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第168話 滅亡古代遺跡インテリタス(17)

「──皆、いるか?」

「いますよ、兄さん」

「……ここにいる」

「私も無事です」


 転移した先、俺たちは似たような部屋に飛ばされていた。

 目の前には、石盤。そして、それが中心に位置するような四角い部屋。

 違うのは、壁や床の材質が石レンガではなく赤いレンガであることくらいか。真紅のレンガが不気味さを際立てていた。


「ここは──」

「兄さんの言ったとおり、ダンジョンに転移させられたようです。……色々と納得しました」

「納得?」


 部屋を見渡せば、出口が一つ。

 およそ、インテリタスの入口ということだ。


 雫は睨みつけるように、入口を眺めている。


「確かに、これは凄まじい数の魔獣がいます。あちらが偽物で魔獣が湧いていなかったことにも納得しました」


 これも予想通り、真のインテリタスには大量の魔獣が湧いているらしい。

 長年放置されていた分、魔獣は誰にも倒されていない。外に出る方法がないからか、ずっとこの場に貯まり続けているのだ。


「ルリ、ダンジョンの構造は?」

「……ん、ちょっと待って。色々と道が分かれていて、探知に時間が掛かってる」


 探知自体に問題はないようだ。

 ただ、広さ──複雑さは先程のインテリタスとは異なっていた。レベルの低い探知スキルでは、このダンジョンの最奥に辿り着くまでに膨大な時間を要するに違いない。


「……できた。道案内は任せて」

「分かった。雫、注意点はあるか?」

「とりあえず、部屋を出たところに20の魔獣がいます」

「分かっ────ん? 20?」


 部屋を出た瞬間、20の魔獣が襲いかかってきます、と。

 初見殺しというか、それともダンジョン側も意図せず増えすぎた魔獣が原因なのか、とんでもない魔窟になっていそうだ。


 雫の探知をフルに活用。その上で出来る限り交戦せずにボス部屋に到達するのが目標となる。


「ルリ、ボス部屋まで一直線で行きたい」

「分かった」

「雫は敵の位置を。俺とラルヴィアで処理しながら進もう」

「分かりました」

「了解しました」


 雫とルリの魔力はボス戦まで出来る限り温存しておきたい。

 道を切り開くのは俺とラルヴィアの役目だ。


 そのために、まずは部屋を出た先に居る魔獣たちを処理する。


「……何がいるの?」

聖骸騎士(デス・パラディン)──アンデッドの聖騎士です」


 たしか、身長が2.5メートルほどもあるアンデッドの一種だ。神聖なデザインの黒い鎧を全身に纏っていて、装備は剣と重厚な盾。

 それが20。それくらいなら俺でもなんとかなりそうだ。


「分かった。それじゃあ、倒してくるよ」

「え──?」


 部屋の出口に向かい、駆け出す。

 その勢いのまま部屋を出れば、偽物のインテリタスよりもだいぶ広い廊下に出た。


 部屋と違い、廊下の材質は石レンガだ。

 石の床を軽快に駆ける音が廊下に響き渡ると同時、鎧が擦れるような音も聞こえ始めた。


───まずは駆け抜ける。


 左右には、雫の言ったとおり、複数の聖骸騎士(デス・パラディン)たち。正確な数を数えるよりも先に、更に奥に移動して挟撃を避けたい。


 丁寧に剣と盾を構え、動き始める聖骸騎士(デス・パラディン)を横目に、俺は奥まで駆ける。

 彼らの動きが遅いこともあり、彼らを抜き去って奥まで行くことは容易だった。


「<暴食・極光(エウロラ)>」


 そのまま、極太の光線を聖骸騎士(デス・パラディン)に向かって放つ。

 これ、入り口に向かってるけど平気かな……? と思うものの、もう後戻りはできない。大丈夫、ルリやら雫やらラルヴィアやら……誰かしらがなんとかするはずだ。


 そんな後先の考えない一撃は前方に纏まった聖骸騎士(デス・パラディン)を襲う。<極光(エウロラ)>が広範囲なだけでなく、暴食によって強化されていることもあり、廊下を埋め尽くすほどの光線となった。


 聖骸騎士(デス・パラディン)は咄嗟に盾を構えようとするが、光魔法の到達速度は凄まじい。

 盾を構えようと腕を少し動かした瞬間には、<極光(エウロラ)>に呑まれている。アンデッドの弱点の一つである光魔法を正面から受けて、前方に纏まっていた聖骸騎士(デス・パラディン)はすべて死滅した。


 ──尤も、アンデッドなので既に死んでいるのだが。



 スチャッ


「おっと」


 しかし、<極光(エウロラ)>を放った方向にはどうやら20全ての聖骸騎士(デス・パラディン)がいたわけではないらしい。

 全員を追い抜いたと思っていたが、後ろを取っている聖骸騎士(デス・パラディン)もいたようだ。


 重厚な鎧ということもあり、動くときに金属が擦れる音がする。耳にその情報が入れば、警戒せざるを得ない。


 振り向き、振り下ろされる剣に合わせて、咄嗟に横に避ける。

 黒き剣は地面へと思い切り突き刺さり、聖骸騎士(デス・パラディン)は避けられたことに気付くと剣を抜こうと動き始めるが───


「<支配(ドミネイト)>」


 ───俺の方が早い。


 聖骸騎士(デス・パラディン)を支配する。なんやかんや、接近戦での隙をついた<支配(ドミネイト)>は有効な戦い方だ。


「<暴食・炎闘牛鬼(イグニ)>」


 この距離で<極光(エウロラ)>を使うのも如何なものかと思い、<炎闘牛鬼(イグニ)>で焼却処理しておいた。

 少し時間はかかったが、問題ない。<極光(エウロラ)>を対個人に使うのも勿体なかった上、魔力の消費も抑えられる。



「兄さんッ!」

「葵……!?」


 そんな時、丁度ルリと雫が部屋から出てきた。

 焦っている様子だが、<極光(エウロラ)>が部屋にまで影響を及ぼしてしまったのだろうか。


「雫、ルリ──と、ラルヴィアも。聖骸騎士(デス・パラディン)は倒し終えたよ」

「倒し終えたよ、ではありません。急に出て行くものですから、どうしたのかと思いました」

「……もう少し考えて行動するべき」

「ああ…………それはごめん」


 確かに、急に駆け出せば驚いてしまうのも不思議ではない。

 何が起こるか分からないダンジョン。慎重に進むことは大切なのだ。


「とはいえ、何も問題はありませんでした。葵、あなたが聖骸騎士(デス・パラディン)程度に負けるとは思っていませんよ」

「ラルヴィア……ありがとう?」


 それは褒めてるのか? と疑問に思ったが、ぶつけないでおこう。

 言葉は受け取った人の気持ち次第で意味が変わるもの。ポジティブに受け取っておくに越したことはない。


「これからは慎重に行くよ」

「そうしてください!」


 <極光(エウロラ)>を放たれても傷一つ付いていない廊下の壁、天井、床。整備されているのかと思うほどに綺麗な上、明るさも確保されている。


───さっきよりはダンジョンっぽいな。


 ダンジョンっぽいというか、遺跡っぽいというか。

 こここそが真のインテリタスなんだなぁ……と実感できる──できないこともない様子だった。


「……それじゃあ、進む」


 ルリと雫に説教を受けながらも、俺たちはインテリタスの探索を再開する。

 目指すは、ボス部屋。ルリと雫を先頭にして、再び歩き出した。

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