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決意175日前 余裕をもって


 結局のところ、次の現場の準備は進んでいない。現場で職人さんの手伝いを終えた後に支店に戻り準備を進めるのだが、肉体的疲労が蓄積された状態では如何せん作業が全く進まないのである。


 建設業界の仕事には、積算という作業がある。これは作業範囲や部材がいくつ必要なのかを割り出すために行う。例えばウチの会社では、図面を見ながら屋根面は何m2か、外壁は何m2か、※1役物何はメートルか等を確認し、〇〇が何枚、〇〇が何個、〇〇が何本、〇〇が何セット、何メートルにカットした〇〇が何枚、といった具合に全て部材の全ての個数を割り出す。当然ながら、同時に工事する部分が多ければ多いほど部材の種類が増え、積算にかかる時間も増えていく。

 ※1役物とは、屋根面の端や屋根面と外壁の接続部分、外壁角や上端下端などをカバーする用の加工部材


 最もオーソドックスな工事だと屋根一面とそれに伴う役物一式が基本。規模が増えれば、屋根一面と外壁一周と両方の役物一式。私の次の工事は、学校体育館で、建物そのものも小さいため工事範囲も少なく、そこまで利益を期待されない小さな案件だったので新人の二番目の現場として丁度よく充てがわれた。


 工事範囲としては、屋根4面と外壁一周、小規模に外壁材を使う箇所が7面。一個一個の規模は小さいが、作業の箇所は多かった。


 作業の箇所が多いと、部材の種類も途方もなく増える。

 となると、積算だけで途方もない時間がかかってくる。


 ※2屋根板13mが74枚、4mが10枚、6mが18枚、12mが18枚、12.5mが3枚、屋根用役物15箇所、外壁板6.5mが大窓無しの面に70枚、大窓ありの面に16枚、窓上部窓下部に2mのものが・・・・・・

 屋根裏用の下地板が320枚、下地用シートが11ロール、外壁用ボードが・・・・・・

 ※2ウチの会社では屋根、外壁は一定の長さにカットした金属の板を加工して作成しており、それを横に並べることで屋根や外壁を覆っていく。役物は2〜3mにカットした板を加工しそれらを接続しながら取り付けていく。


 そして準備は積算だけでは終わらない。割り出した部材の発注、工事依頼書の発行、安全書類の作成、工事業者との打ち合わせ・・・。

 準備以外にも、前現場への請求、部材を購入した業者への支払い、保証書の発行・・・・。

 冗談じゃなく、頭がパンクしてしまうほどの業務量だった。


 後々聞いた話だが、安斎課長曰く『規模は小さくて面倒な箇所も多すぎるので、まったく割の合わない現場』だったらしい。

 しかしその時の全員の認識は、『小さい現場なので山本には余裕がある』だった。



 とはいえ、今請け持っている現場はない。準備中の現場も工事開始日は先だ。日数をかけて集中すればなんとかなるはずだ。しばらくはこれに時間を注ぐしかない。


 そこに木村さんと安斎課長が声をかけてきた。

「山本くんって、今余裕あるよね?」


 思えば、これが地獄の始まりだった。




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