上には崩れかけの玉座があった。


 玉座には何かが座っている。


 身長にして2メートルくらいだろう。

 見た目はリッチに似ているが、違う点を上げるならばローブが少し豪華なところと──目に赤い光が宿っていることくらいだ。


 ボスリッチと呼ぶことにしよう。


 攻撃してくる気配が無いため、警戒しながらも光輝たちはボスリッチへとゆっくり近づいていった。


『よくぞ参られた、ダンジョンを攻略せんとする者たちよ。我が名は──』

「ルーナ、アーニャ、攻撃を。カイルは視線を遮ってくれ。俺が決めます」

「「了解です」」

「了解」

『──え?』


「<火炎(ファイア)>ッ!」

「<聖光(ホーリー)>ッ!」

「<盾突撃(シールドバッシュ)>ッ!」


 ボスが語るならばその間に倒せば良い。


 右から左から、アンデッドの弱点属性の魔法が撃ち込まれ、更に顔面を潰すようにカイルの巨大な盾が迫る。


 その隙を付き、光輝もボスリッチの腹部を横薙ぎするよう接近し──剣を振るった。


『がぁっ!!』


 女神から貰った剣の威力は凄まじい。


 ボスリッチの体は崩れ、目からは赤い光が消えた。

 絶命したのだ。


「皆さん、お疲れ様でした」

「光輝様…あれはズルいのでは…?」

「確かにそうかもしれませんが、チャンスは無駄に出来なかったもので」


 メンバー間には和やかな雰囲気が流れている。

 だまし討ちのようなやり方でボスを倒せてしまったのだ。なんというか、面白い。



「案外、すぐに終わったな」


 突如、パーティーメンバー以外の声が響き渡った。


 このダンジョンには今、光輝たち以外の何者も居ないはずなのに、だ。


───おかしい。


 異常に気づいたのは光輝だけではない。

 全員、警戒するような姿勢をしている。


 声のした方──ボスリッチが居座っていた玉座のような場所には、1人の男が居た。

 黒ローブで、フードを深々と被った人物。


 ボスリッチの残骸など気にもせず、その上に立っていた。


 人か、魔獣か、はたまた魔族なのか。


 先程までの和やかな雰囲気は一瞬でピリピリしたものへと変わる。


 光輝たちは油断なく、男に対して陣形を組んだ。

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