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決意194日前 挨拶


 あの日は結局、現場監督が直接木村さんに電話で打ち合わせを終えてそのまま二人で工事を始める日まで決めてしまったらしい。それと木村さんには、「特に監督の前であんなクチ聞くなよ?」と釘を刺されただけで無視され始める等の事は特にはなかった。


 私の人生初工事は、病院の改修工事である。

 その建物はそこそこの大きさでも、工事量自体は少ない。現場作業としては外壁の塗装、屋上のウレタン防水塗膜、屋上一部の防水シートの交換、ついでに駐車場の屋根新設を行うのだが、ウチが請け負うのは後ろ二つの箇所。そこまで利益を期待されない小さな案件だったので、新人の初現場として丁度よく充てがわれた。

 周りがそういう認識をしているとなると簡単な現場に見えるが、先述の屋上防水シートは特殊部材が多くさらには作業できる職人が限られている。となればややこしい事態も発生しやすい。

 そして案の定、それは起きた。


 ウチの支店が工事するエリア近辺では、シート防水工事ができる工事会社が二つしかない。TTワークスと玄田板金工業。この二つの会社はこれ以外にいくつかの特殊工事が可能で、そのため他よりも明らかに忙しくしていた。支店内での打ち合わせにて、今回の私の工事はTTワークスに依頼することが決まる。そして先輩である進藤さんに電話番号を教わり、TTワークスの社長と現場リーダーである職長に電話で挨拶をする。


「あ、もしもし。自分、この春から入社した山本と言います」

「おお、山本くんか。TTワークスの高橋です。そっちの工事課長から話は聞いてるよ、よろしくね」

 工事課長である安斎さんが、前もって話を通してくれていたらしい。

「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」

「おれは現場出ないからさ、詳しい話はウチの職長の真島にしてあげな」

「はい、わかりました、今後ともよろしくお願いします」

「はいはーい。よろしくねー」

「ありがとうございます、失礼します」

 

「あ、もしもし。自分、この春から入社した山本と言います」

「はいTTワークス真島です。進藤くんから聞いてるよ。よろしくね」

 こちらも、進藤さんが気を利かせてくれていた。

「よろしくお願いします。今回伊勢佐木病院の工事を依頼したいと考えているのですが、」

「うん、それも聞いてるよ。乗り込み日は決まってる?」

「はい、来週の木曜日予定です」

「オッケー。じゃあ、図面と現場の地図と、依頼書とそういう資料まとめて送っといてね」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

「ん、あと、部材はウチ入れられるやつは入れちゃってね。当日持ってくから」

「承知しました。現場の写真とかも、データ送っておきます」

「はーい、よろしくねー、じゃあ色々待っとくね」

「よろしくお願いします。失礼します」

 

 工事の部材は通常、手で持ち運び出来無いようなものは現場、それ以外のものは支店か工事会社のいずれかに納品するのだが、ここで一つ問題がある。もし工事会社に部材を納品した後で依頼先を変更すると、当然部材も移動しなければならないのだ。となれば、現場で忙しい職人どうしがそれらを引き渡したり、あるいはこちらで工事会社から現場まで運ぶ必要がある。


 これが、いわゆるややこしい事態だ。




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